海外在住のお子様や帰国生にとって、広尾学園AGコース(Advanced Global Course)は、その質の高い国際教育カリキュラムにより、中学受験における最難関校の一つとして知られています。
先日はYahoo! Japan Newsにも取り上げられ、海外大学への合格率が圧倒的に高い学校としても注目が集まっています。

特に11月から12月にかけての「超直前期」は、これまでの学習成果を得点力に変え、合格を手繰り寄せるための非常に重要な時期です。

この時期になると、新しい知識を詰め込むことよりも、志望校の出題傾向に合わせた実践的な演習と、ミスのない答案を作成するための戦略が合否を分けます。英語、国語、算数の3教科に加え、面接対策まで、限られた時間の中で優先順位をつけて取り組む必要があります。

本記事では、TCK Workshopのウェビナーでの解説をもとに、広尾学園AGコース合格に向けた直前期の具体的な学習戦略と、各科目の追い込み方法について詳しく解説します。

北村先生

講師:北村 優奈

 TCK Workshop プレミアム講師。立命館高等学校、立命館大学国際関係学部卒業。中国(上海)とアメリカでの滞在経験を持つ日・英・中のトライリンガル。 自身の帰国枠中学受験の経験を活かし、小学校全科目の基礎指導から、中学・高校入試対策、英検対策、さらに志望理由書作成まで幅広く指導を担当。 特に、海外生活と日本の受験勉強のギャップに悩む小学生・中学生に対し、学習面だけでなくメンタル面もしっかり支える存在として信頼を集める。

    広尾学園AGコース入試の基本と合格へのタイムライン

    直前期の対策を効果的なものにするためには、まず広尾学園AGコースの入試制度と得点配分を正しく理解しておくことが大切です。広尾学園AGコースの入試は、英語・国語・算数の3教科と面接で構成されていますが、最大の特徴はTOEFLスコアによる英語試験の免除制度にあります。

    北村先生

    TOEFL免除を持っている受験生の方が、TCKのこれまでの指導を見ても合格率が高い傾向にあります。英語試験の免除によって生まれた時間を、国語と算数の基礎固めや過去問演習に集中投下できるからです。もし現在TOEFLのスコアが90点に届いていない場合は、試験直前までスコアメイクに粘り強く取り組むか、あるいは英語入試対策へ切り替えるかの判断が重要になります。

    試験の配点は、英語が100点、算数が50点、国語が50点の合計200点満点です。ここで重要なのが、TOEFL iBTで90点以上を取得している場合、当日の英語試験が免除され、英語の持ち点として優遇措置が適用されるという点です。免除制度を利用する場合、英語試験の準備時間を国語と算数の対策に充てることができるため、戦略的に非常に有利になります。

    合格ラインの目安として、英語・国語・算数の合計で140点程度を目指したいところです。例えば、TOEFL免除で英語の点数が確保できている場合、残りの国語と算数で合計30点から40点以上を積み上げることができれば、合格ラインに大きく近づくことができます。

    まずはTOEFL免除を使うかを早急に判断しよう

    受験本番が迫る11月から12月は、これまでの学習の総仕上げを行う期間です。この時期の優先順位は、お子様の現状によって異なります。

    TOEFL 90点取得済みの方

    国語と算数の対策に全力を注ぎましょう。特に、算数の計算ミスをなくすことや、国語の漢字・語句での失点を防ぐなど、基礎的な部分での取りこぼしをゼロにすることが最優先です。

    TOEFL 90点未取得の方

    英語試験を受験する準備が必要です。広尾学園の英語試験は独自性が高く難易度も高いため、過去問演習を通じて出題形式に慣れておく必要があります。同時に、国語と算数でも最低限の点数を確保できるよう、バランスを見ながら学習を進めることが求められます。

    超直前期に得点力を最大化する3教科追い込み戦略

    ここからは、直前期に点数を伸ばすための具体的な教科別対策について解説します。残された時間を最大限に活用し、合格に必要な得点力を養っていきましょう。

    英語(English):免除なし受験組のポエム・エッセイ対策

    北村先生

    広尾学園の英語試験は、他校と比べても一味違います。特にポエム対策は、一般的な英語学習だけでは対応が難しいため、専門的な用語(Device)のインプットと、それを使って作品を分析するトレーニングが必須です。また、エッセイではフィクションを書く練習を積んでおかないと、当日テーマを見て戸惑ってしまう可能性があります。

    TOEFLスコアによる免除を利用せず、当日の英語試験を受験する場合、広尾学園特有の出題傾向への対策が不可欠です。試験は大きく分けて、物語文(Prose)、詩(Poem)、エッセイライティング(Essay)の3つのパートで構成されています。

    詩(Poem)

    詩の読解問題では、単に英語の意味がわかるだけでなく文学的な分析能力が問われます。作者が用いている比喩(Metaphor)や擬人化(Personification)、頭韻(Alliteration)といった表現技法(Poetic Devices/Literary Devices)を理解し、それらが作品の中でどのような効果をもたらしているのか、作者の意図は何なのかを読み解く力が求められます。選択肢問題は少なく、記述で答える形式が多いため、自分の言葉で説明できるよう練習しておくことをおすすめします。

