東京大学が2027年9月に開設するUTokyo College of Design(通称CoD)は、既存の学問領域にとらわれず、複雑な社会課題に挑み、新たな社会価値を創出できる人材の育成を目指す、学士・修士一貫型の新しい教育プログラムです。

東京大学が公開している入学者選抜のアドミッションポリシーや各種概要資料によると、書類選考や多面的な選抜を通じて、受験生の思考力や問題解決へのアプローチが総合的に評価されます。

この東京大学CoDの入試を突破する上で、CoDの教育内容とも関連する考え方の一つが「デザインシンキング(デザイン思考)」です。本記事では、入試でデザインシンキングが求められる理由から、合格を目指すためのエッセイ対策と必要とされるスキルについて詳しく解説します。

岡留先生

講師:岡留 智史

TCK Workshop代表取締役、特別講師。ニューヨーク、サンフランシスコに滞在したのち帰国生の名門校である東京学芸大学附属高校に入学。早稲田大学の創造理工学部を卒業。TCK WorkshopではIB math、SAT、A-levels Physicsなど海外カリキュラムの理数科目の指導を中心に指導を担当。

    東京大学CoDの試験で問われるデザインシンキングの真髄

    岡留先生

    デザインシンキングは天性のセンスではなく、発散と収束を繰り返す再現性のあるプロセスです。まずは枠にとらわれずにアイデアを出し切る体験から始めてみると良いでしょう。

    デザインシンキングと聞くと、優れたデザイナーのような特殊な感覚や、誰も思いつかないような独創的なひらめきが必要とされるのではないかと不安に感じるかもしれません。しかし、東京大学CoDの試験で求められているのは、単なる感覚的なアートのセンスではありません。

    デザインシンキングの本質は、人間中心の視点から課題の本質を捉え直し、試行錯誤を重ねながら、より良い解決策を導き出す思考法です。

    具体的には、次のようなプロセスを繰り返します。

    プロセス取り組むべきこと
    課題の観察特定の人々や社会が抱える課題に目を向ける
    問題の再定義人間中心の視点から、問題の本質を捉え直す
    アイデアの創出既存の概念にとらわれず、
    多様な解決策を考える
    試作と検証アイデアをプロトタイピング(試作) し、試行錯誤を重ねて改善する

    この思考プロセスでは、一見すると実現が難しそうなアイデアも含め、できる限り多くの発想を生み出す「クリティカルシンキング」と、出されたアイデアを整理して論理的に構築し直す「ロジカル・クリティカルシンキング」の双方が重要です。

    例えば、ワークショップなどで一度思い切りアイデアを発散させた後、現実的な条件や社会的な背景に合わせて論理的に整理します。このように発想と検証を繰り返すことで、これまでにない価値のある解決策へと昇華させることができます。

    デザインシンキングは天才的なひらめきだけに頼らない

    スタンフォード大学などのデザイン思考に関する研究資料でも示されている通り、優れたデザイン思考は個人の天才的なひらめきに依存するものではなく、課題の観察、再設定、試行錯誤という手続きの反復によって生み出されます。

    例えば、次のような場面にも、一定の法則性や構造が存在します。

    ・街づくり:歩行者が楽しく歩けるように、視線誘導や配置の法則性を設定する。

    ・音楽:コード振興などの一定の法則を活用し、楽曲を構成する。

    ・料理:食材や調味料の組み合わせを考え、味の調和を目指す。

    このように、思考や課題解決にも再現可能な構造があります。東京大学CoDの試験では、こうした思考の構造を理解し、現実のノイズや曖昧さの中でも論理を失わずに考え続ける能力が求められると考えられます。

    合格を引き寄せるパーソナルステートメントとエッセイの書き方

    岡留先生

    エッセイでは知識の量を誇るのではなく、自分がどのように考えてその結論に至ったのかという「思考のプロセス」と「メタ認知」を明確に示すことがポイントになります。

    東京大学CoDの出願では、英語によるエッセイ2本と動画課題が課されており、これらは選抜全体における重要な評価材料の一つです。

    エッセイでは、与えられた問いに対して、自分自身の経験や関心、考え方を具体的に伝えることが重要です。特に、次の点を自分自身の言葉で表現することが求められます。

    ・関心:自分は何に関心を持っているのか。

    ・思考:なぜそのように考えるのか。

    ・行動:その考えをもとに、どのような行動を起こしたのか。

    完成した答えだけでなく、思考のプロセスを伝える

    東京大学CoD向けのエッセイでは、課題に対する完成度の高い解決策を提示するだけではなく、自分がどのように課題を発見し、考えを深め、検証を経て結論に至ったのかを表現することが重要です。

