はじめに

海外在住や帰国子女のご家庭にとって、大学進学を見据えた教育制度の選択は大きな課題となります。

その中でも特によく話題に上がるのが、国際バカロレア(IB)イギリスのA-Level、そしてアメリカのアドバンスト・プレースメント(AP)です。これらはすべて国際的に認められた教育プログラムですが、制度の成り立ちや学習の方法、評価の仕組みには大きな違いがあります。違いを理解しないまま科目を選んでしまうと、大学の出願資格を満たせなかったり、想定以上の負担を抱えることになったりする可能性があります。

本記事では、それぞれの制度の全体像を整理しながら、進学を考えるうえでの基礎知識を解説します。


IBの特徴

IBディプロマプログラムは、世界中で導入されている国際的な教育資格であり、その大きな特徴は幅広い分野を横断的に学びながら探究心を育てる点にあります。生徒は六つの科目群から六科目を選び、そのうち三科目を上級レベル(HL)、三科目を標準レベル(SL)として履修します。さらに、知の理論(TOK)、課題論文(EE)、創造・活動・奉仕(CAS)の三つの必須要素(コア要素)に取り組むことが求められます。

応用力を重視する評価基準

成績は45点満点で評価され、各科目の得点が合計42点となり、残りの3点はコア要素から加算されます。評価は試験だけではなく、エッセイやレポート、口頭試験、さらには課題研究など多様な形で行われます。つまり、IBは暗記による知識の蓄積を重視するのではなく、学んだことを自分の言葉で整理し、実践的に応用する力を育成することに重点を置いています。

授業形式

実際の授業では、ディスカッションやプレゼンテーションが日常的に行われ、異なる文化背景を持つ同級生と意見を交わす中で、国際的な視野も広がります。また、CASを通じてボランティア活動や芸術活動、地域のプロジェクトに参加することが必須とされており、知識と人間性を同時に成長させる仕組みになっています。IBは「幅広さ」と「探究心」を兼ね備えた学びを提供するプログラムといえるでしょう。

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A-Levelの特徴

イギリスのA-Levelは、IBとは対照的に「少数科目を徹底的に学ぶ」ことに重きを置いたプログラムです。一般的には三科目、場合によっては四科目を選択し、二年間かけて集中的に学習します。最終的な評価は二年分の学びを集約した試験によって決まり、成績はAからEまでの段階で判定されます。

専門性を追求するプログラム

A-Levelの大きな利点は、自分の進学したい分野に関連する科目を選び、深く掘り下げられることです。例えば医学部志望の生徒であれば数学、化学、生物が必須となり、工学を目指す生徒であれば数学と物理を中心に組み合わせることが一般的です。このように、進路が明確に決まっている生徒にとっては最適な制度といえます。

ただし、IBに比べて科目数が少ないからといって決して負担が軽いわけではありません。むしろ、一科目に対する要求水準は非常に高く、知識を暗記するだけではなく、論理的に説明し、応用する力が求められます。そのため、A-Levelは専門性を追求する真剣な学びを志す生徒に適した制度といえるでしょう。

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APの特徴

アメリカのAPは、IBやA-Levelとは異なり「単科制」の仕組みを持っています。つまり、高校に在籍しながら大学レベルの科目を選んで履修できる制度です。各科目は独立しており、履修数は個々の生徒の選択に委ねられています。スコアは1から5点で評価され、多くの大学では3点以上を取得すると単位認定や履修免除を受けられる可能性があります。

柔軟性のあるプログラム

APの大きな魅力は柔軟性です。生徒は自分の進路や学力に合わせて、必要な科目を必要な時期に選ぶことができます。たとえば9年生や10年生から1〜2科目を履修し、その後学年ごとに増やしていくケースも一般的です。ただし、上位科目の中には前提条件を必要とするものもあり、事前に計画を立てないと希望する科目を履修できない場合があります。そのため、早い段階から志望校の要件を確認し、履修計画を逆算して立てることが不可欠です。

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大学進学における評価

三つの制度のうちどれが最も有利かという問いは多くの保護者が気にする点ですが、結論としては「どの制度も正しく評価される」と言えます。イギリスの大学ではA-Levelが基本ですが、IBやAPも出願資格として広く認められています。アメリカの大学ではAPが主流ですが、IBやA-Levelを評価対象に含めるケースも多く存在します。日本の大学の国際入試でも、三つの制度はいずれも広く受け入れられています。

したがって、重要なのは「どの資格を取るか」ではなく「志望校の出願要件を満たしているかどうか」です。有利・不利という単純な比較ではなく、進路に合わせた選択こそが合格の可能性を左右するのです。


まとめ

  • IBは幅広い学びと探究心の育成を重視
  • A-Levelは専門性を徹底的に追求
  • APは柔軟で戦略的な履修が可能

それぞれの制度は異なる強みを持っていますが、最も大切なのは「自分の志望進路や学習スタイルに合っているかどうか」です。制度の違いを理解したうえで、将来の目標に最適な道を選びましょう。


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