インターナショナルスクールやIB(国際バカロレア)認定校に通うお子さんをお持ちの保護者の方にとって、11歳から16歳(G6〜G10相当)を対象とする「MYP(Middle Years Programme:中等教育プログラム)」は、最も内容が見えにくいカリキュラムの一つかもしれません。MYPは高校最終学年の大学進学資格プログラムであるDP(Diploma Programme)で高い成績を収めるための思考力や記述力を養う、極めて重要な学問的基盤となります。
本記事では、国際バカロレア機構(IBO)の公式ガイドラインや実例をもとに、MYPのカリキュラム構造、評価基準(Criteria)の仕組み、IGCSEとの比較、そしてマルバーン・カレッジ東京での実際の取り組みについて詳しく解説します。

TCK Workshop代表取締役、特別講師。ニューヨーク、サンフランシスコに滞在したのち帰国生の名門校である東京学芸大学附属高校に入学。早稲田大学の創造理工学部を卒業。TCK WorkshopではIB math、SAT、A-levels Physicsなど海外カリキュラムの理数科目の指導を中心に指導を担当。
TCK Workshopの無料学習相談では、お子様が通う学校のカリキュラムや学習状況に合わせたMYP対策プランを個別に提案しています。IB特有の評価基準(Criteria)で伸び悩んでいる方やDPを見据えた英語力・思考力強化を目指す方は、ぜひプロの学習アドバイザーにご相談ください。
IB MYP(中等教育プログラム)の基本構造と8つの教科グループ


MYPは知識を単に記憶するのではなく、知識をどのように現実世界で活用するかを学ぶカリキュラムです。保護者の方ご自身の学生時代の勉強法と比べると戸惑うことも多いですが、仕組みを正しく理解することがお子さんのサポートの第一歩になります。
専門性を高める8教科と学際的学習(Interdisciplinary Learning)
PYPではテーマを中心とした教科統合型の学びが中心でしたが、MYPに進むと専門性を備えた8つの教科グループに分かれます。それぞれの科目で学問的な深みを追求しながらも、教科間の境界を取り払う「学際的学習(Interdisciplinary Learning)」を併行して実施するのがMYPの大きな特徴です。
以下の8つの教科グループが定義されています:
| 教科グループ名 | 主な学習領域と目的 |
| Language and Literature(言語と文学) | 母語による文学作品や非文学テキストの批評・分析・表現力を養います。 |
| Language Acquisition(言語習得) | 外国語(第二言語)のスピーキング・ライティング・読解力を段階的に身につけます。 |
| Individuals and Societies(個人と社会) | 歴史、地理、経済、宗教などを通じて人間社会や環境の相互作用を学びます。 |
| Sciences(理科) | 生物、化学、物理、地球科学などを統合し、科学的探究の手法と倫理を理解します。 |
| Mathematics(数学) | 代数、幾何、統計などの数学的概念を学び、未知の課題へ応用する力を培います。 |
| Arts(芸術) | 音楽、美術、演劇、ダンスを通じて創造的・分析的思考と表現力を育みます。 |
| Physical and Health Education(保健体育) | 運動能力の向上とともに、健康やウェルビーイングへの自己責任感を育みます。 |
| Design(デザイン) | 最先端のデジタル・プロダクト技術を用い、実際の課題を解決するデザインサイクルを実践します。 |
【関連記事】IBDPについてはこちらもご覧ください。
MYPの評価基準はどんな感じ?


「テストでミスなく答えたのに最高評価が取れない」というお悩みは、MYPに通い始めたご家庭から最も頻繁にお聞きするご相談です。従来の点数加算方式とは全く異なる評価軸を持っていることを正しく把握しましょう。
各教科4つの評価観点(Criteria)によるルーブリック評価の仕組み
日本の多くの学校や一般的なテストでは、100点満点中の点数で成績が決定します。しかし、IBOの公式ガイドラインに基づくMYPの評価には「0点〜100点」という概念が存在しません。代わりに、各教科ごとにあらかじめ定められた4つの評価観点(Criteria A, B, C, D)が設定されています。
評価観点はそれぞれ8点満点で評価され、4つの観点の合計点(32点満点)を、IB特有の1から7の7段階グレード(最終成績)に換算します。
| 評価観点(Criterion) | 評価の対象とされる能力 | 求められる解答・パフォーマンスの例 |
| Criterion A:Knowing and understanding(知識と理解) | 数学的概念や公式を正確に理解し、正しく計算や処理ができるか。 | 標準的な計算問題や方程式の解法(従来のペーパーテストに近い形式)。 |
| Criterion B:Investigating patterns(パターンの探究) | 複雑な問題や数値の並びから、規則性や数学的法則を自力で発見できるか。 | 与えられたデータから一般化された公式や予測式を導き出す記述。 |
| Criterion C:Communicating(コミュニケーション) | 解答に至る論理的プロセスや記号の定義を、他者にわかりやすく説明できるか。 | 途中式だけでなく、なぜその解法を選んだのかを英語文章で説明する記述。 |
| Criterion D:Applying mathematics in real-life contexts(実社会への応用) | 現実世界の課題に対して、数学的知識を適用して適切な解決策を提示できるか。 | 建築コストの試算や環境データの予測など、実社会のモデル構築。 |
計算問題の精度を問うCriterion Aで満点を取ったとしても、全体の評価の4分の1を満たすに過ぎません。「なぜその答えになるのか」を言語化する力(Criterion C)や、現実の文脈に応用する力(Criterion D)が伴わなければ、最高評価の「7」を獲得することはできない仕組みになっています。
「パーソナルプロジェクト」とは?

