IB、国際バカロレアで文学の授業をSLやHLで取っている生徒のみなさん!
IOC (Individual Oral Commentary) やIOP (Individual Oral Presentation) などの口頭試験をとても警戒し、緊張していませんか?
筆記試験とは違って、その場で質問を受けたり、HLのIOCでは発表のあとにさらに10分のディスカッションがあります。プレゼンやディスカッションに慣れていないと、とても怖く感じてしまう事件かもしれません。
しかし、この口頭試験は、その場で見たことのない文章を渡されて「時間内に分析して発表しなさい」という内容の試験ではありません。しっかり授業で触れて、すでに勉強したことのある作品から出題されます。
なので、この試験で一番大切なことは
出題される可能性のある作品のどれが出ても、大きなテーマと作品を理解するための重要なポイントがすぐに浮かんでくるところまで準備をする
ことです。
授業で勉強する作品を理解すればするほど、作品や作者が特に描くテーマを理解すればするほど、IOCに対する不安は減ってくるはずです。
今回の記事では、IBの日本語A、HLのIOC口頭試験に関する、以下の3点についてご紹介します!
- IOCとは?なにが評価されるの?
- HLとSLの違い
- 試験当日の流れについて
IOCとは?なにが評価されるの?
まず、IOCは Individual Oral Commentary、個人口述コメンタリーの略で、授業で読み、学んだ文学作品について口頭で分析したプレゼンを発表します。
作品はIBの文学授業のカリキュラムで扱う作品の2群、”Detailed study(精読学習)”から出題されます。
口頭で行うコメンタリーは10分ほどで、プレゼン部分が8分、そのあと質疑応答が2分、となっています。HLを選択している生徒は、さらに10分間、別の作品に関するディスカッションを行います。
プレゼン | 8分 |
質疑応答 | 2分 |
【HLのみ】 もう一作品のディスカッション | 10分 |
この試験で一番評価されるのは、文学に対しての知識と分析力です。
評価基準はこのように記されています。
- 学習した作品からの短い抜粋を分析し、その抜粋の中で用いられた技法の効果を評価することができる
- きちんとした口語言語使用域(レジスター)を用いて、構成され、焦点を絞った論評を行うことができる
作品のLiterary convention、文学的表現技法を十分に理解していることが大切で、特に「演劇の会話やスピーチ、韻文の韻律や脚韻、または散文小説の伏線や回想など」をしっかりと見つけることができ、その効果について語れるだけの知識が必要となってきます。
口頭試験で出題されるかもしれない作品たちを熟考しながら、
- 作品・作者についての知識
- ジャンルの分析
- 言語の使用法によって作品にどのような効果があるのか
といった点について深掘りして、試験の準備を進めます。
HLとSLの違い
まず、日本語A 文学HLとSLのIOCの違い、というのは10分のコメンタリーのあとに、別の作品について10分間ディスカッションをするかしないか、というところです。
そしてHLはSLと比べて、評価も厳しくなっています。
まずはSLの評価基準から見ていきましょう。SLのIOC評価基準は以下の通りです。
(それぞれの基準の下に書いてある説明文は、各項目で満点を取った際の評価です。)
最高評価 | 配点 | |
---|---|---|
基準A 課題文(抜粋)についての 知識と理解 | 非常に優れた知識と理解があることが、適切に選ばれた抜粋への参照に裏づけられた注意深い解釈により示されている。 | 10点 |
基準B 作者の選択についての認識 | 言語、構成、技法およびスタイル(文体)が抜粋の中で意味を形成している方法について、非常に優れた認識を示している。 | 10点 |
基準C 構成とプレゼンテーション | 論評は非常に明確な構成があり、焦点が一貫している。 | 5点 |
基準D 言語 | 言葉遣いは、非常に明確であり、すべて適切に選ばれている。文法、語彙、文章の構成は高度に正確である。レジスターとスタイル(文体)は効果的で、適切である。 | 5点 |
SLは、この4項目が評価対象となっていて、30点満点の口頭試験となっています。
HLのIOCは、コメンタリーとディスカッションの二つを合わせて、6つの評価規準が用意されています。(SL同様、各規準の下に書かれている説明文は満点とされる回答の説明です。)
最高評価 | 配点 | |
---|---|---|
基準A 詩の知識と理解 | 素晴らしい知識と理解があることが、厳選された的確な詩への参照で効果的に裏づけられた独自の解釈から見て取れる。 | 5点 |
基準B 作者の選択についての認識 | 詩における言語、構成、技法およびスタイル(文体)が意味を形成している方法についての認識が非常に優れている。 | 5点 |
基準C 構成とプレゼンテーション | 論評は、効果的に構成され、焦点が明確、意図的かつ持続的である。 | 5点 |
基準D ディスカッションに使用された作品についての知識と理解 | ディスカッションにしようした作品の内容と関連事項についての知識と理解が非常に優れている。 | 5点 |
基準E ディスカッションでの問いかけに対する答え | ディスカッションの問いかけに対し、説得力があり自分自身の考えを示している。 | 5点 |
基準F 言語 | 言葉遣いは、非常に明確であり、すべて適切に選ばれている。文法、語彙、文章の構成は高度に正確である。レジスターとスタイル(文体)は効果的で、適切である。 | 5点 |
以上6つの項目が各5点配点となっているのが、HLの評価規準です。
ディスカッションの評価は別枠、とはなっていないので、コメンタリーと合わせてしっかりと準備を進めていく必要がありますね!
