日本の大学受験において、一般的には早い段階で文系か理系かに分かれ、その選択肢によって大学で勉強できる学部まで絞られてしまいます。しかし、近年注目を集めているリベラルアーツ教育は、専攻を最初から定めずに幅広い分野の学問を学びながら、自分自身の専門性を絞り込んでいく教育スタイルです。文系・理系という従来の区別にとらわれない学びは、国際バカロレア(IB)などの学際的なカリキュラムを受けてきた生徒様や、大学でもっと広い視野で勉強を続けたいと願う高校生にとって、非常に魅力的な選択肢といえます。
本記事では、2027年に新設予定の東京大学カレッジ・オブ・デザイン(College of Design)をはじめ、日本国内でリベラルアーツ教育をリードする主要大学を比較・検討し、その魅力と特徴を詳しくご紹介します。

TCK Workshop プレミアム講師。獨協高等学校を経て、早稲田大学国際教養学部(SILS)卒業。 オーストリア・ドイツへの留学経験を持つ国際派でありながら、中学・高校入試の全科目(英・国・数・社・理)を指導できる稀有な「オールラウンダー」。 SILSで培った広い教養と論理的思考力を活かし、SAT対策や大学入試の小論文・志望理由書指導において、合格を引き寄せる「書く力・考える力」を徹底的に鍛え上げる。
入試情報は変更される可能性があるため、出願前には必ず各校の公式サイトで最新の募集要項をご確認ください。
リベラルアーツとは?現代社会における意義


リベラルアーツという言葉はよく耳にしますが、その本質は単なる物知りになることではありません。未知の課題に対して、自分なりに問いを立て、多角的な視点から解決策を導き出すための思考の土台を作ることが、この教育の真髄です。
リベラルアーツの起源
Liberal Arts(リベラルアーツ)という概念の起源は古代ギリシャまで遡ります。当時、階層社会の中で自由市民として生きて行くために身につける必要がある基礎的な学問として誕生しました。古代ローマ時代には自由7科として、言語に関わる3学(文法、修辞、論理)と、数学に関わる4学(算術、幾何、天文、音楽)の7つの学問と定義づけられ、その考え方が現代のリベラルアーツの原型になっています。
なぜ注目されているのか
2500年以上の時を経て、なぜ今またリベラルアーツが世界中で、そして日本で注目されているのでしょうか。それは、現代社会が抱える諸課題を解決するためには、複数の学問や観点からのアプローチが必要不可欠だからです。
例えば、環境問題は世界中で深刻な課題となっていますが、その原因には動植物の生態系(エコシステム)だけでなく、発展途上国における開発や先進国との格差など、文理にまたがる複雑な要素が絡み合っています。その解決策としても、電気自動車などの新しい技術開発だけでなく、国際関係や政治、さらには次世代への教育といった多角的な観点が求められます。
このように、現代社会の問題を解決するためには文理の垣根を超え、様々な観点で課題を捉えられる人材が求められています。リベラルアーツ教育が養成しようとする人材は、まさに多角的思考ができ、今までの常識を疑う批判的思考と、実行に移す実践的思考を兼ね備えた人なのです。
日本の大学におけるリベラルアーツ・国際教養学部の特徴


アメリカのリベラルアーツ・カレッジは大学院進学を前提とすることが多いですが、日本の大学は4年間の中で教養から専門へと繋げる独自のデザインを持っています。就職活動を控える日本の学生にとっても、非常に理にかなったシステムといえますね。
アメリカでは大学卒業後に大学院へ進むことが一般的なため、リベラルアーツ・カレッジで基礎を学び、その後専門性を深めるスタイルが500校以上で定着しています。一方、日本の大学が提供するリベラルアーツ学部の多くは、最初の1から2年で幅広い分野を学び、3から4年で専門分野を固めていくカリキュラムが主流です。
多くの大学では国際教養という名称を採用しており、授業の大部分を英語で行ったり、海外留学を必須にしたりするなど、グローバル社会で活躍できる人材の育成を目的としています。
グループワークやディスカッションを多用する授業スタイルは、受動的な講義形式とは異なり、問題発見・解決能力を養うのに適しています。このような教育は、異文化に対する深い理解と幅広い知識を同時に育むことができるため、国際的な環境で育った帰国生にとっても非常に馴染みやすいものといえます。
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主要リベラルアーツ・国際教養学部の比較と詳細解説