MYPの最終学年であるGrade 10(Year 11)では、5年間の学びの集大成として「Personal Project(パーソナルプロジェクト)」という個人の探究活動が義務付けられています。
生徒は自ら興味のあるトピックを設定し、数ヶ月間にわたる目標計画、リサーチ、成果物の制作、そしてプロセスをまとめた最終レポートの執筆を行います。テーマの例としては以下のような高度で実践的な取り組みが見られます。
・環境問題に対応した持続可能なファッションブランドのプロトタイプ制作
・高齢者や認知症予防に役立つスマートフォン向けアプリケーションの開発
・地域の伝統工芸を次世代に伝えるデジタル写真集の出版
マルバーン・カレッジ東京におけるMYPの実践事例


MYPが実際の学校でどのように実践されているのかを知ることで、日々の学習をより具体的にイメージできます。ここでは、IB一貫教育を提供するマルバーン・カレッジ東京の取り組みを例に紹介します。
マルバーン・カレッジ東京ではMYPをどう学ぶ?
マルバーン・カレッジ東京では、教科横断型の「Interdisciplinary Learning(IDL)」に取り組んでいます。
生徒は複数の教科で学んだ知識やスキルを組み合わせ、STEM・STEAM・SMArtなどをテーマとしたプロジェクトに取り組みます。こうした活動を通して、単一の教科だけでは解決できない課題について考え、リサーチ力や問題解決力、協働する力を身につけます。
特にYear 11(Hundred)では、グループおよび個人でのプロジェクトに取り組み、それまでに身につけた知識やスキルを実践的に活用します。こうした経験は、将来のDPで求められる探究活動や論文作成にもつながります。
【関連記事】IB科目選択についてはこちらもご覧ください。
Service as Actionと評価
また、マルバーン・カレッジ東京では、Service as Action(奉仕活動)を通して、学校や地域社会、環境に貢献する活動にも取り組みます。生徒自身が奉仕活動を企画・実践することで、他者への共感や社会的責任、リーダーシップなどを育てます。
評価では、単にテストの点数だけを見るのではなく、学習の過程や継続的な成長も重視します。授業中のフィードバックやユニット終了時の総括的な評価を組み合わせることで、生徒が自分の学習状況を理解し、次の学びにつなげられるようにしています。
このように、マルバーン・カレッジ東京では、教科の知識を身につけることに加えて、教科横断型のプロジェクトや奉仕活動を通して、知識を実際の課題に活用する力を育てています。これは、MYPからDPへとつながる探究的な学びの一例といえるでしょう。
IB MYPで成績を伸ばすためのTCK Workshopの指導

1. Criteriaに沿った記述力・アカデミック英語の強化
MYPでは、答えを出すだけでなく、考え方や根拠を論理的に説明する力も求められます。TCK Workshopでは、各教科のCriteriaに沿った答案作成やアカデミック英語を指導し、論理的に伝える力を伸ばします。
2. 日本語と英語の概念理解をつなぐバイリンガル指導
英語で授業を受けられていても、学習内容の理解や英語でのアウトプットに難しさを感じる生徒もいます。TCK Workshopでは、必要に応じて日本語で概念を整理し、英語で正確に表現する力につなげます。
3. DP進学を見据えた基礎力・応用力の強化
MYPでの探究的な学びに加え、DPで必要となる数学・理科などの基礎知識や演習量を補います。Grade 9・10頃から将来のDP科目を見据えた学習を進めることで、DPへのスムーズな移行をサポートします。
まとめ
IB MYP(中等教育プログラム)の全体像と、成績を伸ばすための戦略をまとめます。
・MYPは単なる知識暗記ではなく、8つの教科グループとグローバルコンテクストを通じた概念理解と探究力を培う5年間のカリキュラムです。
・評価は100点満点ではなく、教科ごとの4つの評価観点(Criteria A〜D)に基づきルーブリック形式で決定されます。
・計算結果や事実の記憶だけでなく、論理的な説明力(Criterion C)や実社会への応用(Criterion D)が満点や成績「7」の獲得に不可欠です。
・探究重視のMYPでは基礎的な計算演習や知識量が不足しやすいため、DP進学を見据えた自発的な知識補強をおすすめします。
・マルバーン・カレッジ東京のような認定校では、8教科の学びと学際的プロジェクト、奉仕活動を通じて高度な学問的思考力を培っています。
TCK Workshopでは、MYPの学校フォローからCriteria別のレポート添削、DPを見据えた先取り指導まで、お子様の現状に合わせた完全マンツーマンの個別指導を提供しています。海外在住中の時差に合わせた受講や、一時帰国中の短期集中指導も可能です。MYPの評価や日々の学習について不安をお持ちの方は、まずは無料学習相談からお気軽にお問い合わせください。
