海外の多くの学校で導入されているIGCSEとIBディプロマ。学校によっては、Grade10(Year11)までIGCSEを導入し、Grade11-12(Year12-13)でIBを導入している場合もあれば、A-levelにそのまま進める学校もあり、あるいはその両方を提供しているケースもあります。そこで、両方選べる方々からよく受けるご相談として「どっちを取ればよいの?」という質問が挙げられますが……

「どちらが良い大学に入りやすいですか?」という意図の質問であれば、IBは辞めるべきです。

IBはそもそも良い大学に入るためのプログラムではありません。そこを勘違いして「IBを履修すると良い大学に行ける」、「IBを持っていれば海外大学に進学しやすい」という認識を持ってしまう人は少なくありません。

「良い」大学をゴールとしているのであれば、IBよりもはるかにコスパの良い選択肢はたくさんあります。大真面目で興ざめなコメントかもしれませんが、IBの目標は大学進学ではありません

ただ、IBにはIBの特徴や魅力ももちろんあります。実際、どんな生徒がIBに向いていてどんな生徒がA-levelに向いているのか二つのシステムの共通点や相違点を見比べながら、私個人の見解をお伝えしていきたいと思います。

多くの人がよくは知らない「A-level」とは

まず、A-levelですがこれはイギリスの教育カリキュラム。イギリスにおける義務教育は16歳まで(イングランド地域は18歳まで)となっており、GCSE(またはIGCSE)のKey Stage1〜4と言われる段階を踏み、Key Stage 4が修了する16歳にあたる年齢で、全国の統一試験GCSE(General Certificate of Secondary Education)を受験します。

これは日本で言うところの中学校修了証書といったところでしょうか。ちなみにこの結果は特にイギリスで大学受験や就職をする場合、一生背負うことになる成績となり、その後の人生にも大きな影響を与えるようです。

さて、大学進学を目指す生徒達は一般的にはSix Formsといわれる大学準備コース(学校)にはいり最後の2年間を自分の興味関心に合わせて最低3科目(大体4または5科目)を選んで大学初級レベルまでの深掘りをしながら学んでいきます

AS(Advanced Subisidiary)と言われる初年度のカリキュラムと、A2と言われる所謂A-levelの2階層に分かれて学んでいきます。2018年の制度改革により初年度修了時にASの試験を受ける必要がなくなり、今ではYear 13の修了時にA-levelのテストさえ受ければ良いという事になりました。(ASを履修しA-levelを取らずに科目を捨てる場合はAS修了時にテストを受ける必要があります)

肝心な成績ですが、A-levelは基本的にはテスト一発勝負型。テスト以外のタスクは最大で20%ほどある場合もあるそうですが、それ以外はFinal examのみで決定されます。ホームスクーリングも進んでいるイギリスですので、家でしっかりと学習し、テストできちんと成績を修めることができれば、一生の資格としてA-levelを取得することができます

IGCSEの概要
  • イギリスの教育カリキュラム
  • Six Formsという大学準備コースにおけるカリキュラムの一つ
  • Year 13の修了時にテストを受ける
  • 基本的にはテスト一発勝負型(テスト以外のタスクは最大で20%ほど)

最近注目を浴びているIB

次に、IBについてご紹介していきたいと思います。IBはスイスジュネーブに本部を置く教育機関による世界平和に貢献する未来のリーダー達を教育することを目的とした国際基準の教育プログラムです。最近は日本でもIBスクールが徐々に増えてきているようですね。

高校2,3年生の最後の2年間をDiploma Year(DP)と言い、自分で選んだ6科目について、探求的な学習に勤しむこととなっています。成績は最終試験Final Exam)によるところがおよそ80%とIGCSE同様筆記試験のウェイトがかなり大きくなっているのですが、その他に

  1. CAS(Creativity, Activity, Service):日本でいう課外活動のようなもの。
  2. EE(Extended Essay):卒業論文。
  3. TOK(Theory of Knowledge):哲学に似た授業。プレゼンやエッセイ課題あり。

といった卒業までに全員がクリアしなければならない課題があります。

IBについては、以下の記事に簡単な説明がまとめてありますので、こちらも是非ご覧ください。

学ぶ内容やレベル感はA-levelとそう変わりありません(個人的にはA-levelのほうが内容は深いと感じます)。雑な言い方ですが「A-Levelに比べて、IBは試験以外の学校生活などその他諸々の課題がくっついてくる」というイメージです。

最終的にはEEとTOKで3点6科目×7点満点合計45点満点のスケールで成績がつけられ、卒業時のこの45点満点のスコアが最終成績となり大学進学時に重要な点数となるわけです。

さて、ここまででA-LevelとIBの決定的な違いはお判りでしょうか。科目数です。

綺麗ごとや学者的コメントは一旦置いておきましょう。細かいシラバスの違いなどもありますが、こと「成績」「大学」ということについて言うのであればどちらも大差ありません。どちらを選ぼうと、出来る人は出来ますし、勉強が苦手な人にとってはどうしても難しい内容となっています。その後の人生にどうプラスになるかという点についても、そう大きな違いはないでしょう。真面目に取り組めば、どちらを選んだとしても、しっかりプラスに働くことと思います。

