はじめに

海外での生活や学習経験を積んだ帰国生にとって、日本の学校が求める「自己PRカード」や「志望理由書」の作成は、合否を左右する重要なプロセスです。特にICU高校の入試で課される自己PRカードは、その分量の多さから「自己分析を極める」ことが求められる課題として知られています。
このICU高校の対策は、中学受験、高校受験、大学入試のいずれにおいても、推薦入試やAO入試(総合型選抜)で課される出願書類作成の基本的なアプローチとして応用が可能です。
本記事では、ICU高校の自己PRカードを具体的な例として取り上げ、書類選考で評価される「深い自己分析」と、それを効果的に伝えるための戦略を専門的な視点から徹底的に解説します。単に活動実績を列挙するだけではない、説得力のある志願理由書を作成しましょう。
自己PRカード・志願理由書対策の全体像
帰国生入試の多くは、学力試験に加えて、海外での経験やそこで培った能力を評価する書類選考が行われます。ICU高校の場合、自己PRカードはA4用紙2枚にわたり、主に3つの質問で構成されています。このボリュームは、他の多くの学校と比較しても最も多い部類に入ります。
ICU高校の自己PRカードに求められる要素
ICU高校の自己PRカードで質問されるのは、以下の3つの主要項目です。
- ICU高校に入学したい理由(約800字)
- 海外生活を通して学んだこと(約600字)
- 諸活動の状況や実績について(約600字)
これらの質問を通して、学校側が探しているのは「帰国後の生活や高校生活を頑張りきれるか」という思いや根拠です。海外から日本への生活・学習環境の変化は決して容易ではありません。日本語のカリキュラムへの適応、異文化への再適応など、困難を乗り越えるための「覚悟」や「粘り強さ」を学校は見ています。

帰国生入試における志望理由書は、単に「英語力を伸ばしたいから」といった表面的な理由で終わらせてはいけません。自分自身の過去の経験と、学校で挑戦したいことや挑戦できることが具体的に重なる部分を見つけ、「なぜこの学校でなければならないのか」という点を深く掘り下げていくことが重要になります。
学校側が特に重視するポイントは、以下の5点です。
- 海外在留歴:どういった国々で生活してきたか。
- 海外での努力:勉強、部活動、その他活動を通してどう頑張ってきたか。
- 適応の状況:異なる文化や新しい環境にどう適応していったか。
- 言語の習得状況:主に英語力をどう高めてきたか、その努力の過程。
- 成績の向上:3年間などの学校生活の中で、成績がどのように伸びていったかという「伸びしろ」。
これらのポイントを意識し、活動実績だけでなく、その背後にある努力のプロセスと精神的な成長を言葉にすることが求められます。
合格を勝ち取るための自己分析と戦略

書類選考の核となるのは、自分自身を深く理解し、それを説得力をもって表現する自己分析です。具体的な自己分析と文章化の戦略を解説します。
過去・現在・未来の視点から自己を深掘りする
志願理由書を作成する上で最も重要となる自己分析は、「過去・現在・未来」という3つの時間軸で深掘りすることをおすすめします。
- 過去:これまでの海外での生活、学習、活動の中で、「最も困難だったこと」と「それをどう乗り越えたか」を具体的に洗い出しましょう。この経験があなたの適応力と粘り強さの根拠となります。また、成果だけでなく、成長の過程(成績が悪い時期からどう努力して良くなったかなど)に焦点を当てることが大変重要です。
- 現在:現在の自分が持っているスキル(英語力、異文化理解力など)や情熱を整理しましょう。これらはすべて過去の努力の結果であることを明確にします。
- 未来:高校卒業後(または大学卒業後)に何をしたいのか、どのような社会貢献を目指すのかという「将来の目標」を具体的にイメージしましょう。
この「未来の目標」から逆算することで、ICU高校(あるいは志望校)がその目標を達成する上でどのような役割を果たす場所なのか、そして自分がその環境をどう活かしたいのかという具体的な志願理由を導き出すことができます。将来の目標がまだ明確でない場合は、今の自分自身が頑張っていること(例:サッカー、音楽活動など)の延長線上で、将来どのような可能性があるのかを描写し、その実現のために高校で何をすべきかを伝えるというアプローチでも十分に説得力を持たせることができます。
経験をストーリー化し、成長のプロセスを伝える
単なる活動報告を避けるためには、経験を「ストーリーマウンテン」のようなストーリー形式に落とし込んで伝えることが有効です。人間は、単調な羅列よりも、感情の起伏や困難の克服といったストーリーに惹きつけられます。