    エッセイライティング

    近年の傾向変化に注意が必要です。以前は2つの共通テーマを踏まえた意見論述が主流でしたが、ここ数年は「フィクション・エッセイ」、つまり物語を創作する形式の問題が出題される傾向にあります。論理的な構成だけでなく、登場人物の設定やストーリー展開、結末までの流れを短時間で構築するクリエイティブなライティング能力が必要とされます。

    算数(Math):英語出題への慣れと計算ミスの撲滅

    北村先生

    英語での出題に慣れていないと、簡単な問題でも難しく感じてしまうことがあります。算数特有の英単語(Equation, Volume, Ratioなど)をインプットし、英語の問題文を読んだ瞬間にどのような計算が必要かがイメージできるようにしておきましょう。また、他の併願校対策をしていない場合は、広尾学園に特化して方程式を使った解法をマスターするのも一つの手段です。

    広尾学園AGコースの算数は、問題文が英語で出題されますが、問われている数学的内容自体は日本の受験算数に基づいています。そのため、まずは日本の受験算数の基礎をしっかりと固めた上で、それを英語で理解できるようにする「翻訳作業」のような対策が有効です。

    大問1

    直前期の対策として最も効果的なのは、大問1の計算問題と大問2の小問集合を確実に得点源にすることです。大問1の計算は、絶対に落としてはいけません。毎日時間を計って計算練習を行い、スピードと正確性を極限まで高めてください。

    大問2

    大問2の小問集合では、特殊算(食塩水、つるかめ算など)が頻出です。これらの典型題は解法パターンが決まっているため、類題演習を繰り返すことで安定して得点できるようになります。大問3や4では、容器と水量、旅人算、規則性といった応用問題が出題される傾向がありますが、難問に時間を使いすぎて基本問題を落とすことのないよう、時間配分の練習も重要です。

    国語(Japanese):要約練習と課題型作文の型

    国語は日本語での出題となります。試験内容は、漢字・語句問題、説明的文章の読解、そして課題型作文です。

    北村先生

    作文対策では、自分の「経験の引き出し」をいくつか用意しておくことが大切です。どのようなテーマが来ても、自分の持っている具体的なエピソードに結びつけて論じられるよう準備しておくと、本番で焦らずに書き進めることができます。

    漢字・語句問題

    直前期に点数を伸ばしやすいのは、まず漢字と語句です。範囲の広い学習をするよりも、小学校6年生レベルの「出る順」形式のドリルを一冊決めて、それを完璧に仕上げることをおすすめします。知識問題は知っていれば解けるため、直前まで粘り強く取り組む価値があります。

    読解・課題型作文

    読解問題については、文章自体が大人が読む新書レベルと難易度が高い上に、作者の要旨を正確に把握する力が求められます。おすすめの勉強法は、読解問題を解いた後に「この文章で作者が言いたかったことは何か」を要約する練習です。これが、続く課題型作文の対策にも直結します。

    課題型作文は、200字から300字程度という限られた字数の中で記述する必要があります。構成としては、まず「作者の要旨」を簡潔にまとめ、それに対する「自分のスタンス」を明確にし、最後にその理由を裏付ける「具体的な経験(エピソード)」を述べるという流れが基本です。特に、自分の海外経験や学習での努力などの具体的なエピソードを盛り込めると、説得力が増し、高評価につながりやすくなります。

    面接で見られるポイントと対策

    面接は日本語と英語の両方で行われます。質問内容は、志望理由、海外での経験、自分の長所・短所といったオーソドックスなものが中心です。ここで重要なのは、結果そのものよりも、その結果に至るまでの「プロセス」を語ることです。

    例えば、「英語力が伸びた」という結果だけでなく、「どのような苦労があり、それをどう乗り越えるためにどのような工夫や努力をしたのか」という過程を具体的に説明できるようにしましょう。経験の棚卸しを行う際は、保護者の方や講師など第三者と対話し、自分では気づかないアピールポイントを客観的に見つけてもらう作業が有効です。

    また、直前期には模擬面接を必ず行いましょう。知らない大人を相手に話す練習をすることで、本番の緊張感に慣れ、想定外の質問が来ても落ち着いて対応できる度胸がつきます。

    TCK Workshopの直前対策講座・模試

    TCK Workshopでは、広尾学園AGコースの受験を熟知した講師陣による、直前期に特化した対策講座や模試を提供しています。残りの期間で効率よく実力を伸ばしたい方は、ぜひ活用をご検討ください。

    学校別対策に最適!TCKの特別講座
    各種特別講座はこちら
    ビデオ講座、模試、夏期講習etc

    TCK Workshopでは、広尾学園AGコースの入試傾向を熟知したプロ講師が、個別指導を通じてお子様の合格をサポートします。直前期の対策にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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    まとめ

    TOEFL免除の有無で戦略を変える:免除ありなら国算に集中、なしなら英語試験対策(特にポエム・エッセイ)を最優先に行う。

    算数は計算と小問集合で落とさない:英語での出題に慣れつつ、基本的な計算練習と頻出単元(特殊算など)の反復演習を徹底する。

    国語は要約と作文の型を身につける:読解後の要約練習を行い、作文では自分の具体的な経験を盛り込む構成を確立する。

    面接はプロセスを語る:結果だけでなく、努力の過程を言語化し、模擬面接で実践力を養う。

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