海外での学習経験を活かし、日本の最難関私立大学である慶應義塾大学への進学を目指す帰国生にとって、PEARLプログラム(経済学部)とGIGAプログラム(SFC・総合政策学部/環境情報学部)は非常に魅力的な選択肢です。これらのプログラムは、国際的な視点と英語力を重視したカリキュラムを提供しており、9月入学が可能です。
しかし、これらの入試は出願時期や必要書類が特殊であり、特にSATやTOEFLなどの統一試験スコアを要求されるため、長期にわたる戦略的な準備が不可欠です。「英語ができるから大丈夫」という安易な考えでは通用しないのが、慶應の帰国生入試です。
本記事では、慶應PEARLおよびGIGAプログラムの最新の出願情報と、合格を確実にするための効果的な長期対策スケジュールを、専門家の視点から徹底的に解説します。特に、見落としがちな出願時期の注意点や、書類審査で評価されるポイントを深く掘り下げていきます。
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慶應PEARLとGIGAプログラムの特殊な出願時期と必要書類
慶應義塾大学のPEARLとGIGAプログラムは、書類選考のみで合否が決まる点が特徴的ですが、一般的な日本の大学入試とは異なる特殊な出願期間と提出書類が設定されています。この違いを正確に理解することが、受験の第一歩です。
慶應PEARL:3つの出願期間に注意
PEARLプログラムでは、一般的な9月入学の大学が12月から1月にかけて出願期間を設けるのに対し、3回に分けて出願の機会があります。
- 第1回: 10月下旬から12月
- 第2回: 12月上旬から1月下旬(一般的な時期)
- 第3回: 2月下旬から4月上旬(遅いターム)
この複数回にわたる出願機会は一見すると有利に見えますが、どのタイミングで出願するかによって、必要な書類準備の期限が変わってきます。特に、統一試験のスコア(SAT/ACT/TOEFLなど)の提出期限は厳格であり、直前になって「スコアが間に合わない」という事態を避けるためにも、最も早い第1回に照準を合わせるくらいの計画性を持つことをおすすめします。
GIGAプログラム:AO入試との関連と特殊な提出物

募集要項は英語で書かれている部分が多く、細かい規定を読み落としがちです。特に慶應は歴史ある大学のため、書類の郵送が必要な場合もあるなど、デジタル化が進んだ他校に比べて手続きが複雑になることがあるので、期限と提出方法のチェックは入念に行うことをおすすめします。
一方でSFC(湘南藤沢キャンパス)のGIGAプログラムの9月入学は、出願時期が12月中旬から1月下旬と定められています。ここで特に注意が必要なのは、この出願時期が春入学(4月入学)のAO入試とほぼ同じであるという点です。
また、GIGAプログラムの提出書類には、PEARLとは異なる特徴があります。
志望理由書(エッセイ)
PEARLが1000語までなのに対し、GIGAはプレゼンテーションビデオ(3分間)とその内容をまとめたPDFスライド(2枚)の提出が必要です。これはSFCの特徴的なところで、単なる文章力だけでなく、情報伝達能力を問うものです。
オンラインアプリケーションフォーム
フォームの記入中に、突然活動報告書や自己PRの記入欄が出てくることがあります。必要情報だけを記入するつもりでいると、途中で手が止まってしまうことになるため、事前に内容を考えて準備しておくことが必要です。
必要となる共通の提出書類
PEARLもGIGAも、書類選考のコアとなるのは以下の書類です。
- 統一試験のスコア: SAT/ACTなどの統一試験のスコアと、TOEFL/IELTSなどの英語資格試験のスコア。
- 学校の調査書: 高校での成績を証明する書類。
- 推薦状: 1通以上の推薦状。
- 志望理由書(エッセイ): 志望動機や自己の魅力、将来の展望などを記述するもの。
合格を確実にするための3つの長期対策戦略
慶應PEARLおよびGIGAの入試は、書類選考のウェイトが非常に高く、合否は提出書類の質とスコアによって決まります。そのため、長期的な視点での計画的な対策が不可欠です。