活動の成果(例:コンクールで入賞した、TOEFLで高得点を取った)は実績として当然重要ですが、それ以上に「なぜその活動に取り組んだのか」という動機、「活動中に直面した葛藤や挫折」、そして「そこから何を学び、どう成長したか」という経験から学んだことこそが、学校側にとって最も知りたい情報です。このプロセスを具体的なエピソードを交えながら描写するように心がけましょう。
また、活動実績や状況を記述する際には、できる限り「数字」を含めることで客観的な裏付けと分かりやすさを高めることができます。例えば、「読書が好き」ではなく、「1年間で専門書を100冊読破した」という表現のように、活動量や成果を具体的に示すようにしましょう。資格試験のスコアなども、活動実績として明確に記載することが重要です。
学校が求める「適応力」と「やり抜く力」を裏付ける
ICU高校をはじめとする帰国生入試では、海外での生活を通じて得た「適応力」が重要視されます。新しい環境、違う文化、異なる言語の中で、どのように自分の力を発揮し、課題を解決してきたのかという具体的な事例を豊富に用意する必要があります。
- 適応力の具体例:異なる文化を持つ友人たちとの意見の衝突をどのように解決したか、現地校の授業についていくためにどのような工夫をしたか。
- やり抜く力の具体例:勉強や課外活動で目標を立て、その達成のために長期的にどのように努力を続けたか(成績の向上プロセスがこれにあたります)。
志願理由書の中で、これらの事例を通じて、自分には「海外生活から日本に戻ってきても、必ずこの学校のカリキュラムと環境に適応し、与えられた課題をやり抜くことができる」という根拠を示すことが、合格を勝ち取るための最も強力な戦略となります。
受験に必要な「学校調べ」と「面接対策」

自己分析と並行して、志望校への理解を深める「学校調べ」と、書類内容を直接伝える「面接対策」を進めることも重要です。
志望校への理解を深める「学校調べ」
自己PRカードで志望理由を説得力をもって伝えるためには、学校の理念や教育内容を深く理解することが不可欠です。
- 公式情報(ホームページ・パンフレット):これらは学校が提供している教育内容、カリキュラム、特殊なプログラム(例:グローバルラーニングプログラムなど)を知るための最も詳細な情報源となります。硬い内容になりがちですが、具体的な学習内容を把握するためには必須です。
- 非公式情報(SNS・ブログなど):学校の雰囲気や生徒たちのリアルな活動を知るために、学校が運営しているSNSやブログなどを確認することをおすすめします。ホームページだけでは伝わらない「この学校の良さ」を言葉に落とし込むための参考情報が得られます。
- 説明会・ウェビナー:学校が実施する説明会や、TCK Workshopのような外部機関が連携して実施するウェビナーに参加することで、学校生活の具体的なイメージや、過去の合格者がどのような準備をしてきたかという実例を知ることができます。
書類と一貫性を持たせる「面接対策」
面接は、自己PRカードや志願理由書で記述した内容を、直接審査官に確認し、人間性を評価する場です。
面接対策は、自己PRカードの準備がしっかりとできていれば、それほど特殊な練習は必要ありません。書類で準備した内容を、自信を持って、はっきりと自分の言葉で伝えられるかどうかが重要になります。見られる視点は、その人自身の人間性、そしてメッセージを言葉にして伝えられる能力です。
面接対策は書類作成とセットで考えることが重要です。エッセイで書いたことと、面接で話す内容にズレがないよう、一貫性を持たせるようにしましょう。自信を持って伝えられるように、事前の練習は必須です。
まとめ
ICU高校をはじめとする帰国子女入試の自己PRカード・志願理由書対策で成功するためのポイントは以下の通りです。
- 過去・現在・未来の3軸分析:経験を振り返り、将来の目標から逆算して「なぜこの学校か」という志願理由を明確にしましょう。
- ストーリーテリングの活用:困難の克服や成長のプロセスをストーリー形式で伝え、単なる実績の羅列を避けましょう。
- 「適応力」と「やり抜く力」の裏付け:海外生活で得た能力を具体的に示すエピソードを用意し、日本での学校生活をやりきれる根拠を提示しましょう。
- 最新情報の確認と面接対策:学校調べを徹底し、作成した書類と面接での発言に一貫性を持たせられるよう準備を進めましょう。
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