はじめに

「英語は得意だから英語一科目で受ければ有利に戦えるはず」。そう考えるご家庭は少なくありません。しかし、帰国子女受験での「英語一科目」は、想像以上に準備の深さと戦略性が求められる方式です。本記事では、TCK Workshopのウェビナー内容をもとに、面接・エッセイ重視校への実践対策、募集団のレベルの現実、そして併願設計まで、見落とされやすいリスクと勝ち筋をわかりやすく解説します。
なぜ「英語一科目」は甘くないのか:まず押さえるべき前提
英語一科目受験が難しい一番の理由は、「語学力=合格」ではないからです。多くの学校で重視されるのは、英語で自分の考えを論理的に述べ、問いに即して掘り下げられるかという「論述・対話力」です。
たとえばエッセイでの構成力、面接での深掘り質問への応答力、過去経験を踏まえた自己表現などが評価の中核になります。さらに、筆記中心の学校では高度な語彙・文法運用が要求され、帰国生でもアカデミック英語の基礎が弱いと得点が伸びないことがあります。

海外での学習で培った日常運用力は強みですが、それだけでは合格ラインに届かないケースも多いのです。
リスク① 「英語力はあるのに落ちる」――評価の中心は論述・対話力
英語一科目受験で不合格に至る典型的なケースは、「話せる・読めるのに、構成して伝える力が弱い」というものです。エッセイでは、主張→理由→具体例の流れを筋道立てて展開し、問いに対して論点がズレないことが必須です。
面接では、志望理由や活動実績を単なる列挙で終わらせず、学校の教育理念やカリキュラムとの接点を自分の言葉で説明し、追加の質問にも矛盾なく答える必要があります。
つまり「英語で何を、どう論理的に語るか」が合否の分かれ目になります。
リスク② 母集団のレベルが高い――「英語得意」同士の真っ向勝負
英語一科目は「英語に自信がある受験生」が集中しやすく、母集団の平均レベルが高いのが実情です。
エッセイや面接がある方式では、語彙・文法の基礎が整っているのは当たり前。そのうえで、思考の深さや多面的な視点、経験の棚卸しの質で差がつきます。筆記中心の学校でも、高難度の語彙・文法、誤文訂正や空欄補充などでシビアに点差がつきます。
過去問の初見スコアで「手応えがある」と感じても、採点基準や時間管理まで含めると、本番では簡単に崩れます。楽観は禁物です。
リスク③ 準備不足でチャンスを逃す――自己分析と学校研究は短期では終わらない
面接・エッセイ型の入試は、受験直前の付け焼き刃では仕上がりません。自己分析(価値観・強み・将来像・キャリア仮説)と学校研究(理念・カリキュラム・探究・国際プログラム・求める人物像)の往復は、数週間では形にならないからです。
志望校が複数あれば、学校ごとに異なるストーリー設計が必要になります。志望理由書や面接での内容を学校ごとに練り上げるには、早めの着手が欠かせません。
Solution:合格率を高めるための5つの実戦戦略

① エッセイの「型」を身につける
エッセイは「主張」「理由」「具体例」をセットで構成します。各段落でテーマ文を明確にし、論点を一つに絞ることが大切です。結論部分では「学びの転移」、つまりその経験から何を学び、志望校でどう活かすかを具体的に述べましょう。日常英語ではなく、論理的に意見を展開する練習を重ねることが鍵です。
「構成力」と「表現力」をバランスよく伸ばす練習を、最低でも3ヶ月以上かけて行う必要があります。そこから受験校にあわせて対策、さらに最低3ヶ月。早めのスタートが合否を分けます。
② 面接対策は「想定質問×深掘り質問」の二段構え
面接では、想定質問(志望理由・自己PRなど)に加え、「なぜそう考えるのか」「他者の意見にどう答えるか」といった深掘り質問への準備が不可欠です。回答は簡潔にまとめ、録音して聞き直すことで改善点が見えてきます。オンライン面接の場合、照明・背景・音声環境の確認も忘れずに。
③ 筆記型の学校は「頻出領域」を重点強化
筆記重視校では、文法・語彙・読解スピードが重要です。特に、誤文訂正や語法問題、アカデミックな長文読解を中心に演習を積みましょう。過去問は必ず本番時間で解き、解答後には「なぜその選択肢が不適か」を言語化することが復習のコツです。
④ 学校研究×自己分析を「1枚のストーリーマップ」に
志望校ごとに理念やカリキュラム、探究内容を調べ、自分の経験・将来像との接点を整理します。「なぜこの学校なのか」を固有名詞とともに説明できるようにすることで、志望理由の説得力が増します。学校研究と自己分析の「接点の明確化」が合格の分かれ目と言えます。
⑤ 英語一本に頼らない併願設計を
英語一科目受験だけでなく、他科目や推薦方式も視野に入れた併願設計が重要です。試験内容や時期が異なる学校を組み合わせることで、リスク分散と学習効果の相乗が期待できます。早期に出願カレンダーを整理し、過去問演習と面接練習のスケジュールを両立できるよう計画しましょう。
よくある質問

英語が得意なら英語一科目で十分ですか?
A. 十分とは限りません。多くの学校では、英語力よりも「英語での思考力・表現力」を評価します。特に面接やエッセイ型では、論理的構成と一貫した主張が必要です。

外部英語試験はどれを受けるべき?
A. 学校ごとに異なります。TOEFL、英検のいずれを提出できるかを確認し、最新仕様に対応した準備を進めましょう。どの試験も「英語力を測る指標」であり、「合格を決める要素」ではない点を理解しておくことが大切です。
TCK Workshopの個別サポート

TCK Workshopでは、帰国子女のための完全1対1オンライン個別指導を行っています。志望校別のエッセイ構成指導、録音・録画を用いた面接モック、筆記重視校向けの文法・読解トレーニングなど、実際の講座に基づいたサポートを提供しています。また、SAT・TOEFL・英検など外部試験のスコア戦略も含め、併願校の設計や逆算型の学習計画もサポートします。初回カウンセリングでは、お子様の現状と目標に合わせた学習ロードマップを作成します。
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