グローバル化が加速する現代において、世界で活躍するための力を身につけたいと願う日本の高校生にとって、国内で英語を主要言語として学べる「英語学位プログラム」は、非常に現実的かつ魅力的な進路の一つです。海外の大学に進学せずとも、日本にいながら国際的な教育環境に身を置くことが可能な時代が到来しました。東京大学のPEAKや早稲田大学のSILSといった著名なプログラムでは、全ての授業が英語で行われ、多様な国籍を持つ学生たちと切磋琢磨しながら、国際感覚と専門知識を磨くことができます。

本記事は、海外の教育システムを経験してきた帰国生やインター校出身の生徒様、そしてその保護者様へ向けて、英語学位プログラムを実施している大学をご紹介します。

坂井先生

講師:坂井 治樹

 TCK Workshop プレミアム講師。獨協高等学校を経て、早稲田大学国際教養学部(SILS)卒業。 オーストリア・ドイツへの留学経験を持つ国際派でありながら、中学・高校入試の全科目(英・国・数・社・理)を指導できる稀有な「オールラウンダー」。 SILSで培った広い教養と論理的思考力を活かし、SAT対策や大学入試の小論文・志望理由書指導において、合格を引き寄せる「書く力・考える力」を徹底的に鍛え上げる。

    国家戦略としての背景:高等教育の国際化を牽引する力

    国際化拠点整備事業のイメージ

    現在、多くの日本の大学が英語学位プログラムを拡充している背景には、各大学の努力だけでなく、国が主導した高等教育の国際競争力強化に向けた戦略的な取り組みが存在します。

    その嚆矢となったのが、文部科学省が2009年に立ち上げた「国際化拠点整備事業(通称:グローバル30)」です。このプロジェクトでは、2020年までに留学生を30万人に増やすという国家的目標のもと、次のような具体的な施策が推進されました。

    • 学位を英語のみで取得できるコースの新設・提供
    • 留学生の学習面および生活面における支援体制の整備
    • 海外での学生募集活動の積極的な展開

    この事業には、東京大学、慶應義塾大学、京都大学、早稲田大学など、国内を代表する13の主要大学が採択されています。

    さらに、この成果を引き継ぐ形で2014年から始まったのが、「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」です。これは、大学のグローバル化と改革をより一層推進することを目的とし、全国37大学が以下の二つのタイプに分類され、集中的な支援を受けています。

    • タイプA(トップ型):世界の大学ランキング上位100を目指し、日本の国際化をリードしていく大学群です。
    • タイプB(グローバル化牽引型):独自の視点と戦略で、革新的な国際化に挑戦する大学群です。

    これらの政府支援を受けている大学は、国際戦略の明確さと実行力が担保されていると評価できます。大学選びの際には、SGU採択校であるか否かを、重要な指標の一つとして確認することをおすすめします。

    坂井先生

    SGUに選ばれている大学は、資金面や国際的なネットワーク構築において国の支援を受けています。これは、学生の皆さんがより質の高い、グローバルな学びを得られる環境にあるということを意味します。志望校を選ぶ際には、国際戦略が具体的にどのように展開されているかに注目してみましょう。

    本ガイドの構成と活用方法:あなたの進路選択をサポートするために

    本記事は、日本国内で英語学位を取得できる大学の学部プログラムについて、帰国生や海外在住の学生様の視点から詳しく掘り下げて解説しています。

    • 国公立大学編:卓越した研究力を背景に持つプログラム群
    • 私立大学編:学生の多様な興味・キャリアに対応する柔軟なプログラム群
    • 出願プロセスと対策ガイド:合格を勝ち取るための具体的な戦略とアドバイス

    入試の要項は毎年見直され、変更される可能性があります。本記事の情報は、あくまで進路検討の初期段階における参考情報としてご活用いただき、最終的な出願に際しては、必ず各大学の公式ウェブサイトや最新の募集要項を精読することをおすすめします。



    国公立大学:研究力と国際性の両立を目指すプログラム

    大学で学ぶ理系分野のイメージ

    国立・公立大学が提供する英語学位プログラムは、主に「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」のトップ型に採択された大学が中心となり、その多くが理系・学際系分野で、世界に通用する研究を基盤とした教育を展開しています。

    坂井先生

    国公立大学のプログラムは、研究に対する真摯な姿勢と、国際的な共同研究の機会が豊富であることが強みです。しかし、その募集枠は非常に限定的であり、出願に際しては、SATやIBといった標準化試験で、極めて高いスコア水準が求められる傾向があることを念頭に置くことをおすすめします。

