2026年1月より、TOEFL iBT®(Test of English as a Foreign Language, Internet-Based Test)が大幅にリニューアルされ、新形式での実施が始まります。この変更は、単なる試験時間の短縮に留まらず、受験者の英語力をより正確かつ効率的に測定するための根幹的な仕組みの進化です。
特に海外で学習を進める帰国生や、国内外の大学進学を目指す皆さんにとって、この新しい形式と旧形式との違いをいち早く理解し、状況を把握することが極めて重要です。「来年から始まるTOEFL新形式と旧形式との違いを一目で知りたい」という皆さんの疑問に答えるべく、本記事ではETSの公式情報や最新のウェビナー内容に基づき、変更点を徹底的に解説します。

講師:産屋敷二コラ
TCK Workshop 特別講師。カナダ生まれ、Capilano University(カナダ)、南山大学卒業。指導経験豊富なバイリンガル講師として、英検・TOEFL・IELTSなどの英語資格対策から、SAT/SSAT、IB French ab initioといった海外カリキュラムまで、幅広い言語教育と帰国生受験対策を専門とする。
この記事は、TCKworkshop主催のウェビナーを基に作成しています。TCKworkshop公式Youtubeチャンネルでは、指導経験豊富な講師が実際の指導を通して蓄積した帰国生の受験、英語学習などについての情報をお伝えしておりますので、ぜひご覧ください。
2026年TOEFL iBTの最も大きな変更点

2026年のTOEFL iBTアップデートで最も注目すべきは、アダプティブ方式(Multistage Adaptive Test)の導入と、スコアシステムの大幅な変更です。これまでの固定形式の試験から脱却し、受験者一人ひとりの英語力に合わせた「個別最適化された試験」へと進化します。
アダプティブ方式とは?
アダプティブ方式とは、AIが受験者の解答状況をリアルタイムで分析し、その後の問題の難易度を調整する仕組みです。
旧形式(固定形式)
受験者のレベルに関わらず、出題される問題は全て同じで一律でした。
新形式(アダプティブ方式)
リーディングとリスニングのセクションで導入されます。試験は複数のステージに分かれており、前半(第1モジュール)の正答率が高ければ、後半(第2モジュール)ではより難易度の高い問題が出題されます。逆に、不正解が続いてしまうと、AIは「この難易度は難しい」と判断し、受験者の実力に合った優しい問題に切り替え、実力が発揮できるレベルを探りながら試験が進んでいきます。
この仕組みにより、受験者は常に自分の実力に見合った問題に挑むことになり、より正確な英語力の測定が可能になります。また、不要な問題が減るため、テスト全体の時間の短縮にもつながると考えられています。現時点では公式のテスト時間に関する発表はありませんが、アダプティブ方式の特性上、不要な問題が減ることで、テスト時間は徐々に短縮されていく可能性は考えられます。

アダプティブ方式の特性として、テスト序盤の回答がスコアに大きく影響する点が重要です。前半で高得点を取ると、後半に難易度の高い問題が出現し、ハイスコアを獲得するチャンスが広がります。逆に、難易度が低い問題を連続で正解しても、高いレベルのスコアは得られないため、後半での巻き返しが難しくなる点に注意が必要です。
スコアシステムの変更:1~6のバンドスコア導入
従来の0〜120点満点というスコアシステムに加え、新たに1から6のバンドスコアが導入されます。
旧形式
各技能0点から30点、合計120点満点。
新形式
各技能0点から6点、合計6点満点のバンドスコアが導入されます。このバンドスコアは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)との関連性がより明確になり、TOEFLスコアを国際基準で比較しやすくなることを目的としています。例えば、6点を取るためには、従来のTOEFLスコアで114点以上を取る必要があると、旧スコアとの対照表から推測されています。
| 現行スコア (0~120点) | 新形式スコア (1~6点) | CEFRレベル |
| 114~120 | 6 | C2 |
| 106~113 | 5.5 | C1 |
| 95~105 | 5 | C1 |
| 86~94 | 4.5 | B2 |
| 1~85 | 1 | A1 |
ETSは、この新スコアへの移行期間として2年間(2028年1月まで)は、スコアレポートに従来の0~120点スコアと新しい1~6バンドスコアの両方を併記すると発表しています。そのため、移行期間中は、大学や学校側は従来のスコアを参考にするケースが多いと考えられますが、将来的にセファールの1から6のバンドを準用していく可能性は高いといえます。
4技能別に見る出題形式の変更点

