慶應義塾大学のPEARL(経済学部)およびGIGA(総合政策学部・環境情報学部)の9月入学選考は、海外で学んだ帰国生にとって非常に人気の高い選択肢です。この入試の合否を大きく左右するのが、出願時に提出するエッセイ(志望理由書)と、SFC(GIGA)で課されるプレゼンテーションです。
これらの提出書類は、単に英語力や意欲を示す場ではなく、受験生が「何を深く考え、大学で何を成し遂げたいのか」という学問への真剣な姿勢と将来の計画性を問うものです。特に帰国生入試においては、出願エッセイが選考の中で最も大きなパーセンテージを占めると言われるほど重要度が高く、一般的な「学校へのラブレター」や「自己紹介」では通用しません。
本記事では、慶應義塾大学のPEARLおよびGIGA入試におけるエッセイとプレゼンテーションの対策について、合格に繋がる記述の基本方針と避けるべきNGパターンを詳しく解説します。
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出願エッセイ対策の基本方針:大学での学びをストーリーで語る
慶應義塾大学のPEARLやGIGAのエッセイでは、受験生自身の深い内省と、将来に向けた目的意識が求められます。出願書類作成の鍵は、「自分」と「大学」について深く理解し、それらを一貫性のあるストーリーとして提示することにあります。
エッセイ対策は長期的な内省から始めることが重要

エッセイ作成を始める理想的なタイミングは、出願の約3ヶ月前から取り組むことです。この期間で、講師との信頼関係を築きながら、自身の過去の経験や、将来のことについて深く考える「内省」を徹底的に行うことをおすすめします。深い自己理解なくして、審査官の心に響くエッセイは書けません。
出願エッセイは、出願書類の中で最も大きな評価ウェイトを占める部分です。そのため、安易に「こう書けば受かるだろう」という表面的な内容や、学校に媚びを売ったような文章は、文字数が多いこともあり、必ず見透かされてしまいます。
エッセイで伝えるべきは、以下の2つのテーマを統合した内容です。
- 自分が何をしたいのか(目的意識)
- その目的を達成するために大学でどのような研究をするのか(手段としての大学での学び)
単なる質問への回答ではなく、あなたの人生のストーリーとして、これらの要素を結びつけてプレゼンテーションできるかが非常に重要となります。
「軸」を明確にするストーリーテリング
エッセイは、書類審査のみで行われるため、あなたの人物像を伝える唯一の機会です。「好きな食べ物はピザで、好きな映画はヒッチコックです」というように、個々の質問には答えられても、その間に繋がりが見えないと、あなたの人間像は不明確なままです。
合格するエッセイでは、下記の4つのポイントが一本の線で繋がっている必要があります。
- 過去の経験: どういう経験をしたから
- 現在の興味: 今こういうことに興味があって
- 将来の目標: だから将来はこういうことを解決したい
- 大学での行動: この4年間で何をするんだ
このように、自分のやりたいことの「軸」を明確に伝え、一貫性があることを示すことが大切です。特に慶應の場合、単に「〇〇学を学びたい」というフィールドだけではなく、その中で「どういうトピックを学びたいのか」という具体性、そして「卒業後に何をするのか」という将来の方向性が定まっていることが重視されます。
合否を分けるエッセイの三大要素とNGパターン
合格エッセイを作成するために、必ず盛り込むべき「内容の三要素」と、多くの受験生が陥りがちな「NGパターン」を理解することが、戦略的な対策には不可欠です。
合格エッセイの三要素:問題意識・ゴール・研究計画

大学入試のエッセイで特に重視されるのは、あなたが大学での学びを受動的なものと捉えているか、能動的なものと捉えているかという点です。高校までの受験と異なり、大学受験では「将来への目的」というゴールに対し、大学入学を「研究のための手段」として捉えていることが明確に伝わる必要があります。
出願エッセイに絶対に入れておいてほしい内容は、以下の三要素です。
1. 問題意識の抽出
あなたの経験を背景として、もし人生で一つだけ解決できるとしたら、今、何に問題意識を持っているのかを明確にします。
