海外での学習経験を活かし、日本の国際系中学受験に挑む帰国生にとって、三田国際学園中学校 (International Course: IC)は最難関の選択肢の一つです。特に、合否を大きく左右するのが、論理的思考力と英語の表現力が問われるライティング(エッセイ)です。試験時間が厳しく設定されている中で、どれだけ質の高い論述を短時間で完成させられるかが、直前期の得点源となります。
本記事では、三田国際のライティングで確実に高得点を狙うために必須となる「アカデミックなエッセイの構造」と、プロ講師が実際に指導する中で多く見られる「具体的な添削・改善ポイント」を、ウェビナーの知見に基づき徹底解説します。ライティングの点数が伸び悩んでいる方や、本番直前に最終チェックを行いたい方は、ぜひこの実践的な構成術を習得し、ライティングを得点源にすることをおすすめします。

講師:産屋敷二コラ
TCK Workshop 特別講師。カナダ生まれ、Capilano University(カナダ)、南山大学卒業。指導経験豊富なバイリンガル講師として、英検・TOEFL・IELTSなどの英語資格対策から、SAT/SSAT、IB French ab initioといった海外カリキュラムまで、幅広い言語教育と帰国生受験対策を専門とする。
この記事は、TCKworkshop主催のウェビナーを基に作成しています。TCKworkshop公式Youtubeチャンネルでは、指導経験豊富な講師が実際の指導を通して蓄積した帰国生の受験、英語学習などについての情報をお伝えしておりますので、ぜひご覧ください。
抽象的なトピックを攻略する:イントロダクションの強化術
三田国際ICの入試で出題されるライティングトピックは、非常に抽象的で、幅広い解釈が可能な内容が多い傾向にあります。

問いに対して単に自分の意見を述べるだけでは、他の受験生との差はつきません。与えられたトピックを自分の中で具体的に、わかりやすく整理し直す作業が最も重要です。この「具体化」が、エッセイ全体を通して読者に自分の論点を明確に伝えるための土台となります。
例題
Look at the following topic and write a well-structured essay about it. Write as much as you feel necessary to completely answer the question.
Are natural talent or hard work more decisive in achieving excellence?
イントロダクション(導入)は3つの要素で構成する

ライティングの最初の段落であるイントロダクションは、読者にあなたの主張と、それを展開する論理的な枠組みを提示する重要な役割を担います。単なる主張だけでなく、以下の3つの要素を意識して構築しましょう。
1. 背景情報(Background Information)
質問文で尋ねられている抽象的なトピックを、より詳細な言葉で、読者に論点を整理して伝える部分です。この背景情報があることで、「受験生が問題の本質を深く理解している」という印象を採点官に与えることができます。
例:「ある人は生まれ持った才能の重要性を主張する一方で、別の人たちは継続的な練習の価値を強調する。この議論は多くの人々にとって関心のあるテーマである」
記述のポイント:
トピックが指す論点について、問いの背景にある二項対立や論争の存在を明確に提示することをおすすめします。
注意点:
三田国際入試のように制限時間が厳しいため、エッセイを魅力的に見せる「フックセンテンス」に時間をかけすぎるのは避け、背景情報の整理に集中しましょう。
2. 主張(Thesis Statement)
トピックに対するあなたの明確な意見や結論を示す、イントロダクションの核となる一文です。
例:「このエッセイでは、卓越した成果を達成するためには、生まれ持った才能よりも継続的な努力の方が重要であると主張します。」
記述のポイント:
エッセイ全体を通して一貫するメインの主張を、簡潔に、力強く述べるようにしましょう。
ライティングの得点を確実に伸ばすボディの構成術
三田国際のライティングにおいて、最も採点官が重視し、点数が大きく加算されるのが主張を裏付ける論理的な説得力です。これは主に、ボディ(本論)と結論(コンクルージョン)の構成によって決まります。
説得力を高めるボディの「4段構成」の実践
一つの論点を深掘りするボディパラグラフは、以下の4つの要素で構成することで、主張にアカデミックな深みと説得力が増し、高評価につながります。
1. ポイント(トピックセンテンス)
そのパラグラフで展開する主要な主張を、簡潔に、明確に示す一文です。
例:「努力は、単にスキルを向上させるだけでなく、個人の人格的な資質を育てる上で重要な役割を果たします。」