今回のアップデートでは、すべての技能において、アカデミックな技能だけでなく、より実用的なコミュニケーション能力を測ることに重点が置かれ、問題形式が大きく変更されます。
試験構成と時間の変更点
試験の大きな変更として、試験時間とセクションの順番があります。
| 項目 | 旧形式 | 新形式(2026年〜) |
| 試験時間(約) | 約2時間 | 約67分〜85分(問題数により変動の可能性あり) |
| セクション順序 | リーディング → リスニング → スピーキング → ライティング | リーディング → リスニング → ライティング → スピーキング |
| 結果通知 | 受験後、約2週間後 | 受験後、72時間以内 |
セクションの順番は、後半のライティングとスピーキングが入れ替わり、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの順に変更されます。また、結果の通知が大幅に短縮され、受験後72時間以内と、かなり早くスコアを受け取ることができるようになりました。
リーディング (Reading) と リスニング (Listening)
両セクションともアダプティブ方式が採用されるほか、出題される題材の幅が広がります。
| 技能 | 旧形式の傾向 | 新形式の変更点 |
| Reading | アカデミックな長文読解が中心。前の問題に戻れる。 | 2段階アダプティブ方式を導入。アカデミックな題材に加え、SNSの投稿やレストランのメニュー、広告など、日常や実務に近い多様な文章が追加されます。一度回答を決めると前の問題に戻れない一問一答形式になります。 |
| Listening | 大学の講義・教授との面談など、アカデミックな内容が中心。 | 2段階アダプティブ方式を導入。講義形式の分量が減り、買い物、趣味、旅行など、日常的な幅広いシチュエーションの会話が増加します。 |

これまでのTOEFLは大学というコンテクストを意識して作られていたため、小学校や中学校の生徒さんにとっては内容が難しすぎる面がありました。今回の変更により、大学のめちゃくちゃアカデミックな内容だけでなく、それ以外の日常の場面を踏まえた内容が増えるため、どの英語レベルの受験者にも受験可能な仕組みが提供されることになります。
ライティング (Writing)
従来のIntegrated Writing(要約)タスクの一部が廃止され、より実践的なタスクに変わります。
| タスク | 旧形式の主なタスク | 新形式の主なタスク | 推定時間 |
| タスク1 | Integrated Writing(講義と文章を要約・比較) | Build a Sentence(短文構築) | 約3分 |
| タスク2 | Independent Writing(意見論述エッセイ) | Write an Email(メール作成) | 約7分 |
| タスク3 | 廃止 | Write for an Academic Discussion(学術ディスカッションへの投稿) | 約13分 |
- Build a Sentence: 与えられた単語を並べ替えて、提示された発話に対する自然な応答となる短文を作成します。
- Write an Email: キャンパスライフや日常の状況に基づき、短いメールを作成します。
- Write for an Academic Discussion: オンラインの学術ディスカッションに、与えられたトピックと他者の意見を踏まえて自分の意見を投稿します。
スピーキング (Speaking)
スピーキングも、より対話的で実践的な形式に変わります。
| タスク | 旧形式の主なタスク | 新形式の主なタスク | 推定時間 |
| タスク1 | Independent Speaking(意見論述) | Listen and Repeat(聞いた文章の復唱) | 約3分 |
| タスク2 | Integrated Speaking(会話や講義を要約) | Take an Interview(バーチャル面接形式) | 約5分 |
- Listen and Repeat: 聞いた短い文章をそのまま正確に復唱します。
- Take an Interview: バーチャル面接形式で、日常的な質問や一般的なトピックに関する意見を求められます。これは、従来の複雑な要約型タスクから、質問に対してシンプルに答える形式に変わったものです。