- あなたが問題だと思う事象の根拠や背景は何か。
- その問題がどこにあると分析しているのか。
2. 将来のゴールの設定
その問題意識を解決するために、将来どういうことをしたいのかという具体的なゴールを設定します。
- 卒業後、どの分野で、どのような役割を果たしたいのか。
3. 4年間の研究計画の具体化
将来のゴールだけを書いても志望理由になりません。このゴールという目的に対しての手段として、大学の4年間でどのような研究を行うのかを具体化します。
- この大学のどの機会(研究室、授業、プログラム)を活用したいのか。
- どのような研究テーマに取り組みたいのか。
この「問題意識」→「将来のゴール」 → 「研究計画」という論理的な流れが、大学側が求める学問遂行能力の証となります。
避けるべきエッセイのNGパターン
多くの帰国生が、日本の大学受験エッセイ特有の採点基準を理解しておらず、不合格に繋がりやすいエッセイを書いてしまう傾向があります。
| NGパターン | 具体的な内容と問題点 |
| 学校の魅力の列挙 | SFCや経済学部の素晴らしいところばかりを褒め称える内容。これでは本人の人間像や大学でやりたいことが見えず、単なる「ラブレター」で終わってしまいます。 |
| 性格や強みだけを主張 | アメリカの大学のパーソナルステートメントのように、自分のポテンシャルや性格のアピールがメインになっている。大学との関連性や、その強みを学問にどう活かすのかが見えません。 |
| 経験の話がメイン | 過去の経験談ばかりが長く、その経験が「だからどうしたの?」という問いに繋がっていない。経験はあくまで問題意識を抽出するための根拠であり、メインの理由にはなり得ません。 |
| 将来的な目標が不明瞭 | 「言語学を学びたいです」というように、大学で学ぶこと自体が目標になってしまっている。大学入学は手段であり、その知識を将来どうするのかという真のゴールが見えていません。 |
不合格のエッセイは、しばしば「大学に入ることが目的になってしまっている」という共通点があります。大学に入ることは、あなたが持つより大きなゴールを達成するための手段であるという意識でエッセイを執筆することが大切です。
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SFC・GIGA入試のプレゼンテーション対策:高評価を得る3つの型
慶應SFC(GIGA)の9月入学選考(海外入試)では、出願時にプレゼンテーションのビデオとスライド2枚の提出が求められます(国内AOとは方式が異なります)。この特殊な選考方法に対応するため、指導経験から導き出された高評価を得るための3つのアプローチを紹介します。
プレゼンテーションの「攻め方」3パターン
SFCのプレゼンテーションでは、研究遂行能力、発想力、そして将来への一貫性を多角的にアピールできます。
1. これまでの取り組みを紹介する型
これは最もとっつきやすいアプローチです。出願エッセイで述べた将来計画に沿った高校3年間でのプロジェクト経験を提示します。
- 一貫性のアピール: 今までやってきたことと、これから大学で取り組みたいことの興味に一貫性があることを示すことが重要です。
- 研究遂行能力の提示: プロジェクトの事例を紹介する中で、課題発見の力、リーダーシップ(プロジェクトの遂行能力)、発想力(どういうメソッドを使ったのか)といった研究遂行能力をアピールしましょう。
2. 趣味と学術的関心を結びつける型
将来計画とは少し別の、多面的な側面を紹介したい場合に有効です。
- 人間性の一貫性: 自分の趣味を、大学で探求したい学術的な関心と結びつけて伝えます。
- 事例: 都市計画に興味がある生徒が、趣味の写真と「都市を人が住みやすい場所にする」という関心をどう繋げたのかを論理的に説明し、人間としてのコアな部分の一貫性を示しました。スポーツを真剣にやっている生徒であれば、その経験をスポーツ科学や医療といった分野の研究にどう繋げられるかを説明するのも効果的です。
3. 研究計画の具体化型
やりたいことが非常に具体的で、高校時代からそれに向かって本格的に取り組んでいる生徒に有効です。