    ここで鍵となるのが、メタ認知です。メタ認知とは、自分の思考プロセスそのものを客観的に観察・分析する力を指します。

    エッセイでは、次の2点を意識すると良いでしょう。

    ・考える自分:課題に対して考え、行動し、解決策を探る自分。

    ・自分を客観視する自分:自分の考え方や行動を振り返り、その妥当性や課題を分析する自分。

    この2つの視点を文章に盛り込むことで、深い洞察力と自律的な思考力を効果的にアピールできます。

    失敗や葛藤もエッセイの材料になる

    過去に挑戦して失敗し経験や、思い通りにいかなかったプロセスを取り上げることも有効です。大切なのは、失敗したという事実だけで終わらせず、失敗から何を学び、どのように考え方を変えたのかを具体的に伝えることです。

    例えば、次のような流れで整理できます。

    失敗を通じて思考を再構築した過程を論理的に表現することで、デザインシンキングに対する適性を示すことにつながります。

    説得力のある文章にするためのポイント

    エッセイを構築する際は、前提となる言葉の定義を厳密に扱い、単なる相関関係と明確な因果関係を混同しないように注意しましょう。

    特に、次の点を意識することが大切です。

    ・主張の前提となる言葉の意味が明確になっているか。

    ・主張と根拠が論理的につながっているか。

    ・相関関係を、根拠なく因果関係として説明していないか。

    ・自分の考えがどのような経験や検証を経て形成されたのか、読み手に伝わるか。

    説得力のある論理展開を意識しながら、デザインシンキングの考え方を楽しみ、東京大学での学びを通じて周囲に影響を与えられる存在であることを示す文章を目指しましょう。

    英語エッセイについては帰国子女受験の記事でも、対策方法をご紹介しているのでぜひご覧ください。

    東京大学CoD入試に必要とされる5つの資質と知的能力

    岡留先生

    大学側が掲げる完璧な人物像に自分を無理に合わせようとするのではなく、自身のこれまでの実体験の中から「課題に向き合った真摯な軌跡」を丁寧に見出していく作業を推奨します。

    東京大学がアドミッションポリシーや求める学生像において提示している能力の柱は以下の5つです。

    ・知力と学習能力

    ・優れたコミュニケーション能力及び英語力

    ・論理的思考力及び創造的思考力

    ・責任感・社会正義感・包摂性

    ・自主性及び協調性

    ここまでの説明を読むと、すべての資質を兼ね備えた完璧な人物でなければ合格できないのではないかと、圧倒されてしまうかもしれません。

    しかし、これらの資質が求められる理由は、デザインシンキングのプロセスを理解すると見えてきます。

    思考の段階求められる力
    アイデアを生み出す既存の概念にとらわれないクリエイティビティ
    解決策を具体化するアイデアを現実社会で機能させるためのロジカルシンキング
    多角的に考え、改善する多様な視点を取り入れ、自分の考えを深める姿勢
    試行錯誤を続ける現実の複雑さや予期せぬノイズに対応する柔軟性と粘り強さ

    デザインの初期段階では、既存の概念に取られない創造性が必要です。一方、そのアイデアを現実社会で機能する解決策へ発展させる段階では、厳密な論理的思考が求められます。

    さらに、複雑な問いに対して多様な視点から考えたり、他者と協力したりしながら、自分の考えを深めていく姿勢も重要です。

    教育心理学における知能や創造性の研究論文でも、複雑な社会問題の解決には、幅広く発想を広げる力と、論理的に検証する力の双方が必要であることが指摘されています。

    東京大学CoDの試験においても、抽象的な理論を知っているだけでなく、現実社会の複雑さや予期せぬノイズに直面した際に、どれだけ柔軟かつ粘り強く試行錯誤を続けられるかという姿勢が重要になります。

    抽象的な理論を理解し、現実の具体的な事象と結びつけながら構造化し、応用していく柔軟な思考力を身につけましょう。

    デザインシンキングのスキルを身につけるための学習アプローチ

    ここでは、東京大学CoDの試験やエッセイ対策に向けて、日常の中でデザインシンキングの思考法を鍛え、文章表現力を高めるための具体例や学習ステップについて解説します。

