2027年9月、東京大学に新たな学部「College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)」が開設されます。文系・理系の枠を超え、気候変動や医療などの社会課題に対し「デザイン」の手法で解決策を創造するこの学部は、すべての授業が英語で行われるという画期的なプログラムです。

先日、その入学者選抜の概要が発表されました。入試には大きく分けて2つのルート(Route A・Route B)が用意されており、それぞれ対象となる受験生や求められる要件が異なります。

この記事では、発表された情報を基に、Route AとRoute Bそれぞれの仕組みや出願要件、そして気になるスコア基準について、分かりやすく解説します。

こちらの記事は東京大学が公開した入試概要に基づいて作成しています。今後変更が生じる可能性がありますので、必ず大学公式の情報を確認してください。

岡留先生

講師:岡留 智史

TCK Workshop代表取締役、特別講師。ニューヨーク、サンフランシスコに滞在したのち帰国生の名門校である東京学芸大学附属高校に入学。早稲田大学の創造理工学部を卒業。TCK WorkshopではIB math、SAT、A-levels Physicsなど海外カリキュラムの理数科目の指導を中心に指導を担当。

    UTokyo College of Design とは?

    東京の新学部の国際的な授業のイメージ

    College of Designは、既存の学問領域にとらわれず、多様な知を統合して社会課題に挑む人材を育成する学部です。1学年の定員は約100名(Route A・B各50名程度)で、秋入学(9月入学)となります。

    • 完全英語カリキュラム:授業はすべて英語。世界中から集まる学生と学びます。
    • 文理融合:自身の関心に基づき、文系・理系を問わず学びを組み立てます。
    • 実践重視:長期インターンシップなどを通じ、実社会での課題解決に取り組みます。
    岡留先生

    東大が「デザイン」という言葉を学部名に冠したのは、単なる意匠のデザインではなく、社会システムや解決策を「設計(Design)」する力を重視しているからです。既存の枠組みを超えた学びを求めている点が大きな特徴です。

    【関連記事】College of Designについては下記記事にて詳しく解説しています。

    入試選抜方法:Route AとRoute Bの徹底比較

    入学者選抜は、書類審査と面接を含む「総合的評価」で行われます。出願者はRoute AまたはRoute Bのどちらか一つを選択して出願します(同一年度の併願は不可)。

    まずは、2つのルートの違いを一覧表で確認しましょう。

    Route A・Route B 比較表

    項目Route A(共通テスト利用)Route B(海外統一試験利用)
    主な対象日本の高校に通う生徒
    国内カリキュラム履修者
    海外の高校に通う生徒
    日本の一条校で海外統一試験を受けた生徒
    インターナショナルスクール生
    IB/SAT等取得者
    必須試験大学入学共通テスト
    (2027年1月実施)
    海外統一試験
    (IB, SAT, ACT, A-Level等)
    英語要件必須
    (TOEFL, IELTS等)
    条件により免除あり
    (英語カリキュラム歴等による)
    面接形式英語(一部日本語もあり)英語のみ
    (海外在住者はオンライン可)
    主な提出書類調査書、評価書、エッセイ等成績証明書、評価書、エッセイ等
    募集人数約50名約50名

    Route Aの詳細:大学入学共通テストを利用する場合

    東京の新学部を受験する日本の高校生のイメージ

    Route Aは、主に日本の一般的な高校教育課程を経て受験する生徒向けのルートです。国内の一般選抜と同様に「大学入学共通テスト」の受験が必須となります。

    出願要件と目安

    大学入学共通テストの受験

    東京大学が指定する教科・科目(国語、数学、理科、外国語など)を受験する必要があります。

    • 得点目安:入学後の学習を円滑に行うための基礎学力として、概ね8割以上の得点が目安とされています。
    大学共通テストの受験科目についてはこちら

    英語能力試験のスコア提出

    授業が全て英語で行われるため、高い英語力の証明が必須です。TOEFL iBTやIELTSなどの指定された試験のスコアを提出します。

    書類・面接

    高校の調査書やエッセイ(志望理由書等)を提出し、面接試験を受けます。面接は基本的に英語で行われますが、一部日本語が使用されることもあります。

      岡留先生

      Route Aで挑戦する場合、共通テスト対策(5教科7科目以上)と、高度な英語力の養成(TOEFL対策など)を両立させる必要があります。非常に負荷の高い受験勉強となるため、計画的な学習が不可欠です。

      語能力試験の目安スコア(Route A/B共通)

      提出が必要な場合に求められるスコアの目安は以下の通りです。

      試験名目安スコア
      TOEFL iBT80点以上
      IELTS Academic6.0以上
      Duolingo English Test110点以上
      英検 (EIKEN)2,400点以上
      (準1級・1級相当)

      有効期限2025年1月1日以降に受験したスコアのみが有効です。それ以前のスコアは認められません。

      岡留先生

      Duolingo English Testが認められている点が特徴ですね。一方で、TOEFL 80点などの英語要件は最低限のラインと考えられます。

      Route Bの詳細:海外統一試験を利用する場合

      東京の新学部を受験する海外生のイメージ

      Route Bは、主に日本のIB一条校や海外の高校やインターナショナルスクールで学び国際的な大学入学資格(IBやA-Levelなど)や統一試験スコア(SATなど)を持つ生徒向けのルートです。面接のために渡日する必要がないため、海外在住のまま受験が完結します。

      指定される統一試験と目安スコア(Expectations)

      Route Bでは、以下の統一試験のいずれかの成績提出が必須です。今回発表された要項では、出願時に期待されるスコアの目安(Expectations)が具体的に示されました。これらは足切り点(Cut-off)ではありませんが、合格を目指す上での重要な指標となります。

      統一試験名目安スコア (Expectations)備考
      SAT1480点以上Reading & Writing + Math
      Superscore(合算)は不可
      ACT33点以上Composite ScoreSuperscoreは不可
      IB (国際バカロレア)38点以上
      (42点満点中)
      6科目の合計点
      + TOK/EEで2点以上が必要
      GCE A-Level3科目でA評価以上Cambridge International Examinations, Oxford International AQA Examinations, Pearson Edexcel, or Learning Resource Networkの4団体のスコアのみを正式な出願資格として認める
      ATAR (豪州)98以上
      カナダ各州90%以上トップ5科目の平均
      (85%未満の科目がないこと)

      ※上記以外の国別統一試験についても要項に詳細が記載されています。

      その他の国別統一試験のスコアについてはこちら

      原則として、過去数年以内に取得したスコアや資格が受け付けられます。
      5年以上前の場合:取得から5年以上が経過しており、かつ出願期限までに新たなテストを受けられない場合は、募集要項発表後にアドミッションオフィスへ相談する必要があります。

      ※SATやACT受験者は、AP(Advanced Placement)スコアの提出も推奨されています。

      ※IBやA-Levelなどは、出願時に最終スコアが未着の場合(現役生など)Predicted Scores(見込み点)での出願が可能です。ただし仮合格となり、最終試験で出る最終スコアが基準を大きく下回ると合格が取り消される場合があります。

      岡留先生

      Route Bの統一試験スコア目安(SAT 1480、IB 38など)は、世界のトップ大学への出願基準と同等の高い水準です。実際には、SATのReadingセクションなどを攻略するために、英語資格のレベルより遥かに高い英語力が求められる点に注意してください。

      英語要件の免除について

      Route Bの出願者は、過去4年間のうち3年以上、外国語の授業を除くすべての授業が英語で行われるカリキュラム(English-medium education)で教育を受けている場合など、一定の条件を満たせば英語能力試験(TOEFL等)のスコア提出が免除される場合があります。ただし、条件を満たさない場合はスコア提出が必要です。

      スケジュールと併願に関する注意点

      2027年9月入学(第1期生)の選抜スケジュールは以下の予定です。

      • 募集要項発表:2026年8月頃
      • 出願開始:2026年10月頃(予定)
      • 合格発表:2027年2月〜3月

      重要な注意点:併願不可

      東京大学の他の入試との併願は認められていません。

      具体的には、College of Design(2027年9月入学)に出願した場合、2027年4月入学の「一般選抜(前期日程)」「学校推薦型選抜」「外国学校卒業学生特別選考」などには出願できません。

      東大を目指す場合、「College of Design」一本でいくのか、あるいは「従来の学部」を目指すのか、大きな決断が必要になります。

      まとめ

      • 2つのルート:国内生向けのRoute Aと、帰国・海外生向けのRoute Bがある。
      • Route A:共通テスト(8割目安)と英語スコアが必須。
      • Route B:SAT(1480目安)やIB(38目安)などの統一試験スコアが評価の核となる。
      • 英語力:両ルートともに高い英語力が前提。Route Bは条件によりスコア提出免除あり。
      • 併願制限:東大の他学部との併願は不可。

      TCK WorkshopのCoD対策

      TCK Workshopの講師のイメージ

      東大College of Design(CoD)は、これからの時代に必要な力を養うための、非常に魅力的かつ挑戦的な選択肢ですが、東大CoDは新しい学部であるため、ネット上にもまだ十分な情報がありません。だからこそ、帰国生受験のプロと一緒に戦略を立てることが重要です。

      TCK Workshopでは、求められるIBやSATのスコアメイク、そしてRoute Aで必要なTOEFL対策など、海外生・帰国生の学習を包括的にサポートしています。

      「IBの科目選択、これでCoDに通用するか不安」 「SATのスコアが伸び悩んでいて、英語力証明に自信がない」 「エッセイで書けるような強烈な原体験がない」このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひTCK Workshopの無料学習相談をご利用ください。

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      参照