ライティング、スピーキングの新形式は、従来の「要約」や「論述」といったアカデミックなタスクから、「メール作成」「バーチャル面接」といったより実践的で日常生活に近いタスクへと変わりました。これは、英語をより効率的に、かつ実用的に測ることを目的とした変更であるといえます。
TOEFL新形式に関するその他の重要情報

TOEFL新形式について、受験生からよく聞かれる質問とその回答をまとめます。
Q1. 昔の公式問題集は役に立たなくなりますか?
A. 英語力向上を目指すのであれば、全く役に立たないということはありません。例えば、ライティングの「Write for an Academic Discussion」やスピーキングの「Take an Interview」は、一部従来の論述やQ&A形式と共通する要素があります。
ただし、新しい問題形式に慣れることを目的にするならば、今後ETSからリリースされるであろう新しい公式教材を併用するか、そちらに切り替えて学習を進めていくことをおすすめします。
Q2. 新しい1~6のバンドスコアは大学出願でどのように扱われますか?
A. 2026年1月以降の2年間は、スコアレポートに従来の120点満点のスコアも併記されます。この移行期間中は、大学や学校側は、引き続き従来のスコアを参考にするケースが多いと考えられます。
しかし、この新しいバンドスコアはCEFRレベルと関連付けられており、将来的にはこの国際基準のバンドスコアを準用していく可能性が高いため、常に公式情報を確認することが重要です。
Q3. アダプティブ方式で高スコアを取るための重要な注意点はありますか?
A. アダプティブ方式の特性上、前の問題に戻って回答を修正することができなくなる点が大きな注意点です。また、序盤の問題で間違えてしまうと、その後優しい問題が出題され、結果として高いレベルの点数が得られなくなる可能性があります。
高スコアを目指す場合は、テスト序盤で確実に正答し、難易度の高い問題が出現する状態にすることが重要であり、後半で巻き返すことは難しくなります。
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まとめ
2026年1月からのTOEFL iBT新形式は、受験者の英語力をより正確に、そして効率的に測定するために、大規模なアップデートが施されます。
- 試験形式の進化: リーディングとリスニングにアダプティブ方式が導入され、受験者の解答状況に応じて問題の難易度が変わります。
- スコアシステムの変更: 従来の120点満点に加え、CEFRとの関連性が明確な1~6のバンドスコアが導入されます(2年間は併記)。
- 各技能の変化:
- リーディング/リスニング: 日常生活・実務的なトピックが増加し、多様な英語素材への対応力が求められます。
- ライティング: メール作成など、より実践的なタスクに変わります。
- スピーキング: 復唱やバーチャル面接など、応答力と流暢さを重視するシンプルな形式に変わります。
- その他の変更: 試験時間が短縮され、スコア通知も72時間以内と迅速になります。また、アダプティブ方式の特性上、前の問題に戻っての修正はできなくなる点に注意が必要です。
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2026年からのTOEFL新形式は、多くの受験生にとって新しい課題をもたらします。特にアダプティブ方式や実践的なタスクへの移行は、従来の対策だけではカバーできない部分も出てくると考えられます。
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次回予告:TOEFL新形式を攻略する対策ポイント
今回の記事では、2026年から始まるTOEFL新形式と旧形式の違いについて詳しく解説しました。
次回の記事では、このアダプティブ方式の導入と出題タスクの変更を踏まえ、受験生が取るべき具体的な学習戦略と対策のポイントに焦点を当てて解説する予定です。
新形式でのハイスコアを目指すために、「どの技能から対策を始めるべきか」「序盤で点数を取るための学習法」など、具体的なアクションプランを知りたい方は、次回の記事もぜひご期待ください。

