ドルトン東京学園の帰国生入試で出題される日本語作文は、一般的な「体験記」や「感想文」とは異なり、探究学習とディスカッションの素養を測る独特な形式です。単なる文章力ではなく、論理的な思考力と多角的な視点に基づいた意見構築力が求められます。

相吉先生

 講師:相吉晃太朗

TCK Workshop プレミアム講師。横浜国立大学教育人間科学部卒業、University of Otago(NZ)への交換留学を経て、東京大学大学院総合文化研究科に2年在籍。 小学校および中高英語の教員免許を持つ「教育のプロフェッショナル」。教育学に基づいた科学的なアプローチで、AP Japanese日英小論文難関校受験対策まで、アカデミックな指導を専門とする。

「大学から大学院まで一貫して英語教育を研究してきました。単なる知識の詰め込みではなく、お子様の『自ら学び、成長する力』を引き出す指導をお約束します。可能性あふれる皆さんと一緒に学べることを楽しみにしています!」

    この記事は、TCKworkshop主催のウェビナーを基に作成しています。TCKworkshop公式Youtubeチャンネルでは、指導経験豊富な講師が実際の指導を通して蓄積した帰国生の受験、英語学習などについての情報をお伝えしておりますので、ぜひご覧ください。


    ドルトン東京学園の日本語作文で問われる能力

    ドルトン東京学園が日本語作文で重視するのは、主に以下の3点です。

    思考力:二項対立の分析と立場決定

    課題文では、ある社会的なテーマについて、対立する2つの意見(AとB)が提示されます。受験生は、まずこのAとBの観点を正確に理解し、どちらの立場を取るか、あるいはどちらとも異なる「第三の意見」を述べるかを論理的に判断しなければなりません。

    論理的構成力:根拠と具体例に基づく説得力

    選択した立場について、感情論ではなく、明確な根拠と具体的な事例を用いて論述する力が求められます。作文は、導入・本論・結論という論理的な流れで構成されていることが重要です。

    多角的な視点:課題への深い洞察

    単にAかBの意見を繰り返すだけでなく、課題に対する多角的で深い洞察を示すことが評価されます。例えば、AとBの意見を部分的に認めつつ、それらを乗り越える独自の解決策(折衷案)を提示できると、思考力の深さが伝わります。


    実践問題例:AI(人工知能)の進歩に関する論述

    ドルトン東京学園の作文試験を想定した、社会性の高いテーマの例を用いて具体的な対策ステップを解説します。

    問題設定(例)

    最近、人工知能(AI)の技術が目覚ましく進歩し、社会のあらゆる分野で活用されています。AIの進歩に対する議論は多岐にわたります。

    立場意見の要点
    Aさんの意見AIの導入により作業が自動化され、生産性が向上し、人間はよりクリエイティブな仕事や意思決定に集中できるようになる。AIは社会全体の発展に貢献する。
    Bさんの意見AIの普及は多くの職業を奪い、人々の仕事がなくなる可能性がある。また、AIへの依存で人間の思考力や創造性が低下し、社会の豊かさが損なわれる。

    設問: あなたの意見はAとBのどちらに近いですか。また、どちらとも異なりますか。自分の意見とそう考える理由を述べなさい。(800字程度)


    合格に導くための対策ステップ(講師の視点)

    このディスカッション形式の問題に対応するための具体的な戦略と、文章構成のポイントを解説します。

    ステップ1:課題文の徹底分析と視点の把握

    まず、AとBの意見がどのような観点で対立しているのかを明確にします。

    • Aの観点: 効率化・経済発展・人間のクリエイティブ性の向上
    • Bの観点: 雇用問題・人間の思考力・創造性の低下

    作文の冒頭で、「私はAさんの意見に近い」あるいは「どちらとも異なる立場を取る」と、自分の立場を明確に宣言することが重要です。

    ステップ2:論拠となる「具体例」の選定と深化

    作文の説得力を左右するのは、抽象的な議論ではなく、具体的で説得力のある事例です。海外生活の経験を活かし、AIが実際に利用されている場面を具体的に示します。

    相吉先生

    抽象的な用語(例:「生産性」「思考力」)を、自分なりに噛み砕いて定義することが、論理的な文章を書く上で非常に重要です。例えば、「生産性」を「限られた時間の中で生み出せる成果物やアイデアの量」などと定義づけ、この定義に沿った具体例(例:農業でのAIによる作業効率化、映画制作でのAIによる下地作りなど)を用いると、一貫性が生まれます。

    • Aの立場(AIは発展に貢献)を取る場合:
      • 根拠1(効率化): 農業分野でのAIによるデータ分析に基づいた最適化、あるいは物流における自動運転導入の可能性。
      • 根拠2(創造性): AIが小説やイラストの「下地」や「アイデアの種」を提供することで、人間はより高度なアレンジや編集といったクリエイティブな活動に集中できる。
    • Bの立場(AIは豊かさを損なう)を取る場合:
      • 根拠1(雇用): 自動運転技術の発達がタクシーやバスの運転手の仕事を奪う可能性。また、生成AIの発達により、クリエイティブなアーティストの仕事まで侵食されている現実。
      • 根拠2(思考力): 学校の宿題や課題を生成AIに依存することで、自分でリサーチし、判断し、要約する力といった探究のプロセスが失われてしまう危険性。

    ステップ3:論理的な文章構成

    作文の本文は、以下の構造を意識し、内容を整理するために小見出しを活用することをおすすめします。

    相吉先生

    作文では、抽象的な議論で終わらせず、身の回りの社会問題や学校生活といった身近な事例に結びつけることが重要です。具体例が豊富だと、採点者に「社会への関心が高い」という好印象を与えます。

    1. 導入(立場宣言と概略)

    まず、課題文の内容を簡潔に要約し、自分の立場(A、B、または第三の意見)を明確に述べます。

    2. 本論

    根拠その1:【具体的なテーマ】におけるAIの貢献(または悪影響)
    • 根拠を説明し、すぐに具体的な事例を提示します。
    根拠その2:【別のテーマ】におけるAIの功罪
    • 最初の根拠とは別の視点や分野から、自分の意見を裏付ける理由と具体例を展開します。

    3. 結論(まとめと提言)

    自分の意見を再度強調し、「AIの進歩は避けて通れないが、人間の役割を明確にして、共存を目指すべきだ」といった、未来志向の提言で締めくくることをおすすめします。

    まとめ

    • 立場を明確に:作文の冒頭で自分の意見(A、B、または第三の意見)をはっきりと述べましょう。
    • 論理構造を意識:導入→本論(複数の根拠と具体例)→結論の構成を徹底し、本論では小見出しを使って内容を整理しましょう。
    • 具体例で説得力向上:AIなどのテーマに対し、抽象的な議論ではなく、身近な生活や社会の出来事に結びついた具体的で一貫性のある事例で意見を裏付けましょう。

    4. 特別講座のご紹介

    TCK Workshopでは、ドルトン東京学園の日本語作文対策に特化した個別指導を提供しています。

    • 日本語作文・小論文対策の個別指導:ディスカッション形式の問題に対応できるよう、ロジックツリーを使った思考訓練や、意見を裏付ける具体例の収集指導など、思考プロセスから文章化までを徹底サポートします。
    • 帰国生受験を総括的にサポート:各学校の入試傾向を徹底分析し、日本語・算数・理科・社会といった筆記試験から面接まで、総合的な対策を個別指導で行います。

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