    大学名所在地主要英語プログラム・学部SGU/G30指定
    北海道大学北海道現代日本学プログラム(MJSP)、統合科学院プログラム(ISP) / 総合教育部SGUタイプA
    東北大学宮城県Future Global Leadership (FGL) Program / 理学部、工学部、農学部SGUタイプA, G30
    国際教養大学秋田県国際教養学士プログラム / 国際教養学部SGUタイプB
    筑波大学茨城県地球規模課題学位プログラム(BPGI)、生命環境科学など / 複数SGUタイプA, G30
    東京大学東京都Programs in English at Komaba (PEAK)/ 教養学部→2026年に廃止、 CoDにSGUタイプA, G30
    一橋大学東京都学部レベルで英語講義を開講
    東京工業大学東京都融合理工学系(GSEP) / 融合理工学系SGUタイプA
    東京外国語大学東京都国際社会学部などで英語教育を提供 / 国際社会学部などSGUタイプB
    東京都立大学東京都生命科学科英語課程 / 理学部
    横浜国立大学神奈川県国際教養学部などで英語プログラムを提供 / 国際教養学部など
    金沢大学石川県国際基幹教育院などで英語教育に注力 / 国際基幹教育院などSGUタイプB
    名古屋大学愛知県G30国際プログラム / 工学部、理学部、法学部、経済学部などSGUタイプA, G30
    京都大学京都府土木工学国際コース / 工学部SGUタイプA, G30
    大阪大学大阪府人間科学国際学士コース、国際科学特別プログラム(IUPS) / 人間科学部、理学部SGUタイプA, G30
    岡山大学岡山県グローバル・ディスカバリー・プログラム(GDP) / グローバル・ディスカバリー・プログラムSGUタイプB
    広島大学広島県総合科学部国際共創学科、Humanities in Englishコース / 総合科学部、文学部SGUタイプA
    九州大学福岡県国際学士コース(IUP) / 工学部、農学部、共創学部SGUタイプA, G30
    岩手大学岩手県人文社会科学部などで英語プログラムを提供 / 人文社会科学部など

    国公立大学の主要プログラムの特色

    東京大学 Programs in English at Komaba (PEAK)は廃止に

    東京大学の英語学位プログラムのPEAKは2026年をもって募集停止となり、新しい学部であるCollege of Design(CoD)に発展的に統合されます。

    新学部についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

    国際教養大学 (AIU) 国際教養学士プログラム

    秋田という環境で、徹底したリベラルアーツ教育を英語のみで提供しています。全学生に1年間の海外留学が義務付けられており、グローバルな視点を養うための環境が整っています。一般選抜のほか、高い英語力を持つ学生向けの総合型選抜など、多角的な入試制度が設けられています。

    東北大学 Future Global Leadership (FGL) Program

    先端物質科学、国際機械工学、応用海洋生物学の3コースがあり、理系の研究者育成に注力しています。日本の高校生は「グローバル入試I期」で出願可能であり、書類選考の後に筆記試験と面接で総合的に評価されます。

    私立大学:進路の多様性に応える柔軟な教育環境

    私立大学に通う国際的な大学生のイメージ

    私立大学は、国公立大学とは異なり、人文科学、社会科学、ビジネス系など、非常に幅広い専門分野で英語学位プログラムを提供しています。出願方法も多岐にわたり、学生の個性と実績を柔軟に評価する体制が整っています。

    坂井先生

    私立大学のプログラム、特に早慶上智のリベラルアーツ系や社会科学系プログラムでは、AO・総合型選抜が主流となります。この入試形式では、標準化試験のスコア以上に、エッセイや活動実績を通じた「自己の個性とプログラムへの強い適合性」のアピールが合否を左右します。出願戦略の構築に焦点を当てることが成功の鍵となります。