アメリカの学校やインターナショナルスクールに通っている生徒さんでも、学校の勉強とTOEFL・SAT/ACTの対策を並行するのは非常に大変です。英語資格のスコアは取得すれば受験まで利用できるため、「なるべく早めに目標スコアに到達しておく」ことを意識することが重要です。
1. 統一試験・英語資格スコアメイク:まずは英検準一級を取ってから!
PEARLやGIGAといった難関大学のプログラムを目指す帰国生にとって、TOEFLやSAT/ACTなどのスコアメイクは合否を分ける最も重要な要素です。合格者のTOEFLスコアのボリュームゾーンは103〜105点、SATは1400点を超えている傾向にあるため、最低でもTOEFLは100点、SATは1350点以上を目指す必要があります。
英語資格(TOEFL/IELTS)の早期目標達成
TOEFLやIELTSは、いきなり高得点を取れるものではありません。効率的にスコアアップを目指すには、英検準1級を突破しているレベル、具体的にはTOEFLで60点後半から70点前半くらいの状態にまずなってから本格的に取り組むのが理想です。
- TOEFL: 最終目標は100点以上。特にリスニング、ライティング、スピーキング、リーディングの4技能すべてで25点前後を安定して取れるように、バランスの取れた対策が必要です。
- IELTS: TOEFL 100点に相当する7.5以上が目標スコアの目安です。
SAT/ACT対策のタイミング
SATはTOEFLで最低でも90点、できれば100点程度を取れていないと、そもそも取り組むのが難しい難易度の試験です。そのため、まずはTOEFLなどの英語資格のスコアを安定させてから、SAT対策に移行することをおすすめします。
- 目標スコア: 1350点〜1400点。特に慶應の場合、合格者の平均点が高い傾向にあります。
- 科目別戦略: SATのmath(数学)は日本人にとって得点源となりやすいので、mathで750点程度を安定して取り、English(Reading & Writing)の点数をリカバリーできるように戦略を立てることが有効です。
帰国子女のTOEFL対策についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にすることをおすすめします。
2. エッセイ・プレゼンテーション対策:長期的な内省と準備
書類選考やAO入試では、実際の学科試験がない分、志望理由書(エッセイ)や面接、プレゼンテーションの内容が極めて重要になります。ここでの対策は、直前で過去問をやるようなものではなく、3ヶ月以上前から内容を練り始めるべきです。

「文字数が800〜1000語」と侮って直前に準備を始めると、内容が浅くなったり、大幅な書き直しが必要になったりして、出願直前に慌てることになります。余裕をもって3ヶ月ほどかけて、自分の心に忠実なエッセイを作成できるようにしましょう。
内省を深めるエッセイの構築
エッセイは、単に自分の活動を報告するものではなく、受験生が「どのような人物で、なぜその学部でなければならないのか」というパーソナルな魅力と学術的な関心を伝えるための重要なツールです。
テーマの深掘り
講師と対話を重ねる中で、「なぜこの活動をしたのか」「この経験から何を学んだのか」といった、自分の深いところにある考えを内省し、言葉に落とし込む作業が不可欠です。
志望理由と一貫性
エッセイで書いた内容と、面接で話す内容に一貫性を持たせるよう、エッセイと面接対策はセットで行うように計画を立てることをおすすめします。
GIGAのプレゼンテーション対策
GIGAプログラムでは、3分間のプレゼンテーションビデオとそのスライドの提出が求められます。これは、論理的な構成力と、短い時間で効果的にメッセージを伝える力を試すものです。
構成力の強化
伝えるべきテーマを明確にし、導入、本論、結論を3分間に収めるための構成をしっかり練り上げましょう。スライド2枚で内容を要約する力も必要とされます。
話し方の練習
カメラの前で落ち着いて、自信を持って話す練習も必要です。
帰国子女が直面するアカデミック・ライティングの課題について、さらに深く知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
3. 最新の入試要項の徹底確認:ホームエディションスコアの取り扱い

海外在住の場合、SATの受験会場が閉鎖されるなど、コロナ禍で予期せぬトラブルがありました。慶應はコロナ禍でもSATを必須とし続けたように、柔軟性に欠ける面があるため、公式ルールに厳密に従う形で対策を進めることが求められます。
慶應義塾大学は、2024年(令和6年)6月以降の出願において、TOEFL iBT Special Home Editionなどのホームエディション型のスコアを受け付けなくなりました(2023年6月より)。したがって受験生は、必ずテスト会場で紙またはコンピューターで受験した正式なスコアを提出しなければなりません。TOEFL iBTの受験を計画している場合は、早めに会場受験の予約を確保することが重要です。
これは、慶應義塾大学が他の大学に比べて、入試の公平性や信頼性に対して保守的な姿勢を持っていることの現れとも言えます。受験生は、必ず大学の公式情報を確認し、不確実な情報に基づいて準備を進めないように注意することが大切です。
まとめ
- 出願時期の把握: PEARLの3回出願や、GIGAの4月入学AO入試との関連性など、特殊な出願期間を正確に把握し、提出期限に遅れないよう計画を立てましょう。
- 英語資格・統一試験の早期対策: TOEFLは100点以上、SATは1400点(理想)を目標に、高校2年生(Grade 10)頃から計画的にスコアメイクを進めることが重要です。
- エッセイ・プレゼンテーションの充実: 3ヶ月以上前から内省を深め、自分の魅力や学術的関心を論理的かつ情熱的に伝えるためのエッセイ(GIGAはプレゼンテーション)を練り上げましょう。
- 最新情報の確認: TOEFLのホームエディションスコアが認められないなど、入試要項の変更点に細心の注意を払い、確実なスコアで出願準備を進めることが重要です。
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