    ①思考の言語化と因果関係の精査を鍛える

    デザインシンキングを実際の文章表現へと落とし込むためには、頭の中にある曖昧な思考過程を正確に言語化するトレーニングが必要です。

    日常生活やニュースで触れる社会問題について、次のような習慣をつけましょう。

    ・自分が「なぜそう思うのか」を掘り下げる。

    ・主張の前提となる言葉の定義を明確にする。

    ・ある現象Aと現象Bが同時に起きている時、それが相関関係なのか、因果関係なのかを批判的に検証する。

    こうした論理的な思考の手続を繰り返し練習することで、さまざまな問いに対して、再現性のある論理的な文章を組み立てる力を養えます。

    ②他者とのディスカッションを通じたアイデアの磨き込み

    デザインシンキングの醍醐味は、一人だけの閉じた頭の中ではなく、多様な視点を持つ他者との協働を通じてより高い解決策を導き出す点にあります。

    周囲の友人や講師、異なるバックグラウンドを持つ人々と、意識的にディスカッションを行う機会を設けましょう。

    他者との対話には、次のようなメリットがあります。

    ・自分では思いもよらなかった視点に気づける。

    ・自分が無意識に陥っていた思考の偏りを見直せる。

    ・自分のアイデアに対するフィードバックを受け、より洗練された考えへと発展させられる。

    議論を重ねながらアイデアを磨く経験は、エッセイの内容に深みを与えるだけでなく、面接での対話力や課題解決へのアプローチを向上させることにもつながります。

    ③プロトタイピングとしてのエッセイ執筆とフィードバックの反復

    思考の整理が進んだら、指定されたテーマや志望理由に沿ってエッセイのドラフトを執筆しましょう。デザインシンキングでは、試作品(プロトタイプ)を作成してテストを繰り返します。同様に、エッセイも一度書いて終わりにするのではなく、第三者からの客観的なフィードバックを受けて何度も推敲を重ねるプロセスが不可欠です。

    プロの指導者や客観的な視点を持つ第三者から次の点を確認してもらいましょう。

    ・「論理の飛躍がないか」

    ・「自身の思考の軌跡が読み手に伝わる構成になっているか」

    ・「主張の前提となる定義が明確か」

    フィードバックをもとに文章を見直し、修正を重ねることで、完成度と説得力を段階的に高めることができます。

    TCK Workshopが提供する東大CoD対策プログラム

    海外生・帰国生の学習支援に豊富な実績を持つTCK Workshopでは、東京大学CoD(UTokyo College of Design)の合格を目指す生徒の皆様に向けて、求められる思考力やエッセイ執筆に特化した実在のカリキュラムを提供しています。

    東京大学 College of Design Essay 定期講座

    継続的に深い思考力と文章表現力を養いたい方向けには、高校1年生・2年生を対象としたを開講しており、受講生一人ひとりの思考の癖に合わせた丁寧な指導を実施しています。

    SCOOP!!! Lab|時事問題ディスカッション講座

    時事的なテーマについて意見を交わし合い、社会問題に対する視野を広げ、議論の引き出しを増やすための講座です。

    1対1個別指導

    個々の進捗や志望内容に合わせて、マンツーマンで文章を磨き上げる指導です。自分の考えをじっくり深掘りし、エッセイの完成度を高めていきます。

    集団でのディスカッションによる多角的なアイデア創出と、個別指導による思考の深掘りを組み合わせることで、東京大学CoDの試験に向けて、自分の考えを整理し、言語化する力を身につけることを目指します。

    まとめ

    東京大学CoDの入試対策では、次の4点を意識しましょう。

    • デザインシンキングを理解する: 単なるアートのセンスではなく、人間中心の視点で課題を発見し、試行錯誤を重ねる思考法を身につける。
    • 思考プロセスを表現する: エッセイでは、完成された解決策だけでなく、自分がどのように考え抜いたかという過程やメタ認知を具体的に伝える。
    • 日頃から思考を鍛える: 思考の言語化や因果関係の検証を意識し、論理立てて文章を組み立てる練習を重ねる。
    • 他者の視点を取り入れる: 周囲とのディスカッションや第三者からのフィードバックを活用し、アイデアやエッセイの完成度を高める。

    東京大学CoDの入試対策やエッセイ作成について、疑問や不安がある方は、TCK Workshopの無料学習相談をぜひご活用ください。

    海外生・帰国生の学習支援に長年携わってきたプロのアドバイザーが、お子様の状況や目標に合わせた最適な学習プランをご提案いたします。まずはお気軽に無料学習相談へお申し込みいただき、合格に向けた第一歩を踏み出してみませんか。

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