海外のボーディングスクールやインターナショナルスクールに在籍し、アメリカの大学や日本の難関大学の国際系プログラムを目指す帰国生にとって、SAT(Scholastic Assessment Test)のスコアは合否を分ける極めて重要な要素です。

しかし、2023年から国際生(アメリカ国外の受験生)を対象に、従来の紙ベースの試験からDigital SAT(DSAT)へと移行しました。このデジタル化は単に媒体が変わっただけでなく、試験の根幹である形式が大きく変更されたことを意味します。特に、アダプティブテストという新しい形式の導入は、従来のSAT対策の常識を覆すものです。

本記事では、Digital SATの基本的な変更点から、高得点を獲得するために必須となるアダプティブテストの仕組み、そして特に重要となるモジュール1での戦略について、TCK Workshopの専門的な知見をもとに徹底的に解説します。Digital SATで目標スコアを確実に達成するためのロードマップを一緒に見ていきましょう。

坂井先生

講師:坂井 治樹

 TCK Workshop プレミアム講師。獨協高等学校を経て、早稲田大学国際教養学部(SILS)卒業。 オーストリア・ドイツへの留学経験を持つ国際派でありながら、中学・高校入試の全科目(英・国・数・社・理)を指導できる稀有な「オールラウンダー」。 SILSで培った広い教養と論理的思考力を活かし、SAT対策や大学入試の小論文・志望理由書指導において、合格を引き寄せる「書く力・考える力」を徹底的に鍛え上げる。

    この記事は、TCKworkshop主催のウェビナーを基に作成しています。TCKworkshop公式Youtubeチャンネルでは、指導経験豊富な講師が実際の指導を通して蓄積した帰国生の受験、英語学習などについての情報をお伝えしておりますので、ぜひご覧ください。


    Digital SATへの変更点:試験時間と形式の大幅な見直し

    Digital SATの導入により、受験形式と試験時間に大きな変更がありました。これらの変更点を正確に理解することが、対策の第一歩となります。

     デジタル形式と持ち込み可能な機材

    SATは現在、国際生(アメリカ国外の受験者)についてはすでにデジタル形式に移行しており、アメリカ国内の受験生も2024年の春からデジタル形式になりました。

    大きな特徴は、受験者が自分のPCやタブレットを受験会場に持ち込んで受験できる点です。これにより、普段使い慣れたデバイスで試験に臨むことができ、環境要因によるストレスを軽減できます。ただし、残念ながら自宅で受験できるわけではなく、必ず指定された会場で受験する必要があります。

     試験時間の大幅な短縮と問題数の減少

    従来のSATは約3時間かかっていましたが、Digital SATでは問題数が大幅に減少し、試験時間は2時間へと短縮されました。これは、集中力の維持という観点からも受験生にとって大きな変化であり、疲労が軽減されるというメリットもあります。


    Adaptive Test(アダプティブテスト)の仕組みを徹底解説

    Digital SATの最も重要な変更点は、試験形式が従来のペーパーテストからAdaptive Test(アダプティブテスト)へ変更されたことです。この仕組みを理解せずに高得点を狙うことは困難です。

    アダプティブテストの原理

    アダプティブテストとは、受験者の実力に合わせてリアルタイムで出題される問題の難しさを調整する試験形式のことです。

    • 高い点数を取ると、次により難しい問題が出題される
    • 低い点数を取ると、次により簡単な問題が出題される

    このように、受験者の反応に応じて次の問題が変化するため、すべての受験者が同じ問題を解くわけではありません。SATの場合、各科目(Reading & WritingとMath)がそれぞれ2つのモジュールに分かれており、そのモジュール間で難易度の調整が行われます。

     SATにおける2モジュールの仕組み

    SATのアダプティブテストは、1問ごとに難易度が変わるわけではなく、以下の2モジュール構造で難易度が決定されます。

    1. モジュール1(前半セクション): すべての受験生が同じ程度の難易度の問題を解きます。このモジュール1での正答率やパフォーマンによって、次のモジュール2に進む難易度が決定します。
    2. モジュール2(後半セクション): モジュール1の結果に基づき、High Difficulty(高難度)」と「Low Difficulty(低難度)」の2つのセクションのいずれかに振り分けられます。