どんなことを話すの?試験本番の流れ
SLとHL、それぞれの評価規準に目を通したところで、実際の口頭試験の内容、当日の流れなどを見てみましょう。
最初のコメンタリー部分は、SL・HL関係なく、やることは一緒です。
まず、与えられた詩(・抜粋)を確認して、20分で自分の解釈、主張などをまとめます。
コメンタリーの発表ですが、エッセイで書く時のように、大きく3つのパーツ:Introduction, Body, Conclusionに分けることができます。
とても緊張してしまう試験ですが、ひとつ安心できることは、発表の冒頭部分はほぼ暗記した状態で臨むことができる、ということです。
ピンポイントでどの作品が当たるか、は当日まで分かりませんが、“どれが当たるかもしれない” は分かるので、どれに当たっても大丈夫なように、以下のポイントをあらかじめ想定しておくことをオススメします。
- 作者、抜粋なら元の作品のタイトル・詩集などの説明、出版・執筆時の時代背景
- 作品が扱う大きなテーマを2〜3つ
- 抜粋なら、本編のどこに位置する箇所か
- Bodyで、どのテーマについて話すか
このIntroductionのテンプレートを試験前までにしっかり覚えておくことで、当日どの詩が当たっても大丈夫!という自信につながります。
本文にあたるBody は、筆記で書くようなコメンタリーとあまり変わりません。
与えられた詩・詩の抜粋を確認してから、20分で自分の主張をまとめていきます。ここの準備としては、日頃から勉強する詩や文章の、いろいろな箇所を分析をして慣れておくことです。
友達グループと一緒に、ランダムで試験で出題されるかもしれない詩の抜粋を与えあって、その場で分析してみる練習をしたり、日々の勉強の中で「詩の分析ノート」を作ってみるのもいいですね!
最後のまとめ (Conclusion) は、ぐだぐだしてしまうとせっかくBodyの部分で評価を上げても、締まりのない終わり方だと良い印象で終われません。
「えーっと、だからその……」で終わってしまわないように気をつけながら、Bodyの部分で挙げた主張をもう一度述べて、作者の書く作品の特徴や大きなテーマに紐づけて簡単に解説し直します。まとめまで綺麗に仕上げてこその口頭試験なので、最後まで気を抜かずに準備を進めましょう!
アドバイス
今回ご説明してきたIOC対策ですが、これはIBの最終試験のような「幅広いカリキュラムの中からどの分野の問題が出てくるか最後までわからない……!」という試験ではありません。
選択肢は最初から決まっていますし、きちんと対策の取れる試験となっています。
さらに、内部審査の試験ですので、プレゼンをする相手はいつも勉強を教えてもらっている自分の先生です。準備万端な状態で、安心して受けられる試験なので、ここで高得点は狙っていきたいところですね。
私が同じIBの文学授業を受けてきた先輩からもらった一番のアドバイスは、”Know your text, and know your writers” ーー「与えられる作品と、作者については完璧に把握しておけ!」です。
執筆当時の歴史的な背景や、大きな文学的な流れ(例:政治的なテーマが描かれることの多かった時代なのか?フェミニズムテーマを多く扱う作家なのか?)を常に把握しておくことで、口頭試験の準備がかなり楽になってきます。
学習する作品についての情報を、全部ひとつの復習ノートにまとめておく、というのもオススメの勉強法です!
この知識は口頭試験以外でも使えるので、IBの文学の授業で学ぶすべての作品に対する勉強のアドバイスとして、ぜひ活用してみてください!
まとめ
いかがでしたか?
IOCは出題されるかもしれない、という詩は最初からわかっているので、念入りに準備を進めることのできる試験です。
コメンタリーと、HLならディスカッションも、どの詩が当たっても自信を持って挑めるように、日頃から文章の分析や、読解力を深めていくことが何より大切です。
しかし、IBの文学の授業は、レトリックや文章の分析への理解など、慣れたりコツを掴んだりするまでが大変だったりしますよね。その他にも、IBDPのカリキュラムに関する不安は拭えないかと思います。
TCK Workshopでは、IB対策も含めたオンライン個別指導を行なっており、日本語・英語でのサポートが可能な講師が多く在籍しています。
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