帰国女受験の出願シーズンが今年もやってきます。中学受験、高校受験、大学受験問わず、出願時に必須となる「志望理由書」、弊社でも毎年作成の相談を受けますが、準備・作成する際に最低限、これだけは最低限気をつけてほしいこと子を今回はご紹介しますので、ぜひこれから作成される、という方は参考にされてみてください。
そもそも志望理由書とは?
「志望理由書」は学校によってその名称が異なりますが、いわゆる試験の結果だけで合否を判定する日本式の受験スタイルとは異なる「帰国枠受験」「総合型選抜」などの全人評価をする試験スタイルにおいては、求められることがほとんどです。
書類審査だけで合否が決まるような、高校受験ではICU高校、桐蔭高校、大学受験では早稲田SILSや上智FLAなどのような人気校での志望理由書の重要性はいうまでもなく、出願し書類の一環として提出が求められる場合でも面接の際の事前資料であることや面接後も学校側に残る資料であることを意識しておく必要があります。
- ICU高校
- 桐蔭高校
- 早稲田大学 国際教養学部
- 上智大学 国際教養学部 など
いずれの場合でも、重要なことが「自分自身のことを知らない第三者に自分自身のことをよく理解してもらえるだけのわかりやすさ」と「限られた文字数の中で、自分自身の個性や経験についてのオリジナリティを損なわないこと」です。
大抵の場合、志望理由書で書くことのできる字数は決して多くはないので、字数が足りず、推敲を重ねた結果、「自分でなくても書けるような一般的な内容」になってしまっていることが非常に多いです。より多くの内容を書こうと抽象化をしていった結果、オリジナリティまで損なわれてしまう、という勿体無い結果になってしまっているのです。(逆に字数が足りなくて苦労している、という場合は、学校分析・自己分析ともに不十分かと思われるので再考しましょう。)
この「字数」と「オリジナリティ」のバランスの取り方が志望理由書作成の際にもっとも難しい点ではあるのですが、中学受験だろうが、高校受験だろうが、大学受験だろうが、学校側からの要求レベルは変わるものの準備の仕方は多くは異なりません。
私は志望理由書の作成をサポートする中で、なるべく生徒さんの魅力や想いを伝えられる個性や経験を引き出せるように、多くの対話を重ねるので、気がつくと生徒さん達も、制限字数の3~10倍もの字数を書いてきて、そこから「自分自身の想い/経験をよりよく伝えられるエピソードや構成」に工夫を凝らしていくことになります。ここまできたらもう準備万端、あとは語学の問題です。
では作成の際にどんなことに注意して書けば良いのでしょうか?それを次で問題のタイプ別にご紹介します。
海外経験や学習経験を問うような問題
志望理由書で問われる問題はその「時間軸」によって問題を分類して考えることができます。
その一つが「過去」に焦点をあて、「もっとも辛かった経験は何ですか」「これまで海外生活で頑張ってきたことは何ですか?」といったようなこれまでの海外経験、学習経験を問うタイプの問題です。
海外に住んでいた年数や経験に関係なく、これまでの海外経験や学習経験を細部まで振り返った上で、誰にでも伝わるように表現していく必要があります。
ここで特に重要なことが以下の2点です。
- 自分にとっては「当たり前」であることが第三者の人にはそうではないこと
- 誰に読まれても、伝わるような「具体性」を持たせること
特に一点目は自分ではなかなか気がつきにくい部分で、他に比べられる人も多くないからこそ自分自身の学習環境や学習習慣が「自分にとっては」当たり前になってしまっていてうまくエピソード化できていないことが多いです。
例えば、現地校に通っていてもクラスメートの構成は多様ですし、英語学習の方法も千差万別。それぞれが「当たり前」だと思っていることがお子様の人格形成、性格や思考の形成に大きく影響を与えていることもあります。
そのような自分にとっては当たり前でも第三者から見れば「当たり前ではない」部分にフォーカスすることが志望理由書の作成に当たっては重要です。
と同時に、「わかりやすさ」もまた至上命題。自分にとっては「当たり前」であっても、という話は、他の人にとってもこれまで生きてきた環境や自分が考えてきたことを誰にとっても伝わりやすく構成し、表現する必要性も導きます。
より多くのことを書こうと思った結果、「異文化への理解を深められました。」「他者を理解することの重要性を学びました。」のような誰でも書けてしまうような「正解」を書いてしまうのは、非常にもったいないことです。
自分が経験したこと、感じてきたこと、考えてきたことの重要な部分をエピソードとして、自分自身の思考を形成するエッセンスを浮き上がらせていくことを心がけて作成していきましょう。
将来のことについての問題
志望理由書で問われる質問としてたまに目にするのが、「将来」に関する質問です。「入学してからどのようなことに取り組みたいですか?」というような短期的な目標を問うものから、「将来の夢」などの中長期的な目標を問うものまで問われ方は様々です。
ここでみなさんがよくつまづくのは、「将来の夢とかまだないなぁ…」「何がしたいかわからない…」という不明瞭な将来に対する記述を求められるように感じるからではないでしょうか?
