はじめに

桐朋女子中学校・高等学校は、1959年から帰国生の受けれ入れを続けている、帰国生教育に力を入れている女子校です。

自身も元帰国生であり、帰国生の受け入れや学校の国際教育や英語指導に携わる熊野先生に、桐朋女子中学校・高等学校の魅力と、帰国生入試についてお話を伺いました。

お話を聞いた人

熊野 孝
桐朋女子中学校・高等学校 国際教育センター主任

1963年、東京生まれ、75年から4年間ニューヨークで生活した元帰国生。桐朋女子中高等学校では国際教育センター主任として海外からの帰国生受入れ業務全般と、学校の異文化理解教育プログラムの立案、運営に携わるほか、英語アドバンストコースディレクターも務める。アメリカのサウスカロライナ州立クレムソン大学で長年実施したプログラムが評価され、クレムソン市名誉市民の称号を授与されている。

桐朋女子のグローバル教育

日常生活の隅々までボーダーレス化が進んだ現在、国籍や言語、文化や価値観が異なる人々が日々接し、目的達成のために協働することは、もはや当たり前のことになりました。私たちが暮らす東京も例外ではありません。

互いの違いを認めた上で粘り強く相互理解を図り、時には言語を駆使して相手を説得する、真のコミュニケーション能力を身につけることが必要です。

27カ国からの帰国生を含む多様な背景を持つ生徒たちが学ぶ本校は、グローバル時代に求められるスキルを育む多彩なプログラムを展開しています。以下でそのいくつかをご紹介いたします。

I.S.C.(異文化サマーキャンプ) (中1~高3) /Creative English ワークショップ

長期休暇中に実施される集中講座です。夏季は宿泊型で、英語でのプレゼンテーションのスキルを身につけ、日本の大学で学んでいる留学生と寝食を共にし、異文化理解を深めます。冬季は通学型で、集中的にスピーキング・リスニングトレーニングを行って実践的な英語力を高め、最後に集大成として一人ずつスピーチを行います。

I.S.C.参加者

普段は話す機会のないような国の留学生と、その日のテレビニュース等について話すことができ、とても楽しかった。

英会話教室(中1~高3) ※中学1年・2年は参加条件あり

放課後の時間を使ったプログラムです。会話を中心とした授業ですが、テキストを活用することで英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)を効果的に伸ばしていきます。英検対策も意識し、二次試験に向けての練習も取り入れます。

豪州・シンガポール研修(高1) ※2023年度より実施

オーストラリアのアデレードにホームステイをして名門女子高校St Aloysius Collegeの授業を体験します。現地の大学を訪問し、女子学生とのディスカッションも行う予定です。研修の帰路には多民族が共に暮らすシンガポールに立ち寄り、文化の多様性に触れます。

St Aloysius Collegeの授業を体験
シンガポールで多文化に触れる

ニュージーランド・ターム留学プログラム(高2)

本人が希望し学校に許可された生徒は、ニュージーランドの高校に1学期間(1ターム)留学することが可能です。ホームステイをしながら現地の高校生とともに正課の科目を学ぶ経験は、大きな自信につながるはずです。

桐朋女子の帰国生教育

桐朋女子は帰国生が「あるがままの自分」でいられる学校です。

桐朋女子が初めて帰国生を受け入れたのは1959年。本校では帰国生も他の生徒と同じホームルームで学校生活を送ります。友人同士でも誰が帰国生なのかわからないまま接していることも珍しくありません。帰国生たちはそのような学校生活をとても心地よいものだと思っているようです。このような空気は、これまで長い間大勢の帰国生を積極的に受け入れているうちに自然と醸しだされたものです。帰国生が「あるがままの自分」でいられる学校、それが桐朋女子です。

受験相談から卒業までを、しっかりサポートします 

桐朋女子の国際教育センターでは、帰国生の受け入れをスムーズにする役割を担っています。安心して入学していただけるよう、不安や疑問にお答えし、入学試験や転入学・編入学試験に関するご案内も丁寧に行っています。入学後は、帰国生が生活環境や学習内容の変化に少しずつ馴染んでいけるような様々なサポート体制を整えています。

帰国生一人ひとりのために用意される「帰国生カード」

「帰国生カード」には、海外の滞在記録、生活体験や学習したこと、学校歴などが記入されます。これによって教員は生徒がどのような経験をしてきたのか、学校生活で必要な配慮は何かを知ることができます。入学後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年という節目に、担任は帰国生と面談を行い、生徒のニーズを把握します。この面談の様子もカードに記録されます。カードを利用することで、学習面や生活面での有効な支援をスムーズに行うことが可能となります。