トピックセンテンスは、できる限り短く、分かりやすい表現で書くことが、採点官に「何を主張したいのか」を瞬時に理解してもらうための秘訣です。不必要な修飾語や接続詞は省きましょう。
2. 説明(Explanation)
ポイントで述べた主張を、読者にとってさらに具体的に理解できるように、詳しく説明する部分です。
例:「定期的な練習は、技術的なスキルを向上させるだけでなく、決断力や物事の整理能力といった、目標達成に不可欠な精神的な資質を養うのに役立ちます。」
3. 具体例と根拠(Example & Evidence)
抽象的な主張を具体的な事実や知識で裏付ける、最も重要な部分です。ここが曖昧だと説得力に欠けると見なされ、減点対象となります。
- 避けるべき記述: 「これはスポーツ、音楽、ビジネスの世界で正しい。」(具体性に欠け、例示になっていない)
- 推奨される記述: 固有名詞や具体的な数値・場面を含め、読み手が情景を思い浮かべられる詳細なストーリーを用いるようにしましょう。
具体例には、自分の経験、歴史上の人物、スポーツ、ビジネスなど、受験生が持つ知識をフルに活用するようにしましょう。これにより、文章の信頼性と深みが増します。
例:「例えば、伝説的なバスケットボール選手であるマイケル・ジョーダンは、高校時代に一度代表チームから外されました。しかし、彼は誰よりも熱心に練習を続けた結果、後に史上最高の選手の一人となりました。これは、生まれ持った才能だけに頼るのではなく、継続的なハードワークが人を真の卓越性へと導くことを明確に示しています。」
帰国子女の中学受験や高校受験の対策を検討されている方は、以下の記事もご参照ください。
4. リンク(Concluding/Linking Sentence)
この段落で展開した論点を、エッセイ全体のメインの主張(Thesis Statement)にもう一度結びつけ、段落を締めくくる一文です。
例:「このことから、努力は才能だけでは達成できない、人としての包括的な成長を可能にするため、成功には不可欠であると言えます。」
結論(コンクルージョン)の「3段構成」による締めくくり

結論は、エッセイ全体の論理の筋道を再確認させ、読者に強い印象を残すためのセクションです。単に主張を繰り返すだけでなく、全体のまとめとして機能させましょう。
1. 主張の再提示(Restating the Thesis)
イントロダクションで述べたメインの主張を、異なる表現を用いて再度繰り返します。
例:「才能は出発点になるかもしれませんが、人を真に卓越した存在に仕上げるのは、継続的な努力の積み重ねです。」
2. 主要なアイデアの要約(Summary of Main Ideas)
2つ以上のボディパラグラフで展開した理由(根拠)を、それぞれ簡潔な一文でまとめます。これは、エッセイ全体の一貫性を高めるために、非常に重要な作業です。
例:「努力は、特定のスキルを向上させるだけでなく、個人の決断力や組織力といった人格的な資質も強化するためです。」
3. 締めくくりの一文(Concluding Statement)
エッセイ全体のテーマを踏まえた上で、読者に強いメッセージを残すような締めくくりをします。
例:「したがって、何かを上達させたいと願う全ての人は、生まれ持った才能に頼るだけでなく、日々ハードワークを続けることが成功への最も確実な道であると結論づけることができます。」

結論は、主張と根拠を効果的にリマインドする場所です。ボディで展開した詳細な論点を忘れずに、簡潔に総括することで、文章全体に一貫性と高い完成度を与えることができます。
三田国際の試験傾向について知りたい方はこちらもご覧ください。
TCK Workshopの三田国際IC特別対策講座

TCK Workshopでは、三田国際IC入試のライティングで合格点、またはそれ以上の高得点を獲得するための個別指導を提供しています。
- 添削実践: 抽象的なトピックに対する具体的かつ説得力のある論理構成の指導と、アカデミックな視点に立った徹底的な添削を行います。
- 模試と演習: 厳しい時間制限の中で、質の高いエッセイを完成させるための時間管理と解答戦略を指導します。
- 特別講師陣: 三田国際IC入試を熟知し、多くの合格実績を持つプロ講師が、生徒様一人ひとりの学習状況に合わせて最適な指導を実施します。
ライティングは、自己流の対策ではなかなか点数が伸びにくい分野です。プロによる添削と指導を受け、短期間で論理構成力を向上させることが、直前対策としては最も効果的な方法です。
三田国際ICの入試に特化した、より詳細なライティング対策をご希望の方は、ぜひ無料教育相談にお越しください。
まとめ
三田国際IC中学受験のライティングで得点アップを実現するための重要なポイントは以下の通りです。
- イントロダクションの構造化: 抽象的なトピックを背景情報で整理し、主張(Thesis Statement)を明確に示すことが重要です。
- ボディの4段構成: 各パラグラフをポイント、説明、具体的で詳細な根拠、リンクの構造で構築し、説得力を高めましょう。
- 具体例の深掘り: 固有名詞や詳細なストーリーを用いて、抽象的な主張を具体的な事実で裏付け、高評価を狙うことが必須です。
- 結論の要約: 主張の再提示に加え、ボディで述べた主要な根拠を簡潔に要約することで、エッセイ全体に高い完成度をもたらします。
- 時間管理: 厳しい時間制限の中で、複雑な構成よりも基本に忠実な構造で、質の高い内容を示すことを最優先にしましょう。

