はじめに

海外での学習経験を活かし、三田国際学園中学校への進学を目指す帰国生にとって、英語入試は最大の関門であり、同時にチャンスでもあります。この試験は、単なる英語力を問うものではなく、算数的な思考力や高度な記述力、そして何より60分という限られた時間で4パートを解き切る戦略的な時間管理能力が求められます。

「英語が得意だから大丈夫」と油断することなく、試験の特性を正確に理解し、残りわずかの期間でどこに注力すべきかを把握することが、合格への近道となります。本記事では、三田国際の英語入試の構成要素を深く分析し、特に合否を分ける「リーズニング」と「記述ライティング」の具体的な対策法について、専門家の視点から徹底的に解説します。この最終チェックリストを活用し、万全の体制で試験に臨みましょう。

三田国際学園 中学校 英語入試の全体像と合格戦略

三田国際学園中学校の英語入試は、試験時間60分で以下の4パートが構成されるという、非常にタフな試験です。

  • Reasoning:5問(算数的な問題)
  • Listening:5問(4択問題)
  • Reading:長文2題(記述式と4択問題)
  • Writing:1題(エッセイ)

この試験の特徴は、高難度の問題を、時間的余裕がない中で解き切らなければならない点です。全パートに挑むには、どこに何分かけるかを分単位で計画し、その計画通りに進める自己管理能力が不可欠となります。

三田国際の試験は英語力だけでなく、独特なReasoingセクションがあるため、この学校に特化した対策時間を確保することが重要になります。

合否を分ける重要ポイント:差がつく3つのセクション

三田国際学園の英語入試において、受験者の間で得点の「振れ幅が激しい」、つまり合否に直結しやすいセクションは以下の3つです。

  1. Reasoningの問題:算数的な思考力と英語の読解力が問われる
  2. Readingの記述問題:本文から探した情報を自分の言葉で表現する力が必要
  3. Writing(エッセイ):抽象的なテーマを論理的に構成し、具体的に説明する力

ReadingやWritingの記述を要する問題や、特有の思考力が試されるReasoningを残してしまうと、点数がゼロになる可能性があり、平均点を大きく下げる原因となります。一方で、しっかり解き切ることができれば、他の受験生に対して大きなアドバンテージを得られます。直前期には、この3つの得点源を確実にものにするための練習に注力することをおすすめします。

逆に、ListeningとReadingの選択肢問題は、比較的平均点が高くなる傾向にあります。ここは確実に得点を重ねるべき部分であり、5問中4問以上を正解することを目標に、必要な失点は最小限に抑えるよう意識することが重要です。

合格に近づくための最終チェックリスト:各技能別の徹底対策

残りわずかな期間で、三田国際の英語入試に特化した対策を効率的に進めるためのポイントを、セクションごとに解説します。

Reasoningセクション対策:算数知識と論理的思考力の養成

Reasoningセクションは、英語の長文を読み解き、問題の意図を理解した上で、算数的な論理的思考力を用いて解答する複合型の問題です。多くの受験生にとって難関とされていますが、これは英語の試験対策に注力しすぎて、算数の学習を後回しにしているケースが多いためです。

産屋敷先生

三田国際のIC入試は「英語一科試験」ですが、Reasoningセクションでは算数の知識が不可欠です。しかし、日本の受験算数の全範囲をやる必要はありません。アメリカの小学校のカリキュラム(American Math)をベースにした出題傾向に合わせて、対策の範囲を絞り込むことが、直前期においては非常に重要になります。

出題傾向と対策範囲の特定

Reasoningセクションで問われるのは、アメリカンマスの知識です。日本の算数とはアプローチが異なる場合があるため、過去問や模擬試験を通じて問題形式に慣れる必要があります

重点的に抑えるべき範囲

  • Average Value(平均)
  • Ratio and Rates(比率)
  • Decimal and Fraction(小数と分数)
  • Geometry Measurement(幾何学と測定、図形問題)
  • Percent(パーセント)
  • Probability(確率)
  • Speed, Distance, and Time(速さの問題)
  • Greatest Common Factor and Least Common Multiple(最大公約数と最小公倍数)

これらの基礎的な内容を英語で理解し、解けるようにすることが最優先です。
特に苦手な分野がある場合は、まずその分野の基礎問題(一行問題)を英語で解いて慣れ、次に文章題へと移行する学習が効果的です。単純な計算力だけでなく、ロジックを問うような「頭を使う」問題にも対応できるよう、余裕があれば広範囲で訓練を積むことをおすすめします。

Listeningセクション対策:専門用語と集中力の壁を越える

三田国際のListeningは、アカデミックで専門用語が多く、さらに問題文自体も音声のみで流されるという特徴があります。音源は2回流れますが、長尺で難解なため、集中力の維持が不可欠です。

産屋敷先生

Listeningの音源は1回あたり約7分と長く、2回聞くとそれだけで約14〜15分、つまり試験時間の約4分の1を占めてしまいます。後のReadingやWritingに十分な時間を残すためには、「1回で聞き切る」という意識と技術を身につけることが時間戦略上、絶対的に重要になります。