現地校・国際校での授業を思い出す「英語特別授業」

現地校や国際校での学習を通して身につけてきた帰国生の英語力を更に伸ばすために、「英語特別授業」が設置されています。英語の授業の一部を使い、英語圏の学校の同学年レベルの教材を用いながら、本校の専任外国人講師が授業を行います。生徒一人ひとりが身につけてきた英語力にはそれぞれ違いがあることを考慮し、可能な限り個別の課題を出すことで、参加者全員にとって有意義な時間になることを心がけています。この授業への参加は希望制ですが、英語圏の現地校や国際校などで過ごしてきた多くの生徒が参加しています。

海外生活では学習しなかった内容を補う「リソ講座」

日本に帰国したばかりの生徒を対象に放課後に補習授業が行われています。「リソ講座」(「リソ」は「リソース」を短くしたものです)と呼ばれる授業で、海外で勉強してこなかった内容を補うのが中心です。生徒によって海外での学習歴もそれぞれ異なりますから、なるべく少人数で授業を行い、それぞれのニーズに合うようにと考えています。多くの生徒が必要とする国語と数学の授業を中心に行っていますが、それ以外の教科で補習が必要な時には臨機応変に対応します。帰国生だけの小さな教室だからこそ、すぐに友達ができる楽しい講座です。

中学入学試験

A入試

2月1日に実施される「A入試」では、小学校6年間のどこかの時点で海外の学校(含全日制日本人学校)に通った経験のある人すべてを帰国生として認定します。試験内容は日本国内からの受験生と同じ「筆記試験(国語と算数)」「口頭試問」です。

国語と算数の筆記試験は、小学校で学ぶ基本的な学力を測ると同時に、その基礎的な学力を使い、ねばり強く取り組む力があるかどうかを測ることを目的としています。口頭試問では、暗記や知識の多寡を問うのではなく、受験生の思考過程(考えるすじみち)を測りたいと考えています。海外生活の中で、新しい言語を通しての学習、友人づきあい、地域社会とのふれあいなど、様々な体験をされた帰国生の皆さんなら心配はありません。

また、海外で日本の学習が十分にできなかった帰国生が不利にならないよう、配慮がなされています。出願時に海外での学校歴をお聞きしたうえで、滞在期間・在籍校の種類・帰国時期などのデータに基づいての試問、審査が行われます。滞在期間が長く、帰国時期が試験間近で、出身校が現地校・国際校である場合などは特に注意して審査します。

【募集人員】 約130名(日本国内からの受験生と合わせて)
【試験内容】①口頭試問 ②筆記試験(国語と算数)
【出願資格】①学齢に相当すること。②入学後、保護者のもとから通学できること。

帰国生対象特別入試(外国語による作文型)

12月および1月に2回実施される「帰国生対象特別入試(外国語による作文型)」は、保護者の方の転勤や留学等に伴って海外に1年以上滞在し、小学校4年生以降に帰国された方が対象となる試験です。試験内容は、外国語(英語・フランス語・ドイツ語のいずれか)による作文と海外での学習と生活についての面接です。小学校の高学年まで海外の学校制度のもとで学んでいた帰国生が対象ですが、最終在籍校が全日制日本人学校であっても出願は可能です。海外の現地校や国際校での学習や、現地での生活にどのように意欲を持って取り組んだかを2種類の面接でしっかりと確認し、外国語による作文と併せて総合的に合否を決定していきます。「日本語での学習経験は少ないけれど、海外では誰にも負けないくらい勉強した」という皆さんにお選びいただければと考えています。

【募集人員】 各回 約10名
【試験内容】①外国語による作文:45分間(英語・フランス語・ドイツ語のいずれか)
②面接(受験生のみ):Ⅰ. 海外での学習について Ⅱ. 海外の生活について
(各およそ20分間 使用言語は日本語)
【出願資格】①学齢に相当すること。
②入学後、保護者のもとから通学できること。
③保護者の転勤・留学に伴って海外に1年以上滞在し、帰国日が小学4年生の4月1日以降であること。

Creative English 入試

 英語1科型(英検3級程度)の入試です。小学校低学年で帰国した方で、帰国後、英語を継続的に学習している方にはお勧めです。

高校入学試験(帰国生対象)

帰国生を対象とした高校入学試験には、本校を第一志望とする人向けの「帰国生推薦入試」(A・・・現地校・国際校出身者用、B・・・全日制日本人学校出身者用)と、他校との併願可能な「帰国生対象高校入試」(A選考・・・外国語による作文型、B選考・・・筆記試験型)の二つのタイプがあります。

