IBの履修選択時に多くの生徒達が悩むこととしてScience(理科)をどの科目にするのか。
HL(Higher Level)にするのかSL(Standard Level)にするのか。
特に理科に苦手意識があったり、科目が嫌いであったり、場合によっては引っ越しが重なり中学校で理科の履修が歯抜け状態になっていたり。色々な事情で一体何を履修したら良いんだ?ということで困っている方達の履修相談を毎年相当数担当しております。
別記事では理科三科目(物理、生物、化学)の内容の違いであったり、求められているスキルであったりすることを説明させていただきました。
今回は、履修選択の上で実は知っておくと役に立つ情報をお届けしようと思います。それは国際バカロレア機構(IBO)が公表している統計データです。
意外に多くの方がこの存在すら知らないのですが、ここから皆さんが直感的に信じていることが「実は違った!」ということが客観的に理解できたりします。
まず、そのデータは例えばこのようなもので、こちらは2020年卒業生(5月、6月卒業生)の成績の統計が公表されています。
何に注目して欲しいかと言うと科目ごとの成績分布です。ずらーっと並ぶ様々な科目から理科のページ(Sciences Grade)をご覧ください。Biology, Chemistry, PhysicsのSLとHL計6つとも生徒達の成績(1~7)の分布が出ています。
世界中のIB生の履修相談をする中で、生徒様や保護者様から最も出てくるコメントとして、
- Biologyは暗記すればなんとかなるから簡単だ。
- 物理は難しい。先輩にも取るなと言われている。
- 化学は…よくわからない。
ただ、データを見ると皆さんが漠然と感じているような事とは違ったものが見えてきます。
IB Biologyは実はハイスコアを狙いにくい!
まず、「BiologyはSLでもHLでもスコア7を取れた生徒達の割合がPhysicsとChemistryと比べても一番低い」という点です。
もっと言うと、Phyiscs HLで7を取った生徒は23.7%。比較してBiology HLは9.7%、Chemistry HLは12.2%です。SLであっても、Physicsは12%、Chemistryは6.7%、Biologyは6.3%です。統計には適切な解釈が必要ですが、素人目で見てもPhysicsがダントツ数字が良いのはお分かりになるかと思います。加えてPhysicsは3以下を取っている人数も他2つと比べて少ないという事も分ります。
これでもBiologyは簡単だと言いますか?という話で、Physicsは実は比べて成績が取りやすいというのもわかります。
Physicsはなぜハイスコアを取りやすいのか?
重要なのは「何故Biologyは成績が取りにくいか、そしてPhysicsは取りやすいか」です。これは学習する内容とテストの内容を熟知している人であれば非常に納得のいくものです。
簡単に片付けるならば、生物は概念的な理解とその説明を言葉を使って記述ベースで答えなければならなく、ここに英語と言うハードルがさらに重なり難しくなるケースが多いということです。
一方で物理は数学です。数式で記述していくため数学のように問題を解いていきます。
「じゃあ、数学が苦手だったらやっぱり難しいじゃないか…」
それは確かにそうではありますが、IB Physicsで使用する数学は決して難解なものはありません。非常に限定された数学を使うので数をこなして慣れてしまえば数学が多少苦手な子でも対応することができるのも事実。
もちろんこれ以外にも様々な要因が重なります。学校の先生の良し悪し、自分の英語力、根本の学力、数学力、興味関心…
色々な状況を加味した上で履修選択をして頂きたいのですが、やはり本質的には「学びたいもの」を学んでほしい、ということは変わりなく真実かと思います。
まとめ
上に挙げたものは履修選択をするうえで誰もがアクセスできる参考事実となります。通学されている学校の状況やご自身の置かれた状況に合わせて総合的に判断しなければなりませんが、私からは「中身を知らない、見たこともない、学んだこともない」人達の声をあまり鵜呑みにしない方が良い、ということで。履修相談に困ったらいつでもご相談ください。