    大学名所在地主要英語プログラム・学部SGU/G30指定
    早稲田大学東京都SILS、PSE、TAISI、JCulP、FSE / 国際教養学部、政治経済学部、社会科学部、文化構想学部、理工学部などSGUタイプA, G30
    慶應義塾大学東京都PEARL、GIGA / 経済学部、総合政策学部、環境情報学部SGUタイプA, G30
    上智大学東京都FLA、SPSF、理工学部英語コース / 国際教養学部、総合グローバル学部、理工学部などSGUタイプB, G30
    立命館大学京都府GS、JDP、GLA、ISSE、CRPS / 国際関係学部、グローバル教養学部、情報理工学部などSGUタイプB, G30
    明治大学東京都English Track Program / 国際日本学部SGUタイプB, G30
    同志社大学京都府国際教養インスティテュート(ILA) / 国際教育インスティテュートG30
    国際基督教大学 (ICU)東京都リベラルアーツ(日英バイリンガル教育) / 教養学部SGUタイプB
    法政大学東京都GIS、GBP、SCOPE、IGESS / グローバル教養学部、経営学部、人間環境学部などSGUタイプB
    立教大学東京都GLAP、国際ビジネス法学科など / グローバル・リベラルアーツ・プログラム、経営学部などSGUタイプB
    立命館アジア太平洋大学 (APU)大分県APS、APM、ST / アジア太平洋学部、国際経営学部、サステイナビリティ観光学部SGUタイプB
    関西学院大学兵庫県国際学部英語プログラム / 国際学部SGUタイプB
    東洋大学東京都グローバル・イノベーション学科(GINOS)など / 国際学部などSGUタイプB
    中央大学東京都国際経営学部(GLOMAC) / 国際経営学部
    明治学院大学東京都国際キャリア学科英語プログラム / 国際学部
    学習院大学東京都国際社会科学部英語プログラム / 国際社会科学部
    京都先端科学大学 (KUAS)京都府工学部英語プログラム / 工学部
    中京大学愛知県Global Liberal Studies (GLS) / 国際学部
    東京国際大学埼玉県E-Trackプログラム / 経済学部、国際関係学部など
    日本大学東京都工学部などで留学生向けコースを提供 / 工学部など
    山梨学院大学山梨県国際リベラルアーツ学部(iCLA) / 国際リベラルアーツ学部
    桜美林大学東京都グローバル・コミュニケーション学群英語トラック / グローバル・コミュニケーション学群

    私立大学の主要プログラムの特色

    早稲田大学(SILS)

    国際教養学部(SILS)をはじめ、複数の学部で英語学位プログラムを提供しており、国内私立大学の中では最も多くの選択肢を提供しています。出願は主にAO入試で行われ、書類審査が中心です。

    慶應義塾大学(PEARL, GIGA)

    経済学部のPEARLは、書類審査のみで標準化試験のスコア提出が必須とされ、高い学力が求められます。一方、SFCのGIGAプログラムは標準化試験の提出が任意であり、エッセイや課外活動を通じて、自らの創造性や問題解決能力を表現することが重視されます。

    国際基督教大学 (ICU)

    日英バイリンガルによるリベラルアーツ教育が特徴で、独自のELA(English for Liberal Arts)プログラムにより、学術的な英語力を徹底的に養成します。独自の試験形式や総合型選抜など、多様な入試制度が設けられています。





    TCK Workshopが提供する英語学位プログラム対策講座

    大学受験の勉強に励む生徒のイメージ

    TCK Workshopでは、各大学の入試特性に合わせて、「知識と論理構成」に焦点を当てた専門性の高い個別指導を提供しています。

    ハイスコア達成のための個別指導

    TOEFL/IELTS、SAT/IBといった全ての標準化試験において、目標スコアを最短で突破するためのオーダーメイドカリキュラムを作成し、個別指導を行います。

    「合格を引き出す」エッセイ・志望理由書作成支援

    学生様の個々の経験を深く掘り下げ、志望校のプログラム特性に完全にフィットする、説得力のあるエッセイを構築するためのロジック構築から英語表現までを指導します。

    面接・小論文シミュレーション

    本番を想定した模擬面接を繰り返し実施し、書類との一貫性、論理的思考力、そして自信のある英語でのコミュニケーション能力を徹底的に磨きます。

    合格を勝ち取る鍵は、英語力のアドバンテージを活かしつつ、エッセイの内容と標準化試験のスコアで圧倒的な差をつけることです。この「内容重視型の対策」を体系的に行うことを強くおすすめします。

    終わりに:未来へのロードマップを作成しましょう

    日本にいながらにして世界基準の教育を受け、国際的な視野とスキルを身につけることができる英語学位プログラムは、非常に有力な選択肢です。この複雑な入試を乗り越えるためには、早期から戦略的な対策が不可欠です。特にエッセイ対策で求められる知識のインプットと論理的思考力は、時間をかけて養うべきものです。

    受験準備の最初の一歩として、まずは無料教育相談をご利用ください。お子様の現在の学習状況、英語資格の有無、そして志望校の特性に合わせたオーダーメイドの学習プランをご確認いただくことをおすすめします。

    どんなことでもOK!まずはお悩みをお聞かせください。
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