    この振り分けは、単純な問題数や正解数のみで決まるわけではなく、他の受験者との相対的な位置に基づいて決定されるとCollege Boardは説明しています。


    高得点を狙うための絶対条件:モジュール1突破戦略

    坂井先生

    実際、Digital SATの結果を見ていると、モジュール1でつまずいて下のモジュールに進んでしまうと、挽回が非常に難しく、スコアが大幅に下がってしまうケースが多く見られます。確実に難度の高いモジュールに進めるよう、モジュール1は焦らず、確実に点数を取るための戦略が必要です。

    Digital SATで科目ごとの800点満点を狙う、あるいはハイスコア(例えば750点以上)を達成するためには、モジュール2でHigh Difficulty(高難度)のセクションに進むことが絶対条件となります。

    モジュール2(Low Difficulty)では満点が取れない

    アダプティブテストの仕組みの最も重要なポイントは、モジュール2でLow Difficulty(低難度)のセクションに進んでしまうと、その科目の満点である800点を取ることは不可能になるという点です。

    例えば、Reading & WritingまたはMathのモジュール1で点数が振るわず、Low Difficultyのモジュール2に進んでしまうと、最高スコアが600点台(おおよそMAXが600点)に制限されてしまうのです。

    これは、従来のSATとは大きく異なる点であり、高得点を狙う帰国生にとって、モジュール1での確実な高パフォーマンスが極めて重要になったことを意味します。

    講師のひとこと 実際、Digital SATの結果を見ていると、モジュール1でつまずいて下のモジュールに進んでしまうと、挽回が非常に難しく、スコアが大幅に下がってしまうケースが多く見られます。確実に難度の高いモジュールに進めるよう、モジュール1は焦らず、確実に点数を取るための戦略が必要です。

    対策の鍵1:モジュール1は「正確性」と「時間配分」を最優先

    モジュール1は、次のモジュール2の難易度を決める「足切り」の役割を果たすと考えて間違いありません。ここでは、難しい問題に時間をかけすぎるよりも、解ける問題をすべて確実に正解する「正確性」が求められます。

    • 目標: モジュール1をほぼパーフェクトに近い状態で終えることを目標にしましょう。
    • 戦略: 確信を持って答えられる問題から着実に解答し、少しでも不安のある問題は、時間を見ながら冷静に見直す時間配分を確保することが重要です。

    来週の記事では、MathとEnglishそれぞれで高得点が取れる戦略をご紹介します。
    SATを受検予定の方は、ぜひこちらもご覧ください。

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    TCK WorkshopのDigital SAT対策講座:Adaptvie Testに最適化された指導

    TCK Workshopでは、Digital SATのアダプティブテストの特性を熟知したプロ講師が、お子様の目標スコア達成を強力にサポートします。特に、モジュール1の確実な突破と、難度の高いモジュール2で通用する応用力の養成に重点を置いた指導を提供しています。

    High Difficultyモジュール突破に特化した対策

    従来のSAT対策とは異なり、Digital SATでは「すべてを広く浅く」ではなく、「モジュール1で確実に取り、モジュール2の難問に対応できる応用力を身につける」戦略が不可欠です。

    • 弱点分析に基づくカスタマイズ: お子様の現時点での英語力や数学の習熟度を分析し、モジュール1での失点を防ぐための基礎固めと、モジュール2で出題される発展的な問題に対応するための個別指導を行います。
    • 実践的な演習: College Boardの公式ガイドラインや研究論文に基づき、アダプティブ形式の試験で効果的な時間配分と問題解法の順序を身につけるための実践的な演習を行います。

    Digital SATの対策は、従来の試験よりも戦略性が求められます。準備の最初の一歩として、まずは無料教育相談をご利用ください。お子様の現在の学習状況、英語資格の有無、そして志望校の特性に合わせたオーダーメイドの学習プランをご確認いただくことをおすすめします。

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    帰国生入試の全体像を把握し、いつから何を始めるべきかを知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。


    まとめ

    Digital SATは、単なるペーパーテストのデジタル化ではなく、アダプティブテストという根本的に異なる形式を採用したことで、対策のあり方を大きく変えました。

    • 形式の理解: Digital SATは試験時間が2時間に短縮され、2モジュール制のアダプティブテストとして実施されます。
    • モジュール1の重要性: 科目の800点満点を狙うためには、前半のモジュール1で確実なパフォーマンスを発揮し、後半のHigh Difficulty(高難度)のモジュール2に進むことが絶対条件です。Low Difficultyに進むと、最高スコアが600点台に制限されます。
    • 戦略的な学習: モジュール1は正確性を、モジュール2は応用力を重視した対策が必要です。特にMathは得点源として満点を狙い、Reading & Writingの高度な文法・語彙対策を早期に進めることが重要です。