もう一度いいます。決定的な違いはどう考えても科目数。これに尽きます

さて、ここまでIBとA-levelの特徴について見てまいりましたが、どちらも高度なカリキュラムであることに変わりはなく、良い成績を修めるためにはしっかりと対策を練り勉強していく必要があります

弊社TCK Workshopでは、経験豊富な講師陣が皆さまの学習生活をしっかりとサポートさせていただきます。IB・A-levelのどちらを選ぶべきか、あるいはそれぞれの中での科目選びに関するご相談など、まずは無料学習相談から、お気軽にお問い合わせください

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履修科目数の違いから見えてくる「向いている人」

A-levelは最低3科目IBは固定で6科目。しかも、自由な6科目ではありません。

  1. Language&Literature
  2. Language Acquisition
  3. Individual & Societies
  4. The Sciences
  5. Mathematics
  6. The Arts

のグループから満遍なく履修選択しなければいけません。数学理科が苦手でも、数学理科は必ず履修しないとならないのです。言語(国語)が嫌いでも絶対に履修しないといけません。

つまり「IBはオールラウンダーに向いている」ということができるのではないでしょうか。日本でいう国立受験型。全科目しっかりと出来る人達。

一方「A-levelは特化型に向いている」といういうことができます。日本で言う私立型。自分が好きな科目、深掘りしたい科目のみを学習し突き進んでいくことが好きな人達。

当たり前ですが、6科目勉強するほうが忙しいです。A-levelでは科目が少ない分内容もより深堀していきますが、それでもやはり科目数を考えると圧倒的に楽(なはず)です。楽というのは御幣があるかもしれませんが、すくなくとも「楽しい」はずです。なぜなら嫌いな科目を履修しなければならないということがなく、あくまで興味のある科目、好きな科目を選んでいる場合が多いのですから。

もう一つ強いてあげるなら2つの大きな違いは「IBは2年間の教育プログラムであるのに対して、A-levelは資格試験であるということ」でしょうか。

A-levelはSix Formsといった学校に入れなくても予備校のような生活を送りながら、最終試験さえ頑張れば良いのに対し、IBは学科の勉強以外の様々な取り組みが総合的に人間を鍛えるプログラムとなっています。IBにおける2年間の経験が将来の財産になりることもあるのではないかと思います。

とはいえ、全員が全員IBの恩恵をうまく受けているかと言うと、そうでもないように思います。真剣に取り組んだ場合、A-levelにもIBにもそれぞれメリットがありますし、そこで得られる知識や経験に本質的な差があるようには思えないというのが私の見解です。

私個人がもし高校生だったころどちらに向いていたか、と聞かれれば、間違いなくA-levelの方だったのではないかと思います。お恥ずかしいことに、私は勉強はかなり好き嫌いが激しく、理数科目は好んで学習をしましたが、言語系や社会はどうやっても好きになれませんでした。そんな昔の自分が、もしIBを履修するとなったら……想像するだけで青ざめてしまいます。IBの精神は素晴らしいものだとは思いますが、他の活動を通して同様の精神やスキルを身につけることも不可能ではありません

IBが他にはないような特別なプログラムかと言うと、決してそうではありません。ただ、間違いなく言えるのはIBの最後の2年にあたるDPはプログラムとして非常に完成度の高いものとなっています。IBがこうして急速に全世界に広げられているという事実が何よりの証拠です。

ではIBとA-levelどちらが世界で受け入れられているのでしょうか?

これは統計を確認すればすぐにわかりますが、俄然A-levelのほうが地球規模でみるとメジャーです。160か国10,000を超える学校で世界中の1,400以上の大学で認められている資格です。イギリスの全大学は当然のこと、アメリカでもトップスクールを含めた600もの大学が受験資格としてA-levelを認めています。

IBも決してマイナーなわけではありません。世界中5,000を超える学校で提供されていますし、A-level同様世界中の大学で認められています。ただ、数が多い、言い換えればよりメジャーなのはA-levelのようです。最初の問いに戻りますが、どちらがより有利ということはありません。正しい姿勢で正しく学べば両者ともに世界で通用する卒業資格となるわけです。

しかし、IBとA-levelには、先述の通り向き不向きがあるのです。自分のことを良く知り、両カリキュラムの特性を熟知し、高校生活の数年間をしっかりと将来の財産にすべく、正しい学習体験を積み上げて頂けたらと思います。

IBとA-levelの違い
  • A-levelは自宅でも学習可能な資格試験最低3科目なので得意なものだけを選んで学べる
  • IBは教育プログラムなのでどこかの学校に在籍することが必須バランスよく6科目選択し、課外活動や卒業論文などの提出も求められる
  • オールラウンダーならIB向き特化型ならA-levelがおすすめ

TCK Workshopには、数多くのIBおよびA-level指導経験者が在籍し、様々な国に住む学生の学習サポートを行っております。どちらを選ぶべきか、自分との相性をより詳しく見て欲しい、あるいはIB・A-levelの中でどの科目を選んだらいいのか相談したい、などありましたら、是非、お気軽に下記の無料学習相談フォームからお問い合わせください。皆様が最良の選択をできるよう、またしっかりと学習の機会を活かせるよう、精一杯サポートをさせていただきます。