時間管理とメモ取りの徹底

試験終了までに全問題を解き終えるためにも、Listeningは1回目を聞いている間にすべての解答を完了させることを目標にしてください。

  1. メモ取りの徹底問題文も音声のみで流れるため、設問の意図や選択肢を正確に把握するために、聞きながら主要なキーワードや数字をメモする習慣をつけましょう。
  2. 単語力の強化準1級から1級レベルの専門的な単語も頻出します。単語のインプットは、単語帳だけでなく、アカデミックなテーマ(科学、歴史、環境など)の英文記事やTEDトークなどを聞き、文脈の中で定着させることが効果的です。

Readingセクション対策:記述式と選択肢問題の攻略法

Readingは、記述式と選択肢問題の2形式が出題されます。特に記述式は、先述の通り得点の振れ幅が大きいセクションであり、重点的な対策が求められます

産屋敷先生

記述問題の採点基準は厳格です。単に本文の内容を理解しているだけでなく、「聞かれていることの本質」を正確に捉え、「自分の言葉で論理的に説明し、完全な文で表現する」という3つのステップが求められます。このステップを疎かにしないよう、練習から意識することが大切です。

記述問題攻略の鍵:「パラフレーズ」技術の習得

三田国際の記述問題では、完全な文で回答すること本文からのコピーをしないことが明確に指示されています。

  • 完全な文(フルセンテンス):主語とそれを修飾する動詞を含む完全な形で回答します。単語や短いフレーズのみの回答は減点対象となるため、文法ミスを恐れず、常に完全な文で書き上げる練習をしましょう。
  • パラフレーズ(言い換え):本文の表現を、同意語への置き換えや、能動態を受動態に変えるなど、文意を変えずに表現を変える技術が不可欠です。
    例えば、The Japanese company made the coffee.⇨The coffee was made by a Japanese company.のように、主語と目的語の関係性を入れ替える手法は、パラフレーズの有効な手段の一つです。

過去問や模試の記述問題に取り組む際は、「正しい箇所から引用できているか」を確認し、その後「いかに自分の言葉で言い換えられているか」をチェックする練習を繰り返すことが重要です。

選択肢問題の確実な得点化

Readingの選択肢問題は、確実に得点源にするべきセクションです。聞かれている部分に正確に対応する本文の箇所を見つけ、そこに線を引く(または印をつける)作業を徹底しましょう。近年はノンフィクション(説明文)の出題が多いものの、過去にはフィクションも出題されているため、平願校対策なども活用しつつ、多様なジャンルの情報に慣れておくことをおすすめします。

Writing(エッセイ)対策:抽象的なテーマを具体化する

Writingセクションでは、「偉人の名言に対する賛否」や「テクノロジーと生活」といった抽象的で概念的なテーマが出題されることが特徴です。文字数の制限はありませんが、安定した評価を得るためには120〜150語程度の充実した内容が望ましいとされています。

構成戦略:「ボディ2つ」で中身を充実させる

限られた試験時間(15〜20分が目安)の中で、5パラグラフ構成(導入、ボディ3つ、結論)を完璧に書き上げるのは至難の業です。中身が希薄なエッセイになってしまうよりは、導入、ボディ2つ、結論の4パラグラフ構成とし、各ボディで1つの理由を深く掘り下げて説明する方が、評価が高くなる傾向があります。

抽象的な質問を具体的に解説する力

出題テーマが抽象的であるほど、自分の回答が質問の意図から外れて「脱線」しやすくなります。この問題を避けるためには、抽象的なテーマを具体化する訓練が欠かせません。

例えば、「夢を見ることができれば、それは実現できる」という名言に対して意見を述べる場合、「夢」という漠然とした概念を「サッカー選手になる夢」といった具体的な目標や自己の経験に置き換えて論を展開しましょう。
自分の過去の経験や、実現のために現在行っている努力を具体例として活用することで、エッセイに深みと説得力が生まれます。各パラグラフの終わりに「この段落は質問に答えられているか」と自問し、常にテーマとの一貫性を確認しながら書き進めることをおすすめします。

TCK Workshop

TCK Workshopは、ノウハウを持つ講師陣がお子様一人ひとりの学習経験や苦手分野を面談で把握し、個別にカリキュラムを作成します。インターネットさえあれば世界中どこからでも受講可能なため、海外在住のお子様も時差を気にせず、元帰国子女や指導経験豊富なプロ講師のサポートを受けられます。
SATやAP、IBなどの特殊なカリキュラムへの対応力も高く、三田国際の対策だけでなく、今後の学習全体を見据えたサポートを提供できることが大きな強みです。

まとめ

  • 時間戦略の確立:60分で全パートを解き切るため、各セクションにかける時間を分単位で決め、計画的に実行する練習が必要です。
  • Reading対策の徹底:アメリカンマスの知識を英語の問題文で解けるよう、基礎範囲を確実に固めることが重要です。
  • 記述力の強化:Reading記述とライティングにおいて、「完全な文で回答する」「本文をコピーせず自分の言葉で言い換える」というルールを徹底し、添削指導などを活用して質の高い解答を作成する練習を積みましょう。
  • Writingの具体化:抽象的なテーマを、自己の経験や具体的な例を用いて論理的に説明する力を養いましょう。ボディは2つで中身を充実させる構成がおすすめです。

関連記事

・帰国子女の中学受験や高校受験の全体像、およびそのロードマップについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。 https://www.tckwshop.com/tckblog/40236-2/

・英語で「話せる」のに「書けない」という帰国生が直面するライティングの課題と、それを克服するための効果的な対策法について、深く掘り下げた記事はこちらです。 https://www.tckwshop.com/tckblog/40762-2/