- アピールポイント: 研究計画がしっかり定まっていること自体が大きなアピールポイントになります。
- 具体性: 志望理由書では文字数や構成上書ききれなかった具体的な計画(研究アプローチ、必要となるリソースなど)を詳述し、高い研究能力と熱意を示します。
慶應の入試:研究能力重視の傾向
慶應義塾大学は、学部を問わず現時点での研究能力を非常に重視する傾向があります。リベラルアーツ系の大学ではポテンシャルを見てくれることもありますが、慶應は現時点でどれぐらい研究を遂行する能力があるか、将来への計画がどれぐらいあるかを厳しく審査します。
この傾向は、SFCの国内AO入試の面接での質問からも明らかです。
- 進路相談的な質問: 卒業後の進路やキャリア、そのために4年間でどういう研究をすべきかといった、大学での学びの先を見据えた質問。
- 現実的な質問: 提示した研究計画の現実性、具体的なメソッド、現時点での知識について、容赦なく踏み込んだ質問。
- 厳しめの指摘: 高校までのプロジェクトを提出した場合、研究方法や結果の妥当性についてシビアな指摘が入ることがあります。
これらの質問は、面接官が受験生を「もう大学生である」という前提で接していることを示しています。アカデミックな場でも、建設的な議論のために、質問を打ち返し、自分の考えを深める力、あるいは間違いを素直に受け入れて次に繋げる姿勢が求められます。
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まとめ
- エッセイは選考で最大のウェイトを占めるため、出願の3ヶ月前から深い内省に基づいた対策を始めることが大切です。
- 合格エッセイには、過去の経験に基づいた「問題意識」、卒業後の「将来のゴール」、そしてそのための「4年間の研究計画」という三要素を論理的に繋げることが必須です。
- 「学校を褒める」「経験談がメイン」「大学入学が目標」といったNGパターンを避けることが重要です。
- SFCのプレゼンテーションでは、「これまでの取り組み」「趣味と学術的関心の結合」「具体的な研究計画」という3つの型から、最も自身をアピールできる戦略を選択しましょう。
- 慶應の入試は研究能力重視です。大学生レベルで、自身の研究計画の現実性や知識について、アカデミックな議論を打ち返せるよう準備することが求められます。
TCK Workshopの慶應PEARL・GIGA特別指導
TCK Workshopでは、慶應義塾大学PEARL・GIGA入試の「内容重視型」の特殊な選考基準に対応した、専門性の高い個別指導を提供しています。
1. エッセイ指導:一貫したロジックの構築
- 内省の徹底: 生徒の過去の経験を深く掘り下げ、真の問題意識と研究への動機を引き出します。
- ロジックの構築: 「問題意識→ ゴール→研究計画」という三要素を完璧に満たす論理的で一貫したエッセイ構成を指導します。
- 大学とのマッチング: 慶應の学部・学科が提供する具体的な研究テーマと、生徒の興味を最も効果的に結びつける戦略的な記述を行います。
2. プレゼンテーション指導:研究能力のアピールを最大化
- アプローチの選定: 生徒の強み(プロジェクト実績、趣味、明確な計画)を分析し、3つの型のうち最も高評価を得られる型を選定します。
- ビデオ・スライドの作成: 審査官に短時間でインパクトを与えられるよう、学術的かつ視覚的に訴えるスライド構成とビデオの話し方を指導します。
- 模擬面説: 面接で聞かれるような厳しく現実的な質問を織り交ぜた模擬面接を行い、アカデミックな議論能力を鍛えます。
3. 資格試験(TOEFL/SAT)と並行した対策
エッセイ・プレゼン対策をスムーズに進めるため、前提となるTOEFLやSATなどの資格試験対策も個別に対応します。特にアカデミック・ライティング能力はエッセイに直結するため、資格対策と並行してエッセイのテーマに合わせたアカデミックな知識のインプットも行います。
受験準備の最初の一歩として、まずは無料教育相談をご利用ください。お子様の現在の学習状況、英語資格の有無、そして志望校の特性に合わせたオーダーメイドの学習プランをご確認いただくことをおすすめします。