帰国生対象推薦入学試験A(現地校・国際校出身者用)

【募集人員】 若干名
【試験内容】面接(受験生のみ)およそ20分間、使用言語は日本語
【出願資格】①学齢に相当すること。
②入学後、原則として保護者のもとから通学できること。 
③保護者の転勤・留学に伴って海外で生活し、日本の中学校に相当する課程(米国系の学校はGrade7~9、英国系はYear8~10)の海外の現地校・国際校に2年以上在籍している者。
本校を第一志望とし、日本の中学校に相当する課程での学業に熱意を持って取り組んだ者。

帰国生対象推薦入学試験B(全日制日本人学校出身者用)

【募集人員】 約15名(日本国内の中学校からの入学者を含む)
【試験内容】面接(受験生のみ):およそ20分間、使用言語は日本語
【出願資格】①入学後、原則として保護者のもとから通学できること。 
②保護者の転勤・留学に伴って海外で生活し、海外全日制日本人学校中等部を卒業見込みである者。
本校を第一志望とし次の基準を満たす者。
1. 中学校第3学年2学期における9教科の5段階評定の合計が36以上、または5教科の5段階評定の合計が20以上で、かつすべての教科の評定が3以上である者。なお、上記に準ずる成績で、クラブ活動・生徒会活動・ホームルーム活動・学校行事等において特記するに値する活動をしたと中学校長が判断する者には加算制度がある。
2.中学校第1学年から第3学年2学期までの欠席の合計が20日以内の者。詳細はお問い合わせください。

帰国生対象入学試験A選考(外国語による作文型)

【募集人員】約10名
【試験内容】①外国語による作文:45分間(英語・フランス語・ドイツ語の いずれか)
②面接(受験生のみ):Ⅰ.学習について Ⅱ.生活について
 各およそ20分間、使用言語は日本語
【出願資格(A選考B選考共通) 】①学齢に相当すること。
②入学後、原則として保護者のもとから通学できること。
③保護者の転勤・留学等に伴って海外で1年以上生活し、帰国してほぼ1年以内であること。

帰国生対象入学試験B選考(筆記試験型)

【募集人員】約10名
【試験内容】①筆記試験(国語・数学・英語):各50分間
②面接(受験生のみ):およそ20分間、使用言語は日本語
【出願資格(A選考B選考共通) 】①学齢に相当すること。
②入学後、原則として保護者のもとから通学できること。
③保護者の転勤・留学等に伴って海外で1年以上生活し、帰国してほぼ1年以内であること。

転入学・編入学試験(4月・9月・1月入学)

転入学・編入学試験は毎年3回定期的に行います。高校入試同様、受験生が海外での自分の学習スタイルに合わせた受験ができるよう、A、B2通りの試験を用意しています。内容は高校入学試験のA選考・B選考に準じます。

【募集人員】各学年約5名 ※実施学年は以下の通り。
● 4月入学(3月実施)
  新中学2年生、新中学3年生、 新高校2年生、新高校3年生
● 9月入学(7月実施)、1月入学(12月実施)
  中学1年生、中学2年生、中学3年生、 高校1年生、高校2年生
【試験内容】
次のA、Bのうち、いずれかを選択。
A. ①外国語による作文:45分間
 (英語・フランス語・ドイツ語のいずれか)
  ②面接(受験生のみ):Ⅰ.学習について
 Ⅱ.生活について各およそ20分間、使用言語は日本語
B. ①筆記試験:各45分間
  中学1年生~高校1年生…「国語・数学・英語」
  高校2年生、3年生…「国語・英語」もしくは「数学・英語」
  ②面接(受験生のみ)およそ20分間、使用言語は日本語
【出願資格】①学齢に相当すること。
②入学後、保護者のもとから通学できること。
③保護者の転勤・留学等に伴って海外に1年以上滞在し、帰国してほぼ1年以内であること。
桐朋女子中学校・高等学校HP
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大学の進学実績

桐朋女子の進学実績の特徴は、多彩な進路にあります。2021年度入試では様々な国内私立大学の指定校推薦をいただいています。

桐朋女子中学校・高等学校HP
全体の進路
桐朋女子中学校・高等学校HP
帰国生の進路

さいごに

帰国生を温かく迎え、彼女たちが「あるがままの自分」の姿でいられるよう、そんな仕組みやカリキュラムが整っている学校ですね。在学中に英語と日本語を伸ばしていき、様々な海外交流プログラムが準備されているのも魅力的です。

入試では、どのタイプで受験をするのが適しているのか、是非ご確認ください!どの方式で受験するのが良いのか?どのように対策するの?といった、ご相談をいつでもお受付しております。