帰国子女高校受験の数学は一般試験のレベルと変わらない!?

帰国子女中学受験で求められる算数の試験では、日本の中学受験算数の独自さゆえに、基本的な計算力や中学生以降の学習で必要となる概念の理解(分数・小数の計算の意味や比や割合の理解)の十分さを測るものがほとんどで、難易度は一般生のものと比べると平易になります。

一方、帰国子女高校受験では、大半の学校において日本の一般受験生と同じ内容の試験が課されます。「海外の学校で勉強しているのに、一般生と同じ内容のテストなんて…」と考えられるかもしれませんが、こちらは高校以降の数学との連続性を考えると、切っても切れない内容なので、致し方ない判断ではあります。

中学校の数学の内容を十分に習得できないことは、高校数学の学習の土台が未完成であることを意味し、日本の高校の学習への適応が困難になることを意味します。科目としての数学の重要性は依然高く、多くの学校が試験科目に課していることからも理解できるでしょう。

では、高校受験数学の学習はハードルが高く、困難を極めるのでしょうか?私の答えはNoです。

帰国子女高校受験のコツは「中学3年間のカリキュラムをいかに早く終わらせるか」

なぜNoか、それは高校受験数学にあたって、学習すべき内容が(中学受験とは異なり)中学生教科書範囲内から逸脱することはなく、決して多い分量ではないからです。

弊社で一時帰国の際に短期集中で学習される生徒様の中には、1ヶ月で中学1、2年の2年分のカリキュラムの内容を学習したり、あるいは1週間で苦手単元の克服をしたり、という生徒さんが多く在籍しています。

必要な公式や定理、考え方は決して多くはないので、まずはそれらを集中的に学習する時間を設け、その何倍もの演習量を積むことが数学対策の正攻法になります。

そのために「いつから学習すべきか」というのは多くのお客様からいただくご質問ですが、その回答は「早ければ早いに越したことはない。」です。

しかしながら、この回答自体は極度に一般化されたもので、それぞれのお子様の背景を無視したものであるので、より分かりやすい目標設定としては下記のようになります。

最難関校志望者(早慶系列校など) 遅くとも日本の中学3年生学年開始(4月)までに中学3年間のカリキュラムを終了すること
その他の学校志望者 遅くとも夏休み開始(8月)前までに中学3年間のカリキュラムを終了すること

開始時期が始めれば早いほど、余裕を持った取り組みが可能ですし、開始が遅くとも(それなりの負担は覚悟してもらう必要はありつつも)十分挽回は可能です。

帰国子女高校受験の対策にはどのぐらいの学習時間が必要?

ただ、上記のゴールを目指すにあたり、実際に中学3年間のカリキュラムを終わらせるためにでどれくらいの学習時間が必要であるか、ということには親子でしっかりと認識し、覚悟をしておきましょう。

中学1,2年生の2年間は年間300時間、中学3年生の1年間は500時間の学習が必要です。

中学1年生中学2年生中学3年生合計
300時間300時間500時間1100時間

多くの日本の難関高校受験生は、中学1年生から塾や個別指導にて週3時間ほどの授業を受け、その予習・復習に3時間ほどを費やします。

そうすると週に約6時間、1年間でおよそ300時間の学習を数学に費やすことになります。最終的なゴール(入学試験)が同内容ですから、同程度の学習時間を目標にしてほしいと思います。

「いつから開始すべきか」という判断に関しては、必要な総時間数を考慮して、お子様にとってどのペース感で学習することがサステナブルかということも考える必要があります。

「あまり要領が良くなくコツコツと進めたい」のであれば早めから、「短期集中で取り組みたい」のであれば、中学2年生あるいは、中学2年生の夏休みから、でも間に合わないことはないでしょう。

ただ、学習を進めるうちに、どうしても苦手な分野、理解に時間がかかる分野というものが必ず出てきます。その場ですぐに解決できなくても、他分野を学習し、つながりや背景を理解することで、あるいはただ単に時間の経過とともに理解できるようになる、ということもあるので、結論はやはり「早めに始めるに越したことはない。」です。

100%の理解を求めないこと。100%の理解はあり得ない!

やると決めたら、自分が取り組みやすい網羅的な受験用のテキストを利用して、淡々と進めていくのみです。

数学に関しては学習のプランニング自体は決して難しくありません。難しいのは一つ一つ単元を勉強していくこと。

特に中学1,2年生のお子様の場合は、学習習慣がきちんと身についていない場合も多いので、その場合は塾や個別指導を利用しましょう。(基本的には、高校受験以降はご両親が学習そのものに関与しすぎるのはよくありません。ご本人のモチベーション管理や悩んだ時の相談相手になられるのが良いかと思います。)

取り組むときに注意してほしいのは「完璧」を目指さないこと

「まだちゃんと理解できていない気がする」「答えを見ないと問題が解けないんだよな…」という状態で足踏みをしてしまっている生徒さんをよく見かけますが、それらはすぐには解決しません。

自分が苦手にしている部分や間違えた問題を正確に把握し、記録しておくプロセスは非常に重要ですが、理解度についていえば、1周目は50~60%の理解で全く問題ありません。数学に関しては、一つの分野で完結することはほとんどないので、他の分野を学習するうちに、知らず知らずのうちに以前習った内容の理解が強化されていることもあります。(その逆もありますが…)

とにかくカリキュラム学習を終えるまでどれだけ計画通りに学習を進めていけるか、勇気を持って新しい単元への挑戦を進めていけるかが重要です。

帰国子女高校受験対策で意識すべきこと
  • 学習習慣をつけ、学習目標を達成するために、塾や個別指導を利用しよう!
  • 一回の学習で完璧な理解を目指してはいけない!
  • ご両親はお子様自身がモチベーション管理や勉強に悩んだ時にサポートしましょう!

次回「数学が苦手な人の共通点とは…?数学を得点源にして合格に近づこう!」についてお話ししようと思います。