もちろん明確に将来やりたいことが決まっていることは非常に素晴らしいことですが、周りを見渡しても明確に将来の夢ややりたいことが決まっている人の方が少数派です。
このタイプの問いではこれまでの経験を振り返り、「今」の自分が興味関心を持っていることは何かを明確に、具体的にすることが求められています。それらが具体的であればあるほど、自分自身の取るべき行動も明確になり、読む人からしても、今後の努力も期待が持てるようになります。
過去に「プロサッカー選手になりたい」という生徒さんの志望理由書の作成をサポートしたことがあります。彼もまた初めて持ってきた志望理由書には、これまでの血のにじむような努力や、どれだけ具体的にその夢を描いて行動しているかが全く表現されておらず、「誰でも語れる」夢になっていました。
しかし、その後、「なぜプロサッカー選手を目指したか」「プロサッカー選手になって何がしたいか」「どのようにプロサッカー選手を目指すのか」など多方面から思考を深めたことにより、彼の志望理由書は「彼は本当に5年後にサッカー選手になっているかもしれない」と思わせるような出来栄えになりました。
繰り返しになりますが、ここでも必要になってくるのは具体性です。どうしてその夢をもつに至ったか、どうしてそれをやりたいと考えるようになったかまで含めて、「今の自分」が興味のあることは何かを整理し、興味関心のベクトルを定め、そこに向けてどのような努力をする自分を描いているかを表現していきましょう。
- どうしてその夢を持つに至ったのか?を読み手にわかりやすく、具体的に書く
- 「今の自分」が興味のあることを整理し、夢に向けてどんな努力をすべきか、自分が何をすべきなのかイメージしよう
よくいただくご質問にお答えします!
最後に、よくいただくご質問やご相談をまとめたのでQ&A方式で最終回としたいと思います。
学力試験を課さない学校(有名校・人気校だと、高校受験でのICU高校や大学受験での早稲田SILS、上智FLAなど!)での重要性はいうまでもなく、それ以外の学校でも面接試験がある場合は志望理由書をもとに面接試験の質問が構成されることは容易に想像がつきますし、何より試験後も合否の判断のタイミングまで学校側に残る書類です。面接で話した内容と、志望理由書に書いてある内容がかけ離れていると、たくさんの受験生を面接する先生からすると「あれ、これどの子だっけ…?」となってしまいかねないので、事前に自分が面接でアピールしたいこと、話したいことをよくよく考えて、志望理由書に書くことを決定しましょう。
書くこと自体は字数も膨大な量が課される訳ではないので、すぐ書き上げられる!と思うかもしれませんが、前の質問でも回答したように、重要度の高い書類で、面接で何を話したいかまでを想定した上で、何を書くかを検討し、内容の深掘りをする必要があるので、しっかりと準備時間を設けておくことをおすすめします。最低でも1ヶ月は準備期間を設け、毎日少しずつの時間でも取り組み、自分の書いたものの読み直し/書き直しを繰り返しましょう。また、まだ受験が直前でない方も、常日頃から自分の感じたことや考えたことなどを記録しておくと、こういった志望理由書を作成する際に大いに役にたちます。生徒さんの中にも海外にいってからの経験をブログにまとめている生徒さんや毎日一言日記を書いている生徒さんがいたりしますが、志望理由書の作成の際に大いに役立っているようです。そんな大層なものを作る必要はないので、SNS感覚で今日のできごと、今日の感想をメモしていくくらいでも後から振り返った時に良いきっかけになるかもしれません。
上で書いているようなことを意識して、とにかく自分自身の経験を深掘りしていくことが重要です。自分自身の経験や想いを言語化する機会は、普通に生きている中ではなかなか多くはないですが、受験など関係なく生きていく上で重要取り組みだと私は考えています。これまでの自分の経験やそこから学んだことを整理し、自分自身の強みや弱み、今後の目標など改めてよくよく考えるところからスタートです。自分一人で取り組むのが難しい部分でもあるので、そういった時はご両親はもちろん、学校の先生や私たちのようなチューターの力を借りながら、頑張ってみてください!
自分の書いたものが他の人からみて、わかりやすいかどうかは確実に判断できません。自分のことをよく知る第3者の人に作成自体は協力してもらいながら、自分のことをよく知らない第3者にわかりやすさをチェックしてもらうことで、準備万端です!
最後に
他にもこんなことも気になる…ということや、具体的に受験したい学校がある場合は、いつでも無料相談をご利用ください。
もちろん「自分で書いたものが本当にこれで良いのか…?」というような場合はぜひご相談ください。第三者として、志望理由書の作成をお手伝いすることはもちろん、自分自身の経験や想いの詰まった志望理由書に仕上がっているかを我々プロの講師陣がチェックいたします。