IB(国際バカロレア)プログラムを通して、理系分野への情熱を育んできた皆さんにとって、国内大学への進学は大きな目標であり、同時に不安の種でもあるでしょう。特にIBDP(ディプロマプログラム)のスコアを活用できる「バカロレア入試」は、皆さんの探究心を最大限に活かせるルートですが、理系学部においては「高いIBスコア」だけでなく「特定科目の履修要件」や「筆記試験」が課されるケースも多く、複雑です。
この記事では、IBDPの資格を持つ理系受験生を対象に、2026年度入試に向けた最新情報を基に、バカロレア入試を実施している国内大学の理系学部を詳しく解説します。

TCK Workshop プレミアム講師。英国滞在歴20年以上。小・中・高から大学(King’s College London)、大学院(University College London)に至るまで、すべての教育課程をロンドンで修了した「英国教育のスペシャリスト」。 GCSE / A-Levels などの英国カリキュラム指導はもちろん、IB DP Biology等の理数科目、さらに英国大学への出願(UK University Application)サポートまで、現地の実体験に基づいた最高レベルの指導を提供する。
国際バカロレア入試や帰国生入試の要項は、年度によって予告なく変更・廃止される可能性があります。そのため、実際の出願に際しては、以下の一次情報を必ずご参照いただくようお願い申し上げます。
IB理系生が国内大学入試で直面する「強み」と「課題」
IBDPで理系科目を履修してきた生徒は、日本の大学入試において非常に大きなポテンシャルを持っています。しかし、日本の入試制度独自の壁も存在します。まずは現状を客観的に理解することから始めましょう。
探究力と英語力は最強の武器になる

IB生の「なぜ?」を問い続ける姿勢は、理系研究者の資質そのものです。日本の大学が総合型選抜やバカロレア入試を拡大している理由は、まさに皆さんのような「自ら課題を見つけ、解決できる学生」を求めているからです。自信を持ってください。
IBDPは、批判的思考力や探究学習(EE/TOK/CAS)を通して、学際的な視点から課題を解決する力を育みます。特に理系科目のHL(Higher Level)で培った、実験レポートの作成能力やデータ分析力は、日本の高校生と比較しても非常に高いレベルにあります。
この探究力こそが、大学側が最も評価したいポイントです。一般入試では測りきれない「課題設定力」や「仮説検証の論理性」は、面接や志望理由書で強力なアピール材料となります。また、Subject-Specific Wording(専門用語)を英語で使いこなせる能力は、大学入学後の論文講読や国際的な研究活動において、他の学生をリードする大きなアドバンテージとなります。
総合スコアだけでは通じない「科目要件」の壁
一方で、IBスコアの総合得点が高くても、志望学部が求める特定科目の要件を満たしていないと出願すらできない場合があります。これが文系IB生との大きな違いです。
理系学部への出願では、総合スコア(例:38点以上)に加え、数学(AA HL推奨)、物理、化学、生物といった特定科目のHLでの履修と、その成績(例:HL5以上)が厳格に求められる傾向があります。特に医学部やトップレベルの理工学部では、理科2科目のHL履修が必須となるケースも珍しくありません。
また、大学によってはIBスコアはあくまで「出願資格」に過ぎず、合否判定には独自の筆記試験やEJU(日本留学試験)の成績を用いる場合もあります。自分の志望校が「IBスコア重視型」なのか、「基礎学力試験併用型」なのかを見極めることが重要です。
2026年度版 IBスコアで出願可能な国内理系大学一覧
IBDPのスコアや資格を利用して理系学部への出願が可能な国内大学について、2026年度入試に向けた最新情報をまとめました。特に、入試方式によって対策が大きく異なる点に注目してください。

「IB入試」と言っても、IBスコアだけで合否が決まる大学(筑波大・慶應など)と、IBは出願資格に過ぎず、当日の筆記試験やEJUが必要な大学(東大・東北大AO・早稲田理工など)の2パターンに明確に分かれます。特に2026年度入試では、横浜市立大(医学部)のようにIBスコア40点以上を必須条件とする厳しい大学もあります。志望校がどちらのタイプか、早急に募集要項で確認することをおすすめします。
国立大学:IB重視型と筆記併用型の見極めが重要
国立大学のバカロレア入試は、大きく分けて「IBスコアと面接で決まるタイプ」と「筆記試験やEJUが必須のタイプ」があります。
表:主な国立大学理系学部のIB入試実施状況(2026年度入試情報に基づく)
| 大学名 | 対象理系学部 | 入試方式・名称 | IBに関する要件・特徴 | 公式情報 |
| 横浜市立大学 | 医学部医学科 | 国際バカロレア特別選抜 | 最難関。IB総点40点以上が必須条件。 数学+理科2科目(Phy/Chem/Bio)の履修必須。 | 公式要項 |
| 筑波大学 | 全学群(医学・理工など) | 国際バカロレア特別入試 | 医学・人間学群は7月、他は10月募集。 スコア目安36点~。小論文・面接重視。 | 公式要項 |
| 東北大学 | 理・工・医・薬・農 | AO入試(II期・III期) | 筆記試験あり。IBは出願資格として活用。 ※FGL(英語コース)は書類中心。 | 公式要項 |
| 東京大学 | 全科類(理一・二・三) | 外国学校卒業学生特別選考 | IBは出願資格扱い。一次でEJU必須。 ※PEAK(英語コース)は2026年秋入学をもって廃止 | 公式要項 |
| 大阪大学 | 理・工・基礎工 | 国際バカロレア特別入試 | 共通テスト免除。 書類+面接・口頭試問で理数系HLの理解度を問われる。 | 公式要項 |
| 岡山大学 | 全学部(理・工など) | 国際バカロレア特別入試 | 共通テスト免除。スコア目安30点台前半~。 地方国立大学の中でもIB受け入れに積極的。 | 公式要項 |
東京大学のPEAKは2026年度9月入学を持って募集を停止、廃止されます。これは、PEAKの役割が、2027年秋に新設される新学部「カレッジ・オブ・デザイン」に引き継がれ、より学際的で社会課題解決を志向する英語学位プログラムへと発展するためです。
東京大学の新学部「カレッジ・オブ・デザイン」についてはこちらの記事で詳しく解説しております。
私立大学:独自の選考基準と多様な選択肢
私立大学、特に早慶上理などの難関大では、IB生の受け入れ実績が豊富ですが、学部によって選考方法が全く異なるため注意が必要です。
表:主な私立大学理系学部のIB入試実施状況(2026年度入試情報に基づく)
| 大学名 | 対象理系学部 | 入試方式・名称 | IBに関する要件・特徴 | 公式情報 |
| 慶應義塾大学 | 理工学部 | IB資格取得者対象入試 | 書類選考+面接。 高いIBスコア(39-40点目安)とHL数学・理科が鍵。 | 公式要項 |
| 早稲田大学 | 基幹・創造・先進理工 | 特別選抜入学試験(帰国生・IBなど) | 早稲田の理工は筆記試験(数学・理科)あり。 当日試験のウェイトが大きい。 | 公式要項 |
| 上智大学 | 理工学部 | IB入学試験 | 書類選考+面接。平均36-38点程度。 IBの学びとの親和性が高く、面接での人物評価も重視。 | 公式要項 |
| 東京理科大学 | 複数の理系学部 | 国際バカロレア特別選抜 | 特定科目の履修が必須。 書類審査と面接・口頭試問で基礎学力を確認。 | 公式要項 |
TCK WorkshopのIB理系受験対策特別講座
TCK Workshopでは、国際バカロレア入試に特化し、IBDPの学習を日本の理系大学の要求水準に最適化するための専門的な個別指導を提供しています。
IB理系科目 弱点ピンポイント補強&筆記試験対策
IBDPのスコア維持と、国内入試に向けた基礎学力向上を両立させるための個別指導を行います。日本の高校数学・理科とのシラバス比較に基づき、不足している概念(例:数学III・Cの特定範囲など)をピンポイントで補強します。また、早稲田理工や東北大AOなどで課される筆記試験の過去問分析を行い、IBの知識を日本式の解答力へ変換するトレーニングを行います。
理系EE活用型 志望理由書・研究計画書作成指導
理系EEの内容を深掘りし、志望大学の専門性に合わせた「刺さる」出願書類を作成します。担当講師が、EEのテーマ設定から実験結果の解釈までを再レビューし、「研究者としてのポテンシャル」が伝わる自己推薦文や研究計画書の作成をサポートします。大学ごとのアドミッション・ポリシーを分析し、論理構成を徹底的にブラッシュアップします。
理系口頭試問・面接 シミュレーション特訓
バカロレア入試の最終関門である口頭試問と面接に特化した個別指導も実施しております。「なぜこの公式が成り立つのか説明せよ」「あなたのEEの研究における最大の欠陥は何か」といった、理系特有の鋭い質問に対する想定問答を作成します。大学教授の視点を取り入れた模擬面接を繰り返し、日本語と英語の両方で、堂々とアカデミックな議論ができる力を養います。
IBで培った探究心と努力は、必ず大学受験、そしてその先の研究生活で活きてきます。TCK Workshopは、皆さんのその努力が正当に評価されるよう、全力でサポートします。
最初の一歩として、まずは無料教育相談をご利用ください。お子様の現在の学習状況、英語資格の有無、そして志望校の特性に合わせたオーダーメイドの学習プランをご確認いただくことをおすすめします。
まとめ
- 2026年度入試においても、多くの大学でIB生の受け入れが継続されますが、横浜市立大のように要件が厳格化しているケースもあるため、必ず最新要項を確認してください。
- 志望校が「IBスコアだけで決まる大学」か「筆記試験が必要な大学」かを見極め、適切なリソース配分を行うことが重要です。
- 理数科目の「日本式」の補強と、EEを基にした「未来志向」の志望動機作成が、他の受験生と差をつけるポイントになります。
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