東大の新しい試みは、これまでの日本の大学教育の常識を覆すものです。一方で、ICUや早稲田、上智といった伝統ある学部もそれぞれに独自の強みを持っています。各校の入試要項を細かくチェックし、自分に最も合う環境を見極めることが大切です。
ここでは、国内でリベラルアーツ教育をリードする主要な大学について、最新の情報を交えて詳しく解説します。各大学の特色を比較し、ご自身のキャリアプランに合う選択肢を探してみることをおすすめします。
東京大学 College of Design(2027年秋開設予定)
東京大学が新たに構想しているこのプログラムは、5年一貫教育(学士4年+修士1年)という画期的な形態をとります。学問の垣根を超え、デザイン思考を用いて複雑な社会課題を解決できる人材を育成することを目指しています。定員約100名のうち、半数を海外校出身者や留学生から募集する予定で、授業は原則として英語で行われます。
従来の学部のような縦割りではなく、環境、AI、ガバナンス、デザイン、経済といった領域を横断的に学べるのが最大の特徴です。2026年現在は開設に向けた詳細な準備が進められており、高い英語運用能力と論理的思考力、そして社会を変えようとする強い意志を持つ学生を求めています。
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国際基督教大学(ICU)
日本におけるリベラルアーツのパイオニアであり、1953年の開学以来、一貫してこの教育を追求しています。1学部1学科制を採用し、31の専修分野(メジャー)から入学後に自分の専攻を選びます。日英バイリンガリズムを貫いており、学生が自律的に学ぶ少人数・対話型教育が徹底されています。
個々の学生が自分の学びを自由にデザインできるため、2つのメジャーを組み合わせるダブルメジャーなども選択可能です。海外の現地校やインターナショナルスクール卒業生のための帰国生選抜や、IB認定校対象の総合型選抜など、多様な背景を持つ学生を歓迎する入試制度が整っていることも大きな魅力です。
早稲田大学 国際教養学部(SILS)
日本語が母語の学生には1年間の留学が義務付けられているなど、非常に国際色の豊かな環境です。世界各国の名門校と提携しており、オックスフォード大学やイェール大学などへの留学が可能です。英語だけでなく第2外国語の学習も重視されており、多様な言語や文化に触れることができます。マンモス校ならではの活気と、多様なバックグラウンドを持つ学生が集まるコミュニティが、将来のネットワーク形成にも役立つはずです。
上智大学 国際教養学部(FLA)
日本で最も歴史のある英語学位プログラムの一つです。四ツ谷のキャンパスで、すべての授業が英語で行われます。AO入試は書類審査が中心となるため、SATやIBのスコア、海外での活動実績を活かしやすいのが特徴です。比較文化、国際ビジネス・経済、社会科学の3つの分野から専門を選び、都心の利便性を活かした国際的な学習環境を享受できます。
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国際教養大学(AIU)
秋田県に位置するこの大学は全授業を英語で行い、1年間の海外留学を卒業要件としています。1年次は全員が国際寮に入り、留学生と共に生活する環境が義務付けられています。24時間オープンの図書館など、学習に没頭できる施設が充実しており、徹底した英語教育と少人数指導により、企業からも高い評価を得ている大学です。
立命館大学 グローバル教養学部(GLA)
オーストラリア国立大学(ANU)との共同プログラムで、4年間で2つの大学の学位を取得できるデュアル・ディグリー制度が最大の特徴です。大阪とオーストラリアの両方で学び、アジア太平洋地域の課題に特化したグローバルな知見を深めることができます。両大学の学生と共に学ぶことで、真の国際感覚を養うことが可能です。
山梨学院大学 国際リベラルアーツ学部(iCLA)
アメリカ式のリベラルアーツを導入しており、学生の約9割が留学生という、日本国内にいながら留学しているかのような環境です。国際政治から芸術、武道まで幅広い科目を英語で学ぶことができ、日本人学生には1年間の留学が推奨されています。メジャー選択後も他分野を横断的に学べる柔軟なカリキュラムが特徴です。
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大学別特徴比較表
| 大学名 | 特徴的な制度 | 授業言語 | 留学制度 |
| 東京大学 College of Design | 5年一貫教育、デザイン思考 | 主に英語 | 海外研修プログラム予定 |
| 国際基督教大学 (ICU) | 31のメジャー、1学部1学科 | 日英バイリンガル | 希望者(多数の提携校) |
| 早稲田大学 (SILS) | 多様な第2外国語学習 | 英語中心 | 全員必須(条件による免除あり) |
| 上智大学 (FLA) | 伝統ある英語学位プログラム | すべて英語 | 希望者(交換留学多数) |
| 国際教養大学 (AIU) | 1年次の全寮制生活 | すべて英語 | 全員必須(1年間) |
| 立命館大学 (GLA) | ANUとのデュアル・ディグリー | すべて英語 | ANU(豪州)での学習必須 |
| 山梨学院大学 (iCLA) | 圧倒的な留学生比率 | すべて英語 | 全員必須(1年間) |
リベラルアーツ教育がIB生や帰国子女に選ばれる理由


海外の教育環境で培った主体性や探究心を、そのまま日本の大学でも活かしたいと考える生徒様にとって、リベラルアーツ学部はまさに理想的な場所です。入試でも英語資格やIBのスコアが正当に評価されるため、これまでの努力を最大限に活かすことができます。
リベラルアーツ教育が多くの帰国生やIB生に選ばれているのには、以下のような明確な理由があります。
IBと共通する学習スタイル
リベラルアーツ学部の多くは、IB(国際バカロレア)と同様に少人数クラスでのディスカッションやプレゼンテーションを軸にしています。1年次に幅広い分野の授業を履修できるシステムは、IBの学際的な学びと共通しており、これまでの学習経験をスムーズに大学での学びに繋げることができます。
国際的なコミュニティと安心感
これらの学部には、海外経験を持つ学生や外国人留学生が多く在籍しています。似た背景を持つ仲間と切磋琢磨できる環境は、帰国生にとって自身のアイデンティティを保ちながら成長できる場となります。日本にいながらにして国際交流が日常となっている点も、おすすめできる理由です。
入試科目の柔軟性と多様性
特定のIB科目の履修を義務付けていない学部が多く、IBDPを取得していれば受験資格を得られることが一般的です。自分の得意な科目や興味のある分野を活かして受験に臨めるため、多様性を重視するリベラルアーツ学部ならではの選抜制度は非常に心強いものです。
帰国生やインター生にとってスムーズな9月入学の用意
日本のリベラルアーツ・国際教養学部の多くは、多様な背景を持つ学生を受け入れるため、4月と9月の両方に入学時期を設けています。
帰国生やIB生にとって、入学時期の選択は非常に重要です。5月や6月に高校を卒業した後、日本の4月入学を待つと半年以上のギャップイヤーが生じます。一方で、9月入学なら卒業後すぐに学びをスタートできます。どちらの時期がご自身の学習計画や、帰国後のスケジュールに合うかを慎重に検討しましょう。
9月入学の実施状況
| 大学名 | 4月入学 | 9月入学 | 備考 |
| 東京大学 College of Design | × | 〇 | 2027年秋開設。秋(9月)入学が基本の予定 |
| 国際基督教大学 (ICU) | 〇 | 〇 | 4月は国内校生・帰国生、9月は主に海外校生が中心 |
| 早稲田大学 (SILS) | 〇 | 〇 | AO入試(4月・9月)やIB入試など枠組みが豊富 |
| 上智大学 (FLA) | 〇 | 〇 | すべての授業が英語のため、9月入学者の比率も高い |
| 国際教養大学 (AIU) | 〇 | 〇 | 4月入学は一般選抜が中心、9月は留学生やAO中心 |
| 立命館大学 (GLA) | 〇 | 〇 | 4月・9月ともに募集。オーストラリアとの連携重視 |
| 山梨学院大学 (iCLA) | 〇 | 〇 | 留学生が多いため、9月入学のコミュニティも非常に活発 |
まとめ
日本のリベラルアーツ教育について、重要なポイントを振り返りましょう。
・リベラルアーツは、文理の枠を超えた多角的な視点と批判的思考力を養う、現代社会に不可欠な教育である。
・日本の大学では、最初の2年間で幅広く学び、後半で専門性を深めるカリキュラムが一般的で、帰国生やIB生との相性が非常に良い。
・2027年開設予定の東京大学College of Designをはじめ、ICU、早慶、AIUなど、各大学が留学制度や学位取得において独自の魅力的なプログラムを提供している。
・入試制度はSATやIB、TOEFLスコアを重視しており、これまでの海外学習経験を正当に評価してもらえる仕組みが整っている。
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