TCK Workshop通信 Vol.2

2016年8月21日 伊藤 真衣子
読書, 作文, 宿題

こんにちは、TCK Workshopの伊藤です。

私は普段、日本語作文・小論文対策の授業や本を使った読解力育成授業を行っています。先日、夏休みの宿題で「人権作文」を書かなければいけないというお子様の授業を行いました。テーマは「自分にとって大切なモノ・人」。

こうしたテーマを与えられると、どんどんアイデアを出してスラスラと書けてしまうお子様もいる一方で、そもそもまず原稿用紙を前にして「書く」という作業自体に抵抗があり、一文字目を書き出すことができないお子様もいらっしゃいます。

また、今回のようなテーマの場合、書く内容はぼんやり浮かぶとしても、深く論じることは意外と難しいです。小学校低学年などであればそれほど気にすることはありませんが、中高生にはきちんと自分なりに考え、議論を組み立てていく、そういう力が求められています。

とはいえ、「人権作文」と言われても普段「人権」について考えるお子様は少ないのではないでしょうか。仮にふっと考えることがあったり、それにつながるような経験をしていたとしても、実際に文章にするというプロセスを経なければ、「自分の考え」は形成されていきません。

今回、私は彼女に1冊の本を紹介しました。読書感想文ではないのですが、「思考の手がかり」として役立つものが必要だと思ったからです。人権とは全くつながらないような現代の物語を選びました。

「えー、読書感想文じゃないよ。これ本当に読まなきゃいけないの・・・?」と最初は面倒くさそうにしていましたが、その本を読んだことで彼女の「思考」が動き始めました。私からは特に何も言いませんでしたが、本の内容の中でテーマに関連し、作文に使える!と思ったことを自分でまとめてから、次の授業に臨んでくれました。1週間前の授業では「書くことがない!やりたくない!先生書いて!」なんて言っていたので、本当に驚きました。

授業ではまとめてきてくれたメモを元に、内容を広げていきました。物語の伝えたいメッセージは分かっている、なんとなく作文のテーマとの関連も見えている。でも、論じるにはあともう一歩足りないところがある。そんな風に本人も感じていました。彼女自身の経験を聞いて話を広げ、さりげなくヒントを置いていくと、「あえて『物』と漢字を使わずに、『モノ』と書いてあるのは、もしかしてこういう意味だから?そこに人権につながるヒントがあるのか!」なんて独り言を言いながら一生懸命考えていました。

2時間かけて書きあがった3枚の原稿用紙を眺めながら、「こんなに真剣に色々なことを考えて、作文に取り組んだのははじめてだよー」と達成感にみちた笑顔で授業は終わりました。

夏休みの作文の宿題も、適切なアドバイスをしてくれる先生がいれば、お子様の世界を広げるきっかけになるのではないか、そして、もっと多くのお子様に同じような経験をしてもらいたいと